ドラフト会議2025目前!元巨人ドラ1・大田泰示が語る、進学かプロか「葛藤と決断」

ドラフト会議2025目前!元巨人ドラ1・大田泰示が語る、進学かプロか「葛藤と決断」

2025年のドラフト会議が10月23日(木)に開催される。その模様はスカイAで生中継されるが、大物スラッガー・立石正広選手(創価大)をはじめ、最速164kmの堀越啓太選手(東北福祉大)、制球力抜群の150km右腕・中西聖輝選手(青山学院大)、高校生では石垣元気選手(健大高崎)、社会人では竹丸和幸選手(鷺宮製作所)らの上位指名が予想されている。そこで、かつて大物新人としてドラフト会議を沸かせ、巨人、北海道日本ハム、横浜DeNAで活躍し、現在はジャイアンツアカデミーでコーチを務める大田泰示さんにインタビュー。ドラフト会議の思い出を語ってもらった。

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■高校通算65本塁打を放ち、2球団競合を経て巨人に入団

大田さんが対象となった2008年のドラフト会議は、前年までの分離ドラフトが撤廃され、逆指名制度導入前の1992年度以来、16年ぶりに高校生と大学生・社会人が対等な条件で指名されることになった年。当時、東海大相模高校3年の大田さんは、高校通算65本塁打を放ち、その年の目玉選手のひとりだった。当日は、巨人とソフトバンクが1位で指名。抽選で巨人が交渉権を得た。ちなみに、同年の1位入札が競合したのは大田以外に松本啓二朗(早稲田大-横浜)、野本圭(日本通運-中日)と、大学・社会人の2選手のみ。高校生唯一の1位競合だった大田さんが、いかに大物新人だったかがわかる。

――自分が指名されることは当然予想していたと思いますが、ドラフト会議の直前は、どんな感じでしたか?

「ドラフト前には、スポーツ紙にも連日取り上げてもらったので、自分が注目されている実感は確かにありました。でも夏の大会前までは、僕はあまり騒がれていなかったんです。練習試合で宮崎商業の赤川克紀投手(同年ヤクルト1位)から本塁打を打ってから、メディアに注目され始めた感じでしたね。赤川君はメジャーのスカウトも見に来るほどの好投手でしたから、彼から打てたことは自信になりました。夏の神奈川大会は決勝戦で慶応高校に敗れて甲子園に届きませんでしたが、本塁打5本を打ったことで、クローズアップされるようになったんです」

――では、すんなりプロ志望でドラフトを待つ感じでしたか?

「いや、進学も考えていたので随分迷いました。門馬監督と父親には、共に自身の経験から進学を薦められたし、大学で実力をつけてからプロに行くという選択肢も考えました。でも、4年間の中で怪我をして野球人生を棒に振るという怖さもあった。監督と何度も相談して、最終的にドラフト3位以上ならプロに行く。4位以下であれば進学して鍛錬を積むという結論に至りました」

――それでドラフト会議の当日を迎えたのですね。テレビ中継はご覧になっていたのですか?

「当時の野球部の寮では地上波しか映らなかったので、生中継は見ていません。監督、父親と3人で監督室にいて、携帯電話で速報を見ながら状況を追っていました。新聞報道では、ジャイアンツとホークスが1位指名という記事が出ていたのですが、ふたを開けるまではわかりませんからね。ジャイアンツは憧れの球団でしたが、ホークスに評価されていることは名誉なことでした。ただ、単独指名ならジャイアンツに行けるので、嬉しさ半分、動揺半分という心境でした」

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■抽選を外し続けた原辰徳監督が初めて当たりくじを引き当てた

――結果、2球団が大田さんを1位指名して、原監督が見事に引き当てました。

「本当に2球団が指名してくれたので、正直驚きました。抽選になった時は、僕の中ではどちらに指名されてもプロに行くことに変わりはないという心境になっていましたが、改めて思うと、人生の分かれ道になりかねない大事な局面を大人に託すというのは、なんとも複雑でしたね。不安もあるけど、希望もあるわけで、もう感情が右往左往していたように思います。ただ、ジャイアンツに決まった時は、もう最高に嬉しかったです。それまで原監督がドラフトで抽選を外し続けていたことも知っていたので、初めて当たりくじを引いてくれたのが自分だったことで、感激もひとしおでした。東海大相模の大先輩である原監督とのご縁も感じました」

――門馬監督も記者会見の時に、感激のあまり涙が光っていましたね。

「ハイ。門馬監督は僕のことを3年間ずっと気にかけて下さり、本当に熱心に時には厳しく指導していただいて、もう自分のオヤジかというほどに僕に時間を費やしてくれました。僕のことを信じ抜いてくれた監督でした。だから、最高の喜びを門馬監督と一緒にわかちあえたことも、一生の思い出になっていますね」

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――そもそも、広島から関東の強豪・東海大相模に進学されたわけですが、大きな決断だったでしょうね。

「広島県の高校野球は、広島商や広陵に代表されるようなバントを重視する手堅い野球という印象でしたが、相模の練習試合を見学した時に、力強いスイングをする選手が多くてホームランもバンバン打つし、ハイレベルだなと。自分もここでやりたいと強く思いました。門馬敬司監督(現創志学園)とも話して、熱意を感じることができて決意が固まりました」

――そのハイレベルなチームに実際に入ってみた時は、どう感じましたか。

「中学では軟式の経験しかなかったので、まずはボールの違いに苦戦しました。守備はもちろん、バッティングでも力強さが足りずに硬式に慣れるまで大変でした。2年になって試合に出られるようになり、夏の決勝戦の桐光学園戦でホームランを打てたことで、ようやく自信が芽生えて練習に取り組む姿勢が向上したと思います。それまではただ闇雲に練習して、なかなかきっかけをつかめずにもがいていたので。2年の夏以降は、自分の目的と結果がリンクするようになったという印象です」

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――プロ野球選手になるという夢が、現実として思い描けるようになったのは、いつ頃でしたか?

「3年に進級した春頃ですかね。強豪校との練習試合でも好結果が出ていて、先ほどの宮崎商の赤川のような好投手を相手にしても互角以上にやれる感触がありましたから、順位はともかく、指名されるかも...と思うようになりました。ただ、一度も甲子園に行けなかったことには、悔いが残ります...。1年上に菅野(智之・現オリオールズ)さんと田中広輔(元広島)さんがいて、同級生にも角晃多(元ロッテ)と友永翔太(元中日)がいた。2年上にも田中大二郎(現巨人軍統括部兼育成強化部)さんがいて、5人のプロ選手を輩出した年代でしたけど、甲子園に届きませんでしたね...」

――やはり、神奈川県は相当レベルが高いですからね。プロ入りしてからは、同級生たちの活躍は意識するものですか?

「高卒の野手で同期入団した選手は気になりましたね。ジャイアンツには橋本到(仙台育英)がいて、他球団には当時ライオンズの浅村栄斗(大阪桐蔭)、後にジャイアンツに移籍するホークスの立岡宗一郎(鎮西)、ファイターズの杉谷拳士(帝京)らがいました。浅村や杉谷とはルーキーの時によく話もしたし、お互いにプロの厚い壁を感じながらも切磋琢磨していった感じでしたね。杉谷とも後にファイターズでチームメートになりました」

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■巨人の1位だと、こんなにも騒がれるのかと驚いた...

――ドラフト会議の話に戻りますが、そもそも一野球少年だった時代には、ドラフトについてどのように見つめていたのですか?

「プロ野球選手になるという夢は抱いていたので、ドラフトというのは華やかな舞台のようなイメージで、夢物語のように見ていました。ここで自分の名前が呼ばれるところは、なかなか想像できなかったのですが...。印象深いのは、自分たちの前年(2007年)の時ですね。高校生ドラフトで中田翔(大阪桐蔭)さんが4球団競合で指名されて、ファイターズが交渉権を得たのですが、タイガースじゃないのかぁと思いました(笑)。その前だと、やはり大阪桐蔭の辻内崇伸さんですね。チームメートの平田良介(現中日コーチ)さんと共に注目を集めていて、当時の大阪桐蔭の強さが強烈だったし、ジャイアンツのドラフト1位ということで大きく騒がれた印象が強いです。ジャイアンツの1位だとこんなに騒がれるのかと感じました。後に自分が同じ立場になるとは、まったく思っていませんでしたけど...」

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――普段はアマチュア野球をご覧になる機会は少ないかもしれませんが、今年のドラフト会議で気になる選手などはいますか?

「なかなか見る機会がないんですよ。ただ、神奈川県の高校野球は気になるので、結構チェックしています。横浜高校の阿部葉太主将は進学希望らしいですが、エースの奥村頼人投手はプロ志望のようで楽しみですね。大学生や社会人の選手は即戦力としての期待がされるし、特に有望な選手は競合になると思うので、気にはなります。今は会場にファンの方も入って歓声が上がったりするし、より華やかな雰囲気になっている。CSの期間中に12球団の監督たちが集結して、緊張した面持ちでくじを引いたりする瞬間はやはり見ごたえがありますね」

――さて、現在の大田さんはジャイアンツアカデミーで子供たちを指導されています。これからの抱負をお聞かせください。

「僕は小学5・6年生を担当していますが、100人弱の生徒がいますので、名前を覚えるのも大変でした(笑)。ここから巣立って甲子園に出た選手もいるし、中学の軟式野球のトップ校で活躍している選手もいます。ただ、レベルは様々なので、指導する難しさを日々感じているところです。ジャイアンツジュニアの選手たちも指導しているので、数年後にはどんな選手になって成長しているのか、今から楽しみです。責任をしっかり感じながら指導していますが、野球の楽しさや難しさ、成功体験などを教えたい。将来、プロはもちろん、アマチュアで活躍してくれれば嬉しいし、野球選手にならなくても、いつかそれぞれの人生の糧になればいい。でも、僕の教え子が将来ドラフト会議で名前を呼ばれる日がくるなら、本当に感激してしまうでしょうね」

文/渡辺敏樹 撮影/中川容邦

放送日時:2025年10月23日 21:00~

チャンネル:スカイ A

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