生誕100周年!マリリン・モンローの名作3選で紐解く永遠のアイコン
2026.05.26
1950年代から60年代にかけて、ハリウッドで活躍した大スター、マリリン・モンロー。2026年は、彼女の生誕100周年にあたる節目の年だ。1947年に映画デビューし、1953年に主演した『ナイアガラ』、『紳士は金髪がお好き』で注目されて一躍ハリウッドを代表するスターとなった。その後も『七年目の浮気』や『バス停留所』、『王子と踊り子』など話題作に続々と主演。1959年公開の『お熱いのがお好き』でゴールデングローブ賞のミュージカル・コメディ映画部門主演女優賞を受賞している。私生活でも常に話題を振りまき、注目を集めた。野球選手のジョー・ディマジオ、劇作家のアーサー・ミラーと結婚したが、いずれも離婚。後年は薬物乱用やうつ病に悩まされ、1962年8月、36歳で衝撃的な死を遂げた。今回はモンローの主演映画より3作を厳選して筆者目線で紹介したい。

(C) 1955 Twentieth Century Fox Film Corporation.
■「七年目の浮気」=白いスカートが浮き上がる名場面が映画史に残る
1955年公開。監督はビリー・ワイルダー。共演はトム・イーウェル。ブロードウェイ戯曲を原作とした、「結婚7年目に訪れる倦怠期」をテーマにしたコメディ作品だ。
物語は、妻子が夏の間に田舎へ行き、一人でニューヨークに残った中年男性リチャード(トム・イーウェル)が、上の階に引っ越してきた魅力的な若い女性(マリリン・モンロー)に心を乱されるという話。リチャードは、美女に夢中になるものの不倫に発展するわけではなく、ひたすら「妄想」しては「理性」で押さえつけるという、一方的な葛藤とせめぎ合いをユーモラスに描いた脚本が秀逸で、モンローの可愛らしさが全開だ。
本作における、地下鉄の通気口の上でモンローの白いドレスがふわりと舞い上がる場面は、映画史上で特に有名なショットのひとつといわれている。この一場面により、モンローが"永遠のアイコン"として決定的な存在になったと言えるだろう。当時のハリウッドは検閲が厳しく、性的表現に制約があった。それを逆手に取り、性的な緊張を会話と仕草で表現したことで、想像力を刺激する洗練されたおしゃれなコメディに仕上がっている。本作でのモンローは、単なる妖艶な美女ではなく、無邪気さと親しみやすさが際立った上品さを醸す。男性を誘っているようでいて、無自覚にも見える。そんな「天然」ぶりで独特の魅力を確立した。「セクシー+無邪気+ユーモア」という形で、女優・モンローの魅力を象徴する記念すべき名作だ。

(C) 1953 Twentieth Century Fox Film Corporation.
■「紳士は金髪がお好き」=知的な一面を見せたモンローの新境地
1953年公開。監督はハワード・ホークス。モンローはジェーン・ラッセルとダブルヒロインを務めた。ミュージカルを原作にしたコメディ映画で、恋愛と富(特に宝石)をテーマに、対照的な2人の女性の旅と恋模様を華やかに描いている。
ショーガールとして活躍する親友同士のローレライ(モンロー)とドロシー(ラッセル)。ローレライは大富豪の御曹司と婚約し、結婚するためにフランスへ向かう豪華客船の旅に出る。しかし、財産目当てだと疑う父親の大富豪が、探偵を送り込んでローレライを監視する。一方でローレライは、宝石好きで、船上で出会った裕福な男性とのやり取りの中でしたたかな一面ものぞかせる。ドロシーはそんな彼女に眉をひそめつつも支える。やがてドロシーも恋愛騒動に巻き込まれるなど、すったもんだの挙句、トラブルが重なりながらも2人はそれぞれの恋と幸せをつかもうとする...。
見どころは、ショーガールを演じる2人が華やかな衣装を身にまとって歌い踊る場面。特にモンローが歌う「Diamonds Are a Girl's Best Friend」は、映画史に残る名シーンだ。ピンクのドレスとダイヤに囲まれた演出は、後年にマドンナのヒット曲「Material Girl」のPVでオマージュ的に使われたことで有名。音楽や衣装、ダンスシーンなど、全てが豪華絢爛で、「ハリウッド黄金期」の華やかさを象徴しているように感じる。無邪気で浅はかに見えたローレライが、意外に計算高くて聡明なため、この役を通じてモンローは新たなイメージを確立。「美人だが頭の弱いブロンド」という従来的なイメージに見せつつ、じつは知的な女性像をにじませるという高度な二重構造の演技により、高く評価された。セクシーで無邪気なだけでなく、賢く戦略的な女性像も印象付けた、モンローの重要な代表作である。

(C) 1957 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved.
■「王子と踊り子」=演技面で成長を見せ、名優L・オリヴィエと対峙
1957年公開。監督・主演は英国の名優ローレンス・オリヴィエ。原作はオリヴィエ自身が舞台で演じた戯曲で、モンローは共演者として出演しただけでなく、自ら設立した製作会社により初めてプロデューサーも務めた。スターから主体的な映画人へと踏み出した、モンローにとって重要な作品である。
物語の舞台は1910年代のロンドン。カルパチア王国の摂政チャールズ大公(ローレンス・オリヴィエ)は、息子である国王と共に英国を訪問する。接待で観劇したミュージカルに端役で出演していたアメリカ人女優・エルシー(マリリン・モンロー)を見初めた大公は、彼女を宮殿に招くが、エルシーは大公の下心を見抜いて逃げ出そうとする。しかし、高齢の無邪気な皇太后に気に入られ、王侯貴族に混じって戴冠式に列席することになる。じつは大公と国王は、政治の実権を巡って対立関係にあったが、天真爛漫なエルシーは親子の関係を修復させようと尽力する...。
本作でのモンローは一段と魅力的だ。無邪気でありながら芯が強く、権威にも臆せず、思ったことを率直に口にするたくましいエルシーを、鮮やかに演じている。無邪気でセクシーなエルシーに翻弄されながらも、大公はエルシーに強く引かれるというロマンティック・コメディだ。古典的で格調高い名優のオリヴィエに対し、モンローは感情に根ざした自然な演技で対峙する。2人の演技スタイルの対比が作品の緊張感と魅力を生み出した。庶民的なエルシーが王室を振り回すさまは痛快で、階級社会への軽い批評としても機能している。ほろ苦い結末も大人のロマンスとしての深みを与えて印象深い。当時のモンローはアクターズ・スタジオで学んだメソッド演技を取り入れ、リアリティを重視した演技で絶賛された。プロデューサーを兼ねて創作に関与する表現者へ移行した象徴的な作品でもある。
文/渡辺敏樹




