Aぇ! group・佐野晶哉が名優・平泉成をうならせた共演作、映画『明日を綴る写真館』
2026.03.13
アイドルグループ・Aぇ! groupのメンバーとして、さまざまな分野で活躍している佐野晶哉。グループではドラムを担当しているが、サックスやピアノも奏でることができ、音楽大学の作曲科を卒業しているうえ、小学生時代には劇団四季の舞台に子役として出演していたほどの歌唱力を有するなど、音楽的才能にあふれる一方で、バラエティー番組では関西人ならではのノリの良さとトーク術で場を盛り上げるという多彩な才能の持ち主だ。さらに、演技の才能にも秀でており、ドラマや映画、舞台などでその実力を存分に発揮している。そんな彼の演技の魅力を堪能できる作品の1つが、2026年3月15日(日)に日本映画専門チャンネルで放送される映画『明日を綴る写真館』(2024年)だ。
同作品は、あるた梨沙による同名漫画を映画化したもので、どうすることもできないまま誰もが抱えている"想い残し"をテーマに、年齢も考え方も全く違う2人が紡ぐ、圧倒的に美しくて優しい感動作。佐野は、同作でキャリア60年にして初主演を務めた平泉成演じる役と好対照の相手役、五十嵐太一を演じている。

新進気鋭のカメラマン・太一(佐野)は、大きなフォトコンテストで前人未到の3年連続グランプリを受賞するなど、業界注目の売れっ子だったが、自分が納得する写真を撮ることができず憂いていた。自分の思いとは裏腹に名前が売れていく現実に嫌気が差し、自分の周りに集まってくる人々にも辛く当たってしまう日々。そんな中、コンテスト会場で佳作に選ばれた1枚の写真に釘付けになる。その写真は、かつて自分が幼い頃に心を掴まれた写真と共通する"心に響く何か"があった。
その後、仕事で愛知のさびれた田舎町を訪れていた太一は、町の写真館の表に、かつての佳作に選ばれた写真が飾ってあるのを見つけて言葉を失う。驚きのあまり表で佇んでいた太一に、外出先から帰ってきた同写真館の主人、鮫島(平泉)が声をかける。「この写真を撮ったのは?」と尋ねた太一は、「私です」と答えた鮫島に弟子入りを志願する。程なく、太一が東京の売っ子カメラマンであることに気付いた鮫島は弟子入りの話を断るも、太一は向こう3カ月に入っていた仕事を全てキャンセルし、半ば押しかけるかたちで弟子入りする。そして、訪れる客と丁寧に対話を重ね、カメラマンと被写体という関係を超えて客と深く関わる鮫島の姿に驚きながらも、自分に足りないものに気付いていく――。
この作品では、年齢も考え方も全く違う"素直になれない"2人が、心を通わせて成長していく姿が描かれているのだが、キャリア60年の平泉の存在感あふれる圧巻の演技はもちろん、佐野の演技も平泉の演技に負けず劣らずすばらしい。多くを語らず、職人気質で無口な鮫島に対し、同じ"無口"でも、少年時代の家族関係の歪みから、自ら周囲とコミュニケーションをとることを避けて写真にのめり込んでいったという過去を持つ太一を熱演している。

思うような写真が撮れないいら立ちと、自己嫌悪から抜け出すため一縷(いちる)の望みをかけて鮫島に弟子入りし、"自分とは全く違うアプローチで被写体と向き合う鮫島の姿"や"客の反応""近所の人々や鮫島の妻との交流"などを経て、"写真"の真理を悟り、頑なだった心が徐々に解けていき、柔和に変化していくさまをナチュラルに表現。
人と話す時に目を合わせなかったけれども目を見て話すようになったり、ふとした時に笑顔を見せるようになったりと、弟子入り前とは大きく変わる太一を、佐野は表面には見えない心の成長と共に丁寧に演じることで説得力をもたせている。
中でも特筆すべきは、成長の枷(かせ)となっていた自身の家族との向き合い方を見つめ直すシーンでの、母・塚本冴絵(黒木瞳)と対面した時の太一がまとう雰囲気の違いだ。自ら離れようとしながらも、どこか希望を捨てきれない母の愛情への期待感や依存心を、母の前では子になってしまう弱さをにじませることで、「太一にとってどれだけ大きいことなのか」というところまでも表している。

写真を通して救われていく人々の"想い"に心震わせながら、名優・平泉成と堂々と渡り合った、佐野の演技の魅力を感じてみてほしい。
文/原田健




