長野凌大(原因は自分にある。)×パク・ユチョンが語る、映画『361-White and Black-』で囲碁がつないだ絆
映画 インタビュー
2026.03.04
日本人棋士で初めて海外に移籍した仲邑菫(なかむら・すみれ)四段が、韓国の若手女性棋戦で初優勝を果たしたり、藤田怜央初段が9才で世界最年少プロ棋士になったりと、新世代の活躍が目覚ましい囲碁界。全世界で1800万人に上る競技人口を誇りながら、長らく日本では将棋人気に押されがちだったボードゲーム"囲碁"を題材にした映画『361-White and Black-』が3月6日(金)より全国公開となる。

左からパク・ユチョン、長野凌大(原因は自分にある。)
子どものころの悲しい出来事をきっかけに、対人では囲碁が打てなくなってしまった青年・上条眞人。実は秘かに続けていたオンライン囲碁のチャンピオンである彼は、現在の囲碁世界チャンピオンのパク・ハンミョンと米原沙羅七段の幼なじみだった。賞金総額1億円の囲碁大会が日本で開催される中、大会の番組制作ディレクター・小坂に背中を押された眞人は出場を決意。自分のトラウマと真正面から向き合っていく。
主人公である眞人を演じるのは、ダンスボーカルグループ「原因は自分にある。」の長野凌大。世界ランキング1位の韓国人棋士パク・ハンミョン役には、元東方神起のメンバーで2024年にソロアーティストとして日本デビューを飾ったパク・ユチョン。幼なじみ同士の役で共演した2人に、本作の見どころや撮影時の思い出、囲碁の魅力についてじっくり話を聞いた。

■長野凌大とパク・ユチョンが語る、初共演の印象と撮影現場の舞台裏
──オリジナルストーリーとなる本作の脚本を読んだ感想はいかがでしたか?
長野「最初に『囲碁の映画』だと伺っていたのですが、囲碁だけにとどまらず、ヒューマンドラマとしてすごくしっかりした作品だなと感じました。登場人物みんながそれぞれの形で成長して、大切な人と再会するという物語で、演じるのがとても楽しみになりました」
ユチョン「僕は漢字が読めなくて、今勉強しているところなんです(笑)。最初にいただいた脚本では、僕は最初のほうにちょっと出るくらい、"特別出演"のような感じだったんですよ。でも大山晃一郎監督とお会いして、物語について説明してもらった後、『出演シーンが増えても全然大丈夫です』と伝えて、出番のボリュームを増やしてもらったんです」

──長野さんは本作が映画初主演となります。プレッシャーはありましたか?
長野「そうですね、映画自体も経験が少なくて。今回出演となって、しかもまさかの主演だったので、めちゃくちゃプレッシャーは感じたのですが。僕も撮影に入る前に大山監督とお話しする機会があって、脚本について話していくうちに、どんな映画にしていくか、眞人をどう演じるか、という部分にフォーカスすることができました」
──長野さんとユチョンさん、今回の初共演はいかがでしたか?
ユチョン「劇中、長野くんがネコの着ぐるみを着ているシーンがけっこうあるのですが、着ぐるみ姿のときも、ずっと中にいるのは長野くん本人だったんですよ。最初、僕は別の人が入るんだろうなと思っていたからびっくりしました。すごいなぁって」
長野「ユチョンさんは初日から優しく話しかけてくださって。その初日のおかげで、僕はとても楽しく撮影に挑めました」

ユチョン「大山監督もすごく優しくしてくれて。僕も緊張はしたのですが、現場が柔らかい雰囲気だったので、撮影が楽しかったです」
長野「最初はユチョンさんのこと、クールでミステリアスな方なのかなと勝手に思っていたんですよ。実際は目が合うとニコニコして手を振ってくれたり、いろいろボケてくれたり(笑)、すごくユニークでキュートな方でした。だからいい意味で、僕は年齢差も感じなかったんです。本当に役のイメージどおり、とても優しい兄貴っていう印象でした」
ユチョン「それはうれしいですね(笑)」
■長野凌大とパク・ユチョンが語る役作り
──眞人、パク・ハンミョンを演じるにあたって、大切にしていたことは?
長野「眞人は一見弱いんだけど、決して弱いだけじゃないところが魅力かなと思っていて。過去につらいことがあって、心を閉ざしていても、まだ心は死んでいない。ずっと同じところに住んでいる理由も、やっぱりみんなのことが好きで、また一緒にいたいと思っているから。たぶんみんなの動向も追っているし、囲碁はやらないと言いながら、スマホに囲碁ゲームのアプリも入れているし。本当はめちゃくちゃ愛がある人間だけど、ちょっと内気で不器用なんですよ。そこの温度感を大切にしましたね」
ユチョン「うん、実際にパク・ハンミョンも眞人のことを弱いとは思っていなくて。むしろ自分よりも強くて奥深い人だと思っている気がしました」

(C)2026「361 -White and Black- 」製作委員会
長野「あとは松岡広大さん演じるテレビの番組制作ディレクター・小坂と眞人の関わりも、深いものだと思いました。小坂と出会ったことで、眞人の心がどこまで開いていくか。撮影は順撮りではなかったので、時系列に沿った感情の変化はかなり意識して演じました」
ユチョン「僕がパク・ハンミョンの役作りで一番集中したのは、彼の生き方、彼がどう考えているのかを理解することでした。そうすれば、彼にとって、眞人や周りの人たちがどれくらい大事な存在なのかが分かってくるし、本当の意味で役を表現できると思って。その内面的なアプローチは、他の作品とはちょっと違う感覚でしたね」
──お二人は、もともと囲碁の経験はあったのでしょうか?
長野「いえ、ルールとかも全く分からなくて。今回、囲碁の先生に石の打ち方を一から教わりました。すごく熱心な先生で、囲碁は中国で誕生したゲームだという歴史から教えてくださって。対局のシーンも多いので、碁石を自宅に持ち帰って、家でもずっと石を打つ練習をしたり、囲碁ゲームのアプリでちょっと対局してみたり、ということをやり続けました。撮影期間中もセットチェンジの待ち時間の間、ずっと石を打つ練習をしていましたね」

(C)2026「361 -White and Black- 」製作委員会
──劇中、ネコの着ぐるみを着た状態の手で、小さな石を打つのは大変だったのでは?
長野「本当に大変でした(笑)。ですけど、それでもあきらめずにやっていたら、だんだん慣れてきて、本番でもできるようになって。それは最初に石を打つ自主練をたくさんやったおかげかなと。だから、やっぱり練習してよかった(笑)」
ユチョン「あれは難しそうでしたね。僕も囲碁は今回が初めて。ただ、パク・ハンミョンは世界一のチャンピオンという設定だったから、余裕がある雰囲気を出さなければいけないなと思って。対局シーンでは、世界チャンピオンに見えるようにがんばりました(笑)」
長野「チャンピオンの風格ありました」
ユチョン「僕自身が左利きだから、劇中でも左手で石を打っているんです。囲碁は右手で打つもので、左手で打つのはマナー的によくないんじゃないかな......と、ずっと申し訳なく思っていたのですが、後から左手でも問題がないと知ってホッとしました(笑)」
■『361-White and Black-』の好きなシーンとプレッシャー克服法

──完成した映画を観たとき、特に好きだったシーンはどこですか?
長野「僕が個人的に好きなのは、松岡広大さん演じる小坂と、渡辺いっけいさん演じる小坂の上司がテレビ局のオフィスでやりとりをするシーン。おもしろすぎて、ずっと観ていたくなります。松岡さんは僕と一緒のシーンでも、けっこうアドリブを入れてくる方で、プラスいっけいさんとくれば、もうアドリブ祭りだったんだろうなぁと。撮影現場に行って、生で見てみたかったです(笑)。あと自分が出ているところでは、クライマックスの決勝戦ですね。眞人がちゃんと前に一歩踏み出した瞬間のシーンは見どころかなと思います」
ユチョン「好きなシーンはいろいろありますが、やっぱり印象的だったのはクライマックスの長野くんの対局シーン。僕は遠く離れた後ろのほうで見ているのですが、撮影時に自分の目がカメラのアングルになって、対局中の2人の姿がズームアップされたような感覚になったんです。脚本のト書きには特に書かれていなかったのに、いつの間にか、目からうれし涙が流れていました。あのとき現場に流れていた空気感、色味、すべてが今も写真のように記憶に残っています」

──本作は眞人がトラウマを克服するまでの物語でもあります。逃げ出したくなるほど強いプレッシャーを感じたとき、どのように乗り越えますか?
長野「最近は人に相談しますね。僕は7人組のグループをやっているから、自分のそばに6人のメンバーがいる。みんな僕のことを一番分かってくれているので、もうグループのメンバーに『今こういうことで悩んでいるんだよね』って全部言う。そうすると、大体解決しますね。6人もいたら、どんな悩みでも、いろんな意見が返ってくるんです。やっぱり話すことで、自分の心が軽くなって、やってみよう!と思えるようになる。この映画の眞人と小坂の関係に近いかもしれないです」
ユチョン「僕も長野くんと同じで、まわりの人と話をすることが大事だと思う。あと、昔よりも心が強くなっているから、きっとどうにかなる!って前向きに思えるようになった気がします。プレッシャーやストレスって、どうしても外部からの刺激によって生じてしまうものなので、わざわざ自分の中からはストレスを作らないように心がけています」
■二人が本作を通して感じた「囲碁」の奥深い魅力

──本作への出演を通して、囲碁に対するイメージに何か変化はありましたか?
ユチョン「変わりましたね。囲碁って、対局することで、相手が考えていること、大事にしていること、生き方も含めて、相手のことがすごくよく見えてくるという魅力がある。そういう奥深さを持った競技なんだなと感じました」
長野「以前は囲碁って勝負ごとだと思っていたのですが、囲碁の先生からお話を聞くと『たたきのめすように圧勝するのは違う』という競技らしいんですよ。勝ち負けだけにこだわるのではなく、対局相手と2人で盤面をいかに美しく作っていくかという。それほどお互いにリスペクトする気持ちを持っていないといけない競技なんだということに感銘を受けました。それって、競技以外でも実はすごく大切なことだなって感じたので、囲碁のイメージがだいぶ変わりましたね」
ユチョン「もともと僕の趣味はテニスとゴルフなのですが、今はちょっと囲碁に挑戦したい気持ちもあるんです。もしもいつか結婚して子どもが生まれたら、親子で一緒にやってみたいなぁ、なんて思っています」

長野凌大 PROFILE
2003年7月16日生まれ、静岡県出身。ダンスボーカルグループ「原因は自分にある。」のメンバーとして活動しながら、俳優としてもドラマ、舞台、朗読劇などに出演。近年の主な出演作にドラマ「シークレット同盟」(24)、「おとなりコンプレックス」(25)、「PUNKS△TRIANGLE」(25)、映画「栄光のバックホーム」(25)などがある。
パク・ユチョン PROFILE
1986年6月4日生まれ、ソウル出身。日本でもK-POPブームを牽引した韓国を代表する人気グループ「東方神起」「JYJ」のメンバーとして活躍。俳優、作詞作曲でも数多くの賞を受賞している。24年9月にソロアーティストとして日本デビューを果たし、同年12月にJAPAN Mini Album「Where I Walk」、25年8月にJAPAN 2nd Mini Album「Metro Love」をリリース。25年12月に日本1st写真集「Fragments of color」を発売した。
取材・文/石塚圭子 撮影/中川容邦




