石井杏奈が映画『楓』撮影裏側やスピッツ愛を語る
映画 インタビュー
2025.12.13
スピッツの名曲「楓」を原案とするラブストーリー映画『楓』が、12月19日に全国公開される。本作に挑むのは、数々の恋愛映画を手掛けてきた行定勲監督。大切な人を失う運命に向き合う主人公を、福士蒼汰と福原遥が演じる。そこで、本作に出演する女優の石井杏奈にインタビューを敢行。現場の様子や映画の見どころをたっぷり語ってもらった。

――スピッツの「楓」という曲はとても有名ですが、まずは本作に出演が決まった時の気持ちから教えてください。
「私はもともとスピッツさんが好きなので、プレイリストにも当然『楓』が入っていました。切ないのに、不思議な温かさを感じる魅力的な楽曲だという印象があって...。この曲を原案としたストーリーだと聞いて、『いったいどんな映画になるんだろう』って、とてもワクワクしたし、出演できることが嬉しくてたまらなかった。とても興味が沸いたのですが、台本を読んでみて、やっぱり楽曲同様に切なくて、はかない...。それでいて温かい物語だと感じました。優しい秘密が招いた現実が、周りの人を幸せにしたり、辛くさせたりする...。悪い人が全然出てこなくて、皆がいい人だし、真っ直ぐに生きようとしているんですよね。だからこそ、多くの人に愛される作品になっていくような気がしました」
――今回は、福士蒼汰さんが演じる須永涼を慕う、後輩の遠藤日和を演じています。彼女はどんな人物だと捉えていますか?
「日和は、不器用で素直な人。自分の思ったことをズバッと言えるし、行動的で愛嬌のある人物ですね。日和の行動や言動、すべてが許せてしまうというか...。私はすごく好きです。とても魅力的な女性だし、この映画を観る人にもそう思ってほしくて、精一杯演じようと思って撮影に臨みました。涼くんとのシーンが一番多いので、日和は先輩である涼と一緒にずっと頑張ってきた。その関係性を意識しました。私自身は福士さんと"はじめまして"の関係なのですが、もう福士さんの胸に飛び込むような感じで、全力でぶつかろうという思いでしたね。私はどんな役でも、いつも演じる役を大好きになるように心がけています。それがすごく悪い人だとしても、大好きになれば演じやすいと思うし、自分の心にウソをつかずに演じられる気がします。だから誰よりも日和のことが好きだし、観ている人にも日和のことを好きになってもらえれば嬉しいですね」

(C)2025 映画『楓』製作委員会
――共演場面が多かった福士蒼汰さんですが、現場ではどんな様子でしたか?
「福士さんは、本当に温厚な方なんですよ。あまりにも優し過ぎるので、『普段怒ったりしないんですか?』と聞いてしまったのですが、『うん。あんまり人にイライラするとか、怒ることはないんだよなぁ』って(笑)。もう、イメージそのままでしたね。私がどんな芝居をしても受け止めてくれるし、演技についても、すごくいいアドバイスをしてくださるんですよ。日和にとって涼くんが尊敬できる先輩だったのと同様に、現場での福士さんも私にとって本当に尊敬できる方でしたね。私は、自分の感性で直感的にお芝居をするタイプなんですけど、福士さんはすごくトーンを意識するんです。『この場面は、普通はこうやるんだけど、少しトーンを下げてみたら?』などと助言をしてくれて。言われた通りにトーンを意識して演じると、確かにセリフに深みが出てくるんです。福士さんに、直感にプラスしてテクニックを使うようなアプローチを教えてもらえたことは、大きな収穫でした」
――亜子役の福原遥さん、雄介役の宮近海斗さんとの絡みもありますが、お二人については?
「遥ちゃんは、本当に可愛い人です。彼女とは今回が2回目の共演なんですけど、常に癒しを与えてくれるところは変わりません。撮影の合間に女子トークもしたのですが、私のどんな言葉も肯定してくれる感じで、優しく包み込んでくれるんです。同い年なのに、ちょっと大人びていて、とても魅力的な方だと思いますね。宮近さんとは撮影の直前に、あるダンスのバラエティ番組で共演したので、その収録の話で盛り上がったりしました。映画では初めての共演でしたけど、とても親しみやすくて。日和と雄介の"コンビ感"みたいなものも出せたような気がしますね」

――撮影現場で苦労したことや楽しかったことを教えてください。
「日和を演じる上で、どう演じようかと悩むこともあったけど、すべてを受け止めてくれる現場だったので、撮影中はずっと楽しかったです。スタッフも素敵な方ばかりで、探るというようなこともなくて、一発目からマックスで、スムーズに現場に入れました。衣装さんやヘアメークさんも『日和はこんな感じでどう?』とか提案してくれたので、私も皆さんと一緒に自然に日和を作りあげることができた感じです。本当に自由に、のびのびと演技をさせてもらえました。行定勲監督の第一印象はすごく怖い方だったのですが、それは15秒ほどでまったく消えてしまい...(笑)。とってもフランクに話してくださるので、そのギャップが素敵だと感じました。アフレコの時にも、空き時間があったのですが、監督が楽しいエピソードトークで埋めてくださって、すごく楽しかったです」
――とてもいい現場だったようですね。そんな雰囲気なら、役者さんもやりやすかったのではないでしょうか?
「そうなんです。この作品は、現場の空気がすごく映像に表れる映画だと感じました。撮影中は、自分が出ていない場面の様子はわからないけど、全編を初めて見た時に、それを強く感じたんですね。温かくて、優しさが溢れている映画だけど、その中に切なく、はかないシーンがある。『楓』という楽曲の良さが全面に出ていて...。現場のいい雰囲気がしっかり物語に影響していることを、これほど強く実感できた作品は初めてです。これからも、現場の空気感を大事にしたいと思えました。私より年下の役者さんとご一緒する時には、ストレスを感じないような現場づくりをこれから率先してやっていきたいと思うようになりました」

――では、最後にこの映画を観る人たちに、どんな風に感じてもらえれば嬉しいか。見どころを含めて教えてください。
「とても感動的なラブストーリーになっているので、まずは描かれている物語をそのまま受け取って、たくさん涙を流してほしいと思います。私は、高校時代の回想シーンも結構好きなんです。そこでは、恵くんや亜子ちゃん、涼くんたちの気持ちの矢印がいっぱい動いていて、青春の切なさを痛感できる場面がたくさんあるので。『ああ、青春ってこんな感じだよなぁ...』って思えるはず。あとは星空やニュージーランドのきれいな風景など、美しい映像も楽しんでほしい。それから『楓』の曲が要所で流れるのもポイントですよね。この映画を観れば、改めて『楓』という楽曲の素晴らしさも感じてもらえると思います。そして皆さんがこの映画を観終わった時に、改めて自分の大切な人のことを思う気持ち。それを大事にしてもらえれば嬉しいです。私も日和を演じながら、大事な人を思って毎日を過ごすことを大切にしたいと感じられました。映画『楓』という作品を通して、その気持ちを忘れないでほしいと思います」

取材・文/渡辺敏樹 撮影/皆藤健治
ヘアメーク/八戸亜季子 スタイリスト/道端亜未













