変形だけじゃない！「トランスフォーマー／ONE」につながる映画シリーズで描かれてきた深いテーマ
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2025.07.11
「トランスフォーマー／ONE」
車・飛行機などのビークルや、動物・恐竜といったビーストへと変形できる金属生命体――トランスフォーマー。彼らの中でも、宇宙の平和を守るオプティマスプライム率いる「オートボット」と、宇宙征服をもくろむメガトロン率いる「ディセプティコン」の戦いを、ダイナミックな映像とともに描いたSFロボット・アクションは、日米のトイメーカーによる合同プロジェクトから誕生。日本では1985年にTVアニメの放送が始まり、玩具、コミック、雑貨といったメディアミックス展開で、少年たちを中心に人気を博した。
オプティマスとメガトロンの知られざる原点が明らかに！
シリーズが世代を超えて大ブレイクしたのは2007年。『バッドボーイズ』『アルマゲドン』で知られるマイケル・ベイが監督、スティーヴン・スピルバーグが製作総指揮を務めた実写映画版『トランスフォーマー』が世界的ヒットを記録したことが転機となった。以降、実写映画シリーズとアニメ作品の2本柱で世界中にファンを拡大し続けている。そして2024年、劇場版8作目となる3DCGアニメーション『トランスフォーマー／ONE』が公開。これまで語られることのなかった、オプティマスプライムとメガトロンがまだ親友だった頃の物語――まさにシリーズの起源に迫る物語が展開される。
舞台は、金属生命体であるトランスフォーマーたちの故郷・サイバトロン星。地下都市では、動力源「エネルゴン」を採掘するため、多くの無力な労働ロボットたちが過酷な日々を送っていた。オライオンパックス（のちのオプティマスプライム）とD-16（のちのメガトロン）もまた、未熟な作業ロボットの一員だった。変形（トランスフォーム）に必要な部品「コグ」を持たない彼らだが、いつかこの閉ざされた日々から自由になれるという希望を失わずにいた。やがて二人は、トランスフォーム能力を手にし、過酷な戦いに身を投じていく――。そして、友情と信頼で結ばれていた関係は、戦いの果てに、やがて対立と憎しみへと変わっていく。唯一無二の親友から生涯の敵へと変化するドラマチックなストーリーを、圧倒的なリアリティーで描き出す。
人間とトランスフォーマーを通して描かれるテーマに注目！
スピーディな変形シーンの爽快感や、ド派手なバトルが注目されがちな劇場版シリーズ。しかし、その根底に一貫して流れているのは、「友情」と「多様性」だ。特に第1〜3作で描かれるのが、少年サム（シャイア・ラブーフ）と、黄色いアメ車に変形するバンブルビーとの、種族を超えた絆。言葉を持たずとも信頼を重ねていくその関係は、単なるSFアクションにとどまらない温かなドラマを生み出した。さらに、その絆の原点をたどるスピンオフ映画『バンブルビー』では、地球に来たばかりの頃のバンブルビーと少女チャーリーの交流を通して、「異なる存在との共生」というシリーズの核心が、より鮮やかに描かれている。
少年少女たちがトランスフォーマーと純粋な友情を育む一方で、大人たちもまた、宇宙から訪れた金属生命体との間に、少しずつ信頼を築いていく。その象徴ともいえるのが、第4作『トランスフォーマー／ロストエイジ』のクライマックス。主人公ケイド・イェーガー（マーク・ウォールバーグ）と娘テッサ（ニコラ・ペルツ）が、命を懸けてオプティマスプライムを救おうとする場面は、単なるアクションを超えた"家族と絆"の物語として、多くのファンの心を打った。
シリーズ史上最もドラマチックなストーリーが展開される！
最新作『トランスフォーマー／ONE』で描かれるのは、今や宿敵となったオプティマスプライムとメガトロンの知られざる日々――。コグを持たないことから差別され、過酷な労働を強いられていた若きオライオンパックスとD-16。のちに誰もが知るヒーローとヴィランとなる彼らが、希望を胸に支え合い、やがて固い絆を結んでいく姿は、シリーズの"原点"に迫る重要な物語だ。その関係が葛藤を経て崩れていくまでの過程を、みずみずしいタッチと圧倒的な映像表現で描く本作には、シリーズ屈指の人気キャラクターのバンブルビーや、女性戦士エリータ-1も登場。新旧ファンを問わず、心に深く響く物語となっている。
これまでの映画シリーズでは、トランスフォーマーたちの威厳を表現するため、顔のデザインは複雑に作り込まれていた。しかし『トランスフォーマー／ONE』では、よりシンプルな表情に刷新され、キャラクターたちの感情の機微がストレートに伝わるようになった。物語冒頭、オライオンパックスがD-16に大切なステッカーをプレゼントするシーンでは、彼らの目や口元に浮かぶ繊細な表情が、見る者に驚くほどの親しみを感じさせる。だからこそ彼らが決別し、信頼から裏切りへ、親友から敵へと変わり、それぞれが"今の姿"へと覚醒する一連の流れは、シリーズ史上最も切なく、そして感動的な名シーンとして、深く心に刻まれるだろう。
第1作から最新作『トランスフォーマー／ONE』まで、シリーズを貫いてきたのは、血湧き肉躍るアクションだけではない。異なる種族や立場を超えて育まれる"友情"と"信頼"、その熱いドラマこそが多くの人の心をつかんできた理由だ。物語の根底に流れるテーマに注目しながら、世界中を夢中にさせた、それぞれの時代や視点から描かれるトランスフォーマーたちの物語を体感してほしい。
文／中村実香
