目黒蓮と有村架純の芝居のシナジー効果と大泉洋の名演の化学反応が"号泣"を誘う

目黒蓮と有村架純の芝居のシナジー効果と大泉洋の名演の化学反応が"号泣"を誘う

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同作品は、2017年に第157回直木賞を受賞した佐藤正午の同名小説を実写映画化したもので、「もう一度あなたに逢いたい」という強い想いが、時間も空間も超えて巻き起こす奇跡を描く物語。

仕事も家庭も順調だった小山内堅(大泉洋)の日常は、愛する妻・梢(柴咲コウ)と娘・瑠璃(菊池日菜子)の2人を不慮の事故で同時に失ったことで一変。深い悲しみに沈む小山内のもとに、三角哲彦と名乗る男性(目黒蓮)が訪ねてくる。三角は、事故に遭った日に瑠璃が面識のないはずの自分に会いに来ようとしていたこと、そして「彼女は、かつて自分が狂おしいほどに愛した"瑠璃"という女性(有村架純)の生まれ変わりだったのではないか」と告げる、というストーリー。

感涙必至!佐藤正午の最高傑作を監督・廣木隆一×脚本・橋本裕志で実写化

佐藤の最高傑作と名高い純愛小説を、監督・廣木隆一×脚本・橋本裕志という実力派クリエイター2人による初タッグで映像化ということで、見る前から"感涙フラグ"が立ってしまっているが、見ると"感涙"どころか嗚咽が抑えられないほど号泣させられてしまう。

劇中では、菊池演じる"瑠璃"の現代のフェーズと、有村演じる"瑠璃"が登場する27年前のフェーズがあり、この2つが折り重なるようにして物語が紡がれていくのだが、廣木監督のリアルな人間描写と圧倒的な映像美が、"原作のファンタジックな部分"と"実写のリアルさ"を絶妙につなぎ合わせており、時間的なギャップと一つの物語としての統一感が共存した傑作となっている。

背景で時代の変化を表しながらも演者には同じ動きをさせる演出で登場人物の内面を浮き彫りにしたかと思えば、登場人物が建物に入っていく様を上空から見下ろす画角で映して第三者的な視点で"ファンタジックさ"を担保するなど、さまざまな映像表現で作品に抑揚をつけており、静かに流れる時間と激しく動く時間を巧みに操り、見る者の心を震わせてくれる。

作品にさまざまな要素を与えている豪華キャストの芝居

そんなクリエイター陣の表現力を、役者陣の名演が支えている。大泉洋、柴咲コウ、有村架純、目黒蓮という主要キャストだけでなく、助演に田中圭、伊藤沙莉という超豪華キャストが集結しており、どの登場人物にも感情移入ができてしまう厚みのある作品へと進化させている。

大泉は、真っ直ぐで明るく家族思いの父親から一転して絶望に立たされる堅を、一貫して深い愛情を失わずに演じ切り、作品の"切なさ"を助長。柴咲は、"娘に寄り添い続ける母親"と"夫に対する信頼を持ち続ける妻"としての梢を熱演して、作品に"温かさ"を付与。一方、有村は謎多き女性として瑠璃を作り上げ、三角と共に見る者の心も引き付ける"ミステリアスさ"で作品にエンターテインメント性を深めている。

そんな中で、同作が単独での映画初出演となる目黒もすばらしい演技を披露して作品を彩っている。若く、純真で、一途な青年・三角を瑞々しく、時に痛々しくなるほどにピュアに演じており、有村が表現する"ミステリアスさ"と対照的な魅力を生み出して、物語のコントラストを強めている。三角がピュアであればあるほど、瑠璃がミステリアスに映り、その逆も然り。目黒と有村の芝居のシナジー効果は、「この27年前のフェーズだけでも、一つの作品として十分楽しめる」と思わせてくれるほどに見応えがある。そして、その効果は大泉の名演とも化学反応を起こして、ラストのダイナミックな"愛の奇跡"へとつながっていく。

トップクリエイターのコラボと豪華キャストの名演が見事に嚙み合った感動大作で、"感涙"ならぬ"号泣"でデトックスしてみてはいかがだろうか。

文=原田健

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