日本アカデミー賞で7部門受賞!息を呑む主演・山口馬木也さんの殺陣 『侍タイムスリッパー』【フルーツポンチ・村上健志】

よしもと<br>ドラマ部

よしもと
ドラマ部 (吉本興業所属のお笑い芸人)

吉本興業所属のテレビドラマ好きを公言しているお笑い芸人からなる。 現在は福田恵悟(LLR)・村上健志(フルーツポンチ)・大貫さん(夫婦のじかん)・りょう(小虎)らが所属。

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日本アカデミー賞で7部門受賞!息を呑む主演・山口馬木也さんの殺陣 『侍タイムスリッパー』【フルーツポンチ・村上健志】

<プロフィール>
村上健志(フルーツポンチ)
1980年12月8日生まれ、茨城県牛久市出身。2004年にNSC東京校10期として入学。在学中に、同期の亘健太郎とともにフルーツポンチを結成。特技の俳句で、MBS「プレバト!!」にて日常の風景を切り取る独自の才能を発揮し、永世名人の称号を獲得。2021年には「フルーツポンチ村上健志の俳句修行」と題し、句会での様子を書籍にして出版している。よしもとドラマ部に所属。ドラマ好きが高じて、多数ドラマ出演経験あり。


幕末の会津藩士、高坂新左衛門(山口馬木也)がタイムスリップしてきた場所は、現代の時代劇撮影所だった。現代の生業として、侍である高坂は斬られ役となり、時代劇の世界を生きていく物語。

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舞台は現代にも関わらず、この映画は時代劇だった。

物語の中心は時代劇を作る人たちの話です。そこにやってきた侍の、現代に戸惑う姿のおかしさやかわいらしさを追いながら、軽快に進んでいく物語。

作られる時代劇がどんどん減っていく現状の中、それでも時代劇を残そうとする人たちの想い、撮影所の裏側、時代劇に惚れ込んだ侍が描かれたこの映画を見終えると、時代劇って良いなと思っていました。それは、時代劇を愛する人たちの熱い思いに惚れ込んだからではありません。時代劇を作る裏側を見ることで、その大変さに感銘を受け応援したくなったからでもありません。『侍タイムスリッパー』には、時代劇そのものの魅力があったからです。

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時代劇を残したい理由とは何か?

時代劇に詳しくありません。時代劇を残すべき理由が何のかは分かりません。昔から続く伝統だから?日本が誇るオリジナルだから?過去を未来に伝える必要があるから?そこに関わる人たちの職が失われてしまうから?色々と事情があるのかもしれませんが、この映画を見て、確かに時代劇がなくなって欲しくないと思いました。

それは、カッコ良かったからです。劇中に殺陣のシーンが出てきます。息を呑む迫力で体に緊張が走っていました。相まみえる刀と刀の「静」に心を支配され、「動」に飛ばされそうになっていました。自分の激しくなる心臓の鼓動が、映画のBGMとなっていく感覚になりながら、そのシーンに夢中になっていました。時代劇に携わる方々はその魅力を知っているから、残そうとしているんじゃないかと思いました。うんぬんかんぬんの理由があるからではなく、時代劇が好きだから。カッコいいから。そのカッコよさを伝えたいからではないかと思いました。

そして、あのカッコ良さは単にこの映画が良かったからではなく、これまでに時代劇を支えてきた撮影所やそこに関わる人たちの歴史がなくては達成できないのだろうとも思いました。そう感じたのは、この映画に時代劇そのものの魅力と時代劇を作る人たちの愛情を描いていることが混在しているからなのではないでしょうか。

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東映京都撮影所「太秦」

『侍タイムスリッパー』は、安田淳一監督が私財を投じ、東映京都撮影所が撮影協力した作品で、低予算ながら大ヒットしたことでも話題になりました。

この映画が話題になり始めた去年の秋、このコラムも掲載されるよしもとドラマ部が担当する「J:magazine!」の連載で北大路欣也さんにインタビューをすることになり、太秦を初めて訪れる機会がありました。その時見たものが『侍タイムスリッパー』の中に出てくる出てくる。敷地内の道に転がった発泡スチロール、殺陣の練習をする道場、オープンセット。まさに太秦で見たあの光景でうれしくなってしまいました。劇中に出てくる多くの場所が、恐らく太秦だったのではないかと思います。

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太秦の中には、時代劇に関するあらゆるものがありました。床山、何千着もの着物を保管する倉庫、地面がコンクリではなく土のスタジオ。ものだけではなく多くのプロフェッショナルな方々もいました。役者さんのサイズに合わせてかつらを作る人、時代やシーンに置いて適切な着物を選ぶ衣装さん、劇中で使う武家屋敷を実際に作る数十人の大工さんなどなど。映画に全てが映っていたわけではないけれど、時代劇を支える撮影所の力がそこにはありました。タイムスリップしてきた侍が惚れた時代劇を作る撮影所は、まさに本物の太秦の光景でした。

多くの人の力と熱意と、時代劇・映画愛が物語に詰まった『侍タイムスリッパー』は、面白くてカッコいい映画でした。

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