ただ怖いだけじゃない!間宮祥太朗&佐藤二朗W主演『映画版 変な家』で描かれる、日常に潜む異常性と不気味さ
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2025.03.07
インターネットを中心に活動する、オカルトホラー作家かつYouTuberの雨穴。2024年年間ベストセラー(日販調べ)において、総合1位を獲得した最新作「変な家2 ~11の間取り図~」を含む3作品がランクインするなど、人気を集めている。謎の覆面作家というインパクトもありながら、読みやすい文体と構成で物語に引き込む。不可解な間取りが生み出す独特の恐怖、読み進めるにつれてゾクゾクとする感覚が増していく。住宅の中のある違和感から始まる新しいジャンルのミステリー「変な家」シリーズは、読み出したら止まらないと大反響を呼んだ。
興行収入50億円突破の大ヒット映画に!
そんな国民的ベストセラーとなった雨穴のデビュー作「変な家」を原作に映像化したのが『映画版 変な家』(2024年)だ。「リーガルハイ」シリーズで知られる石川淳一が監督を務め、間宮祥太朗と佐藤二朗をW主演に迎えて映画化した本作は、日本特有の住宅事情や間取りを題材にしたミステリー。若い世代から口コミが広がっただけでなく、名作ホラー映画のオマージュなども盛り込まれた内容に、映画ファンやミステリーファンからも注目を集め、興行収入50億円を突破する大ヒットとなった。
物語は、"雨男"の名前で活動するオカルト専門の動画クリエイター・雨宮が、マネージャーからある相談を受けることから始まる。引っ越し予定の一軒家の間取りについて「何かが変」と言うのだ。そこで雨宮は、自身のオカルトネタの提供者でミステリー愛好家の設計士・栗原に意見を求める。間取りの不可解な点について話し合ううちに、次々に奇妙な違和感が浮かび上がり、栗原はある恐ろしい仮説を導き出す。その直後に死体遺棄事件が世間を騒がせ、雨宮は事件現場があの"変な家"のすぐ近くだと知る。
俳優陣によるリアルな演技が恐怖を加速!
オカルト専門の配信をしている売れないYouTuber・雨男こと雨宮には間宮、ミステリー愛好家で変わり者の設計士・栗原には佐藤が起用された。端正な顔立ちで、コミカルにもシリアスにも振れる、硬軟自在な実力派として評価されている間宮。近年では、『破戒』(2022年)や劇場版も公開された「ACMA:GAME」(2024年)で主演、アニメ映画『BLUE GIANT』(2023年)では声優としてメインキャストの一人を務めるなど、幅広く活躍している。4月スタートの主演ドラマ「イグナイト -法の無法者-」の放送も控えている。本作でもその高い実力が存分に発揮され、間宮の自然なリアクションが恐怖を加速させる。間宮扮(ふん)する雨宮は、売れるために忠告も聞かず"変な家"の謎に踏み込み、事件の深部へと誘われていく。静かに、少しずつ近づいてくるような奇妙な違和感や不気味な気配。息遣いや視線も自然でリアルな間宮の演技に、日常の延長のような物語の世界観に没入させられる。
そして、本作は雨男と栗原というタイプの異なる2人が、協力して真相を解明していくバディ感も見どころの一つだ。雨男のバディとなる栗原に扮した佐藤は、脚本家や映画監督などマルチに活躍。福田雄一監督作品の常連で、アドリブやコメディーも得意とする名バイプレイヤーとして知られる。近年では、主演を務めたサスペンススリラー『さがす』(2022年)や少女の壮絶な人生をつづった人間ドラマ『あんのこと』(2024年)などで、演技力の高さが改めて評価されている。栗原は一風変わった妄想家の設計士というキャラクターだが、現実的な視点を持ってクールに謎を解明していく。変人ぶりはそのままに、リアリティーのある抑えた演技で物語を盛り上げる。間宮と佐藤の真に迫った掛け合い、絶妙なバディ感にも注目してほしい。
雨穴原案のドラマでも広がる不気味な世界!
映画の原作を手掛けたオカルトホラー作家・雨穴が原案を務めたドラマ「何かおかしい」も好評を博し、シーズン2まで制作されている。本作は、ラジオ局を舞台に、生放送中のちょっとした違和感から思わぬ悲劇が巻き起こる、リアルタイム進行型のヒューマンサスペンスドラマだ。原案だけでなくストーリーテラーとして雨穴自身が出演するなど、"雨穴ワールド"が展開される。
「変な家」をはじめシリーズを通じて、一番怖いのはやはり人間だと思い知らされる。当たり前に過ぎる日々の中のかすかな違和感や異常性が、じわじわと侵食していく。そんな不気味な怖さを体感してほしい。
文/中川菜都美