映画『侍タイムスリッパー』安田淳一監督×山口馬木也×冨家ノリマサ J:magazine!特別座談会【前編】

映画『侍タイムスリッパー』安田淳一監督×山口馬木也×冨家ノリマサ J:magazine!特別座談会【前編】

異例の大ヒットを記録した時代劇コメディー映画『侍タイムスリッパー』が、3月21日(金)よりJ:COM STREAMにて見放題で最速配信される。今回、それを記念して、安田淳一監督、山口馬木也、冨家ノリマサ特別座談会が実現。大いに盛り上がった座談会の様子を前後編2本に分けて、お届けする。

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安田「公開以来、舞台挨拶とか、いろんなところに出ましたけど、この三人だけというのは初めてですよね」

冨家「久しぶりに監督とマッキー(山口)に会えるというので、昨日からわくわくしてたんですよ!感覚としては戦友に再会するみたいな気持ちです」

安田「いろいろ戦ってもらいましたから(笑)」

山口「でも、監督のイメージって、初対面から変わらないですよね」

冨家「どんな初対面だったんですか?」

安田「山口さんのことは、『剣客商売』とか作品を見て、ぜひにと思ってお願いしたんですけど、そのとき『日本の時代劇史上、最も観客が真剣を使って撮影していると錯覚する映画にしたい』とお話ししたんです。僕は馬木也さんが初めて衣装をつけてセリフを話してくれた時『高坂新左衛門に会えた!』と思って感動した。撮影中は山口馬木也さんじゃなくて、高坂新左衛門本人と映画を撮ってる感覚でしたね」

山口「そこがすごくポイントでしたね。これまでいろいろな作品のテーマを聞いて、美しいなとか、なるほどと思うことはありましたけど、今回、監督に言われたテーマほど、自分の中で腑に落ちたものはなかったんです。監督と冨家さんの出会いは?」

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安田「もともと僕のプランでは、馬木也さんを風見役に考えていたのです。でも、BSの時代劇を見ていたら、冨家さんが実に素敵なお芝居をされたんです。この人が風見なら!と直感して、調べたら、インディーズの作品にも出演されていた。そこでダメもとでメッセージを送ったところ、台本を読ませてほしいと」

冨家「届いた脚本が最高に面白くて。どこで公開されるとか関係なく、これはやりたい、やらねばと即決でしたね。ただ、脚本の印象は強かったんだけど、監督との初対面のときのことは誠実な方だなと感じつつも、あまり覚えてない(笑)」

安田「誠実な人が準備万端とはかぎらないわけで、これまでの作品では撮影スタッフに『当日までの準備はわりと雑なのに、カメラ回りだすといきなり精度あげてクオリティ出そうとするから現場で帳尻合わせるのはやめてくれ』って迷惑がられてました(笑)今回はわりと準備したほうです」

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冨家「内容はどうやって作ったんですか」

安田「まず、幕末の侍が時代劇の撮影所にやってきて、斬られ役に挑むというアイデアは面白い。でもこれなら30分で飽きる。どうするか?撮影所舞台なら『蒲田行進曲』があった。階段落ちに匹敵するクライマックスとは?幕末の対立する関係なら討幕派と佐幕派。主人公にするなら、朴訥(ぼくとつ)で不器用で、誠実な会津藩士。敗れた立場だからこそ、現代の日本に対して様々な思いを描けると思いました。最初から会津藩士ありきではなく逆算でたどり着いた。この映画に関しては30分で前半のプロットができて、人物像や設定がきれいにはまって『これは面白い』と感じながら、結局全体のプロットは1時間くらいでできました」

山口「撮影は夏から真冬まで半年くらいかかりましたよね。僕は最初に炎天下のアスファルトに倒れて、優子さんに『大丈夫ですか』と言われるシーン、結構何度も撮りましたよね。地面がものすごく熱いんだけど、いったん立ち上がるとまた熱くなるから、ずっと倒れたままの姿勢で...」

安田「撮影所のご好意でオープンセットが空いてる真夏にクランクイン。当初はいっぱいいっぱいでそこまで気が回らなかった(汗)」

冨家「クライマックスの立ち回りは、極寒の中でしたよね」

安田「マンパワーが足りなくて、日数を固めて撮ることができなかった。ひと月に数日ずつ半年かけて撮ることに。結果的に夏から冬まで季節を感じさせる映像が撮れてしまった(笑)」

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山口「監督の現場で興味深かったのは、お芝居について監督と話をしていたはずなのに、いつのまにか撮影のカメラマンになったり、照明になったりしているときがあるんですよ。それはたぶんご本人も気づいてないんですよね。僕らが今のカットをNGだと思うのは、お芝居としてなんですけど、監督は『画』として狂いがあったと感じている。観点は違うのにNGだと意見が合うのは、初めての経験でした」

安田「カメラマンとしてのNGを監督として伝えているので違和感もあったと思います(汗)」

冨家「監督に『1センチ上手に』と細かいところまで指示されたもんね」

山口「しょっちゅうありましたよね(笑)」

冨家「画としての嘘は許さない。それが適格に画面に出てるんですよ。ありがたいことに映画館でもリピーターがたくさん来てくれて、また配信になるとさらにたくさんの方に見てもらえるじゃないですか。監督のこだわりの構図もますます伝わりますよね」

安田「配信でのお客さんの反応が楽しみです」

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文/ペリー荻野 撮影/中川容邦

後編に続く 

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