アイドルから女優へ転身した小泉今日子が『涙そうそう』などで見せた等身大の輝き!

アイドルから女優へ転身した小泉今日子が『涙そうそう』などで見せた等身大の輝き!

1980年代を代表する女性アイドルとして活躍した小泉今日子は、女優としても才能を発揮。1983年にドラマ「あんみつ姫」で本格的に演技の世界へ進出し、1985年に主演ドラマ「少女に何が起こったか」の大ヒットで女優としての地位を確立した。さらに、1988年公開の映画『怪盗ルビイ』で毎日映画コンクール主演女優賞などを受賞し、その演技力が高く評価された。

幅広い演技が魅力の女優に本格的シフト

主演作はもちろん、脇役でも印象的な演技を見せる小泉。1997年公開の映画『虹をつかむ男 南国奮斗篇』では、子連れの女・節子を好演。本作は、奄美群島を舞台に、元映画館主の活男(西田敏行)と、彼を慕うモラトリアム青年・亮(吉岡秀隆)が、移動映画を携えて島々を巡る人情喜劇。亮が節子に淡い恋心を抱くことから、彼女はいわばマドンナ的存在となる。夫に逃げられた過去を持ちながらも、明朗快活で美しい節子役は、小泉の魅力が存分に発揮されたキャラクターだ。監督を務めたのは「男はつらいよ」シリーズで知られる山田洋次。前作に続き映画愛に満ちた物語を紡ぎながら、活男のかつての恋人・松江(松坂慶子)とのかなわぬ恋と、亮のはかない想いを対比させることで、山田作品らしい切なさを織り込んでいる。

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「虹をつかむ男 南国奮斗篇」
(C)(C)1997 松竹株式会社・TBS

物語に深みを与える演技と存在感で魅了

2006年公開の映画『涙そうそう』でも、小泉は強い印象的な演技を見せた。本作で彼女が演じたのは、居酒屋で働く主人公・新垣洋太郎(妻夫木聡)の母・光江。名曲「涙そうそう」をモチーフに、『いま、会いにゆきます』の土井裕泰監督が手掛けた感動作で、沖縄を舞台に血のつながらない兄妹の切ない愛の物語が描かれる。主演の妻夫木と、妹・カオルを演じた長澤まさみの演技は高く評価され、2人はそれぞれ日本アカデミー賞の主演男優賞と主演女優賞を受賞。特に長澤の存在感が光る作品だが、前半で退場する小泉の演技も深い印象を残す。光江は、洋太郎が8歳の時にミュージシャンの金城(中村達也)と再婚し、彼の娘であるカオルを受け入れる。しかし、金城が家族を捨てて失踪すると、光江は絶望の中で他界。最期に「カオルは独りぼっち、どんなことがあっても守ってあげるのよ」と洋太郎に遺言を残し、彼の人生に大きな影響を与える。小泉は限られた登場時間の中で、切ない表情と哀愁を帯びた演技を見せ、物語に一層の情感をもたらしている。

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「海の沈黙」
(C)2024 映画『海の沈黙』INUP CO.,LTD

年齢を重ねて輝きを増す美しさと演技力

その後も数々の映画賞を受賞し、小泉の演技力はさらに高く評価されていった。近年では、2024年度のブルーリボン賞助演女優賞を受賞し、大きな話題を呼んだ。同年はナレーションを含め7本の映画に出演。その中でも特に印象的なのが、若松節朗監督の『海の沈黙』での演技だ。本作では、"花の82年組"の同期である本木雅弘と、実に32年ぶりの共演を果たした。小泉が演じたのは、天才と称されながら姿を消した画家・津山龍次(本木)のかつての恋人・田村安奈。本作は、「北の国から」の脚本家・倉本聰が長年温めてきた構想を映画化。世界的な名声を誇る画家・田村修三(石坂浩二)を巡る贋作(がんさく)騒動、そして北海道で発見された女性の死体。二つの事件をつなぐ鍵となるのが、幻の天才画家・津山で、田村の妻である安奈が、長年行方不明だった津山と再会することで運命が大きく動き出す...。小泉の演技には、年齢を重ねたからこそ生まれる美しさと深みがにじみ出ている。

どんな役でも自然体で演じ、決して気負うことがない。等身大でありながら輝く存在感こそが、彼女の唯一無二の魅力だ。還暦を前に、さらなる円熟味を増した小泉今日子の今後の活躍にも期待が高まる。

文/渡辺敏樹

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