室井慎次が主役の映画最新作公開！「踊る大捜査線」が世代を超えて愛される理由
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2024.10.10
「踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ！」
映画『室井慎次 敗れざる者』が10月11日、続いて『室井慎次 生き続ける者』が11月15日と2部作での劇場公開が決定。"踊るプロジェクト"の再始動として話題を呼んでいる。1997年に連続ドラマとしてフジテレビ系で放送された「踊る大捜査線」は、湾岸署刑事課に配属された異色の刑事・青島俊作（織田裕二）が、理想と現実とのギャップに悩みながらも、正義を貫いて真摯（しんし）に事件解決に立ち向かう物語だ。
ドラマから劇場版へ、シリーズ大ヒットの軌跡
同作は最終話に視聴率23.1％を記録するなど、大ヒット。1998年には劇場版『踊る大捜査線 THE MOVIE 湾岸署史上最悪の3日間』が公開され、興行収入100億円超えを記録。2003年公開の第2弾『踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ！』は173億円を超えるなど、現在に至るまで実写日本映画No.1の座を維持している。その後も『容疑者 室井慎次』（2005年）、『交渉人 真下正義』（2005年）、『踊る大捜査線 THE MOVIE 3 ヤツらを解放せよ！』（2010年）、『踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望』（2012年）と、映画シリーズは計6作品が公開されて累計の興行収入は487億円、累計動員数3598万人を超えている。
分析と取材から生まれた刑事ドラマの新しい形
「踊る大捜査線」が、なぜこれほどヒット作となったのか。端的にいえば「従来の刑事ドラマとはまったく異なる作品」であったことが一因だろう。脚本の君塚良一は、当時の金字塔だった「太陽にほえろ」を徹底分析し、同作がその後の刑事ドラマの礎になった点を踏まえて、刑事があだ名で呼び合うといった当時の常識をすべて「禁じ手」にした。その上で本物の刑事たちに徹底取材をした結果、「刑事もサラリーマンである」という視点で本作の基本設定を作り上げた。青島刑事が元コンピューター会社の営業マンで、脱サラして刑事になったという設定もそれが理由だ。さらに大胆なのは「犯人を逮捕しない刑事の物語」という大胆かつ逆説的なコンセプト。青島刑事は、湾岸署という所轄の所属。苦労して犯人を突き止めても手錠をかけるのは警視庁の捜査員。自分の手では逮捕できない青島は、手柄を横取りされる気分に陥る。だからこそ、本作は本庁と所轄の対立を一貫してテーマにしてきた。
"もう一人の主人公"、組織に生きる男・室井慎次
警察組織内の重要な人物として登場するのが、柳葉敏郎演じる室井慎次だ。室井は、警視庁捜査一課の管理官。国立大卒のキャリア警察官でエリートだ。当初は正義を純粋に追求する青島と、組織の論理で動く室井は対立する。しかし、やがて2人は立場の違いをこえた友情で結ばれ、青島は警察組織の根本的な改革を室井に託す。魅力的で多彩な登場人物がそろうシリーズの中でも、室井は特別な存在であり、もう一人の主人公といってもいい。だからこそ『容疑者 室井慎次』というスピンオフ映画も作られ、今回の最新２部作にもつながっている。
個性的なキャラクターたちと警察内のリアルな描写
青島、室井以外にも恩田すみれ（深津絵里）、和久平八郎（いかりや長介）、真下正義（ユースケ・サンタマリア）、湾岸署の神田署長（北村総一郎）らの"スリーアミーゴス"など、魅力的な登場人物が多いのも見どころ。ストーリーも事件を追うだけで終わらず、警察組織の厳格なキャリア制度や官僚主義、縦割り行政といったリアルな問題も積極的に描き出した。このような警察内のリアルな描写は、後の刑事ドラマ制作にも大きな影響を与えたといわれている。君塚良一が脚本家となるきっかけが、萩本欽一との出会いであり、萩本の「常に冒険せよ、常に実験せよ」という言葉が彼の礎になったという。シリーズを通して、まさに冒険と実験を果敢に貫いてきたこと。それが「踊る大捜査線」の魅力であり、世代を超えて愛される理由なのかもしれない。
文／渡辺敏樹
