ドラマ史に残る最終回!木村拓哉「HERO」の時代を超えた魅力
国内ドラマ CS初
2026.02.25
近年、冷徹な警察学校教官を演じた「教場」シリーズなどでも俳優としての新境地を開拓し続けている木村拓哉。そんな彼の代表作の一つが、今なお屈指の人気を誇るドラマ「HERO」だ。木村が型破りな検事・久利生公平(くりうこうへい)を演じ、仲間たちと事件に挑んでいく。シリアスになりがちなリーガルドラマに、軽快なユーモアと人間味あふれる視点を織り交ぜた作風は、多くの視聴者の心をつかんだ。今回、フジテレビTWOで放送される本作の色あせない魅力を改めて振り返る。
型破りな検事・久利生公平と、城西支部を彩る個性豊かな面々
久利生は、高校中退後に大検を経て司法試験に合格し、検事となった異色の存在だ。強い正義感を持ち、時に大胆すぎる行動で周囲を戸惑わせるが、その根底にあるのは「真実を明らかにしたい」という揺るぎない信念である。トレードマークとなった茶色のレザーダウンジャケットにジーンズという型破りな服装は、当時の若者の間でファッションアイコンとなるほどの社会現象を巻き起こした。何より特徴的なのは、机上の理屈に頼らず、自ら事件現場に足を運び、関係者の声に耳を傾ける姿勢だ。
肩書や先入観に捉われず、本質を見極めようとする久利生の魅力を支えているのが、東京地検城西支部の個性豊かな面々である。松たか子が演じる雨宮舞子(あまみやまいこ)をはじめ、勝村政信、阿部寛、大塚寧々らが演じる検事たち、事務官役の八嶋智人と小日向文世、部長検事役の角野卓造、守衛役の正名僕蔵らが織りなす群像劇も、本作の大きな見どころだ。
さらに忘れてはならないのが、田中要次が演じるバー「St. George's Tavern」のマスター。寿司からお好み焼き、時にはスペアリブまで、注文されれば何でも出てくる不思議な店で、セリフはほぼ「あるよ」の一言だけ。このシュールなやり取りは、緊迫した物語の中で視聴者が最もホッとする名シーンとなった。

緻密なミステリーとユーモアが同居する唯一無二のドラマ性
久利生は異常なほどの通販好きで、毎回「アブ・ド・マッスル」などの怪しげな健康器具や便利グッズを職場に持ち込み、突然トレーニングを始める――そんなユーモラスな場面も本作のおなじみだ。単なるコメディーと思いきや、第1話で久利生が現場検証に持ち込んだ「等身大の人形」が事件の決定的な矛盾を暴くなど、遊び心が伏線として機能する脚本の妙も光る。
社会問題をテーマに据えたエピソードも多く、軽快さと重厚さを併せ持つドラマ性こそが「HERO」の真骨頂だ。特に、黙秘を続ける被疑者に対して久利生が放った「あんたが黙ってると、被害者の声は誰にも届かないんだよ」というセリフは、常に弱者の視点に立つ彼の検事としての矜持(きょうじ)を象徴している。
最終回となる第11話では、上層部の判断によって久利生の転勤が決定する中、殺害された被害者の一人息子のために懸命に真相を追う姿が胸を打つ。雨宮がサッカーのカメルーン代表選手の名前を11人全員言い当てる場面に加え、久利生と雨宮が石垣島で再会し、余韻を残して幕を閉じるラストシーンは、"月9ドラマ史に残る最終回"として語り継がれている。

13年の時を経てつながるバトンと進化し続ける城西支部の絆
特別編の放送や劇場版の公開を経て、2014年に13年ぶりとなる待望の第2期が放送され、翌年の劇場版第2弾で完結した。第2期から久利生とコンビを組む検察事務官は、雨宮から北川景子が演じる麻木千佳へと交代。検事メンバーも一新され、松重豊、杉本哲太、濱田岳、吉田羊らがレギュラーとして名を連ねた。
一方で、第1期からのファンにはうれしい再登場やリンクも多い。角野、小日向、八嶋らおなじみの顔ぶれに加え、かつて守衛だった井戸(正名僕蔵)が猛勉強の末に事務官へ転職して続投するなど、キャラクターの成長を感じさせる遊び心のある設定も健在だ。 第2期でも久利生の情熱は健在で、第1話で麻木に向かって放った「検事はね、一番最初に向き合わなきゃいけないんだよ。犯人よりも先に、被害者とね」という言葉は、シリーズを通してブレない彼の正義の原点を再確認させてくれた。

HERO(2014年)
ヒーローになろうとしないからこそ「真のヒーロー」たり得た
根強い人気を誇る本作の最大の魅力は、木村拓哉という存在に完全にシンクロした、久利生公平というキャラクターの完成度にある。あまりにもシンプルな「HERO」というタイトルが象徴するように、視聴者は毎回、久利生の言動に自然と共感し、気づけば応援してしまう。
印象的な名セリフの数々も、本作の魅力を語る上で欠かせない。「真実が一つとは限らないですよね」という言葉は、単純な勧善懲悪に陥らず、事件に関わったすべての人々の人生を尊重するこの作品の思想そのものだ。さらに、「別に、ヒーローになりたいわけじゃないんで」という、タイトルすら裏切るようなセリフも忘れがたい。だが、ヒーローになろうとしないからこそ、久利生は真のヒーローたり得た――そう感じさせるところに、「HERO」という作品の奥深さがある。改めて見返しても色あせることなく、時代を超えて唯一無二の輝きを放ち続けている理由がそこにある。
文/渡辺敏樹




