ドラマ史に残る名作 「BORDER」【フルーツポンチ・村上健志】

＜プロフィール＞
村上健志(フルーツポンチ)
1980年12月8日生まれ、茨城県牛久市出身。2004年にNSC東京校10期として入学。在学中に、同期の亘健太郎とともにフルーツポンチを結成。特技の俳句で、MBS「プレバト!!」にて日常の風景を切り取る独自の才能を発揮し、永世名人の称号を獲得。2021年には「フルーツポンチ村上健志の俳句修行」と題し、句会での様子を書籍にして出版している。よしもとドラマ部に所属。ドラマ好きが高じて、多数ドラマ出演経験あり。

どのドラマが一番好きですか？と聞かれることがあります。「東京ラブストーリー」、「101回目のプロポーズ」、「未成年」、「踊る大捜査線」、「ラブジェネレーション」、「アオイホノオ」、「それでも生きていく」、「重版出来」、「あまちゃん」、「最後から2番目の恋」、「アンメット ある脳外科医の日記」、、、などなど好きなドラマがたくさんありすぎて全く決められないのですが、「BORDER」も間違いなくその一つです。何か面白いドラマない？と聞かれれば「BORDERは見ましたか？」と聞くようにしています。

「BORDER」の話をすると思わず興奮して早口になり、おすすめでやってはいけないラストシーンについて喋りそうになるのを必死で抑えます。「BORDER」間違いなく名作です。

死者と対話のできる能力を身につけた刑事

ある事件で頭に銃撃を受け、脳に弾丸を残したまま一命を取り留めた主人公の刑事・石川安吾(小栗旬)は死者と対話する能力を手に入れる。その力を使いさまざまな事件と対峙するサスペンスストーリー。

そんな能力、都合が良すぎないか？と思うかも知れません。殺された被疑者から、犯人の情報が聞けたら事件解決など容易ではないか？と僕自身も思っていました。ところがそうではないのです。死者の証言で犯人が分かっているのに、その証言を現実世界では使えません。石川はどうやって犯人を逮捕まで追い詰めるのか？その展開に釘付けになった第一話。

なるほど、こういった話が続くのかと思った矢先、第二話で裏切られます。今度の死者は、追い詰められて自死をした連続殺人犯なのです。死んだ犯人の言葉により新たな事件と対峙することになるのです。放送回ごとに違った展開がどれも濃密で見応えのある骨太ドラマです。

さらに誤解を恐れずに言うと、このドラマの核は死者と話せるという設定ではないのです。いや、もちろん核なのですが、現実と向き合う石川の人間ドラマがとてつもなくすさまじいのです。犯人を追い詰めるためにあらゆる手段に手を染める石川の苦悩。能力のきっかけとなった冒頭の銃弾を放った犯人の真相。これまで見たことのない悪。そして最終話。

衝撃のラスト

よくあるうたい文句です。衝撃のラストと言われながら見る衝撃はさほど衝撃ではなくなってしまう恐れがあります。けれど「BORDER」のラストは衝撃です。どんでん返しとかそういう類ではなく。見終わった後に体の内側が大きく脈を打ち、釘付けになっていた映像から視線が部屋に戻っても、見えている物たちがなんだか意味を失ってただそこにあるような感覚になります。机はただの四角で時計の中の数字は数字にしか見えず、それが時間を示しているのだと分かるのに数秒かかる感覚。すいません、ちょっと変わった表現をしたくなって分かりにくくなったかも知れませんが、要はラストの衝撃の余韻がすごくて現実に帰ってくるのに時間がかかるということです。

見応えたっぷりの「BORDER」。最近はサブスク等のドラマの方が迫力があると思っている方もこのドラマ、見てください。無茶苦茶、息を呑みます。息を呑むってなんとなく使ってきましたが、これが息を呑むってことかと初めて実感しました。ぜひ。