遊び心あふれる映像表現で江戸川乱歩作品の息づかいを堪能せよ!
2024.10.15
推理小説の大家、江戸川乱歩。現代の若者の間では、漫画「名探偵コナン」の主人公・江戸川コナンの"江戸川"が彼の名前から取られたことでも有名だが、大正から昭和にかけて活躍したこの大作家の功績は日本文学界において多大なものがある。
探偵小説やフェティシズムを題材にしたもの、怪奇小説なども執筆しており、黎明期の日本探偵小説界に大きな足跡を残した作家だが、中でも少年向けとして1936年に発表した明智小五郎と小林少年が活躍する「怪人二十面相」は、当時の少年たちから圧倒的な人気を博してシリーズ化された。
この「少年探偵団」シリーズの魅力といえば、やはり少年向けでありながら作家の特色でもある"おどろおどろしさ"、後世のジャパニーズ・ホラーに継承される"ゾクリとする怖さ"であろう。その魅力をそのままに、映像化した作品が「シリーズ江戸川乱歩短編集IV 新!少年探偵団」だ。10月20日(日)にチャンネル銀河で放送される。
同作品は、江戸川乱歩作品を"ほぼ原作に忠実に映像化"したシリーズの第4弾。満島ひかり演じる名探偵・明智小五郎、小林少年を団長とする少年探偵団と、怪人二十面相との戦いを全3話のオムニバス形式で描くミステリー。
満島だけでなく、嶋田久作が探偵団の少年の母親役を演じたり、坂井真紀が子供の役を演じるほか、永野、岩井勇気ら人気芸人もキーマンとなる役で出演するなど、異色のキャスティングも魅力の一つなのだが、何より映像の持つ特性を上手く使うことで原作の魅力を損なうことなく表現しているところが素晴らしい。
例えば、ト書き(せりふ以外の、登場人物の動作や行動などを指示した文章)部分を画面に映しつつナレーションで処理することで状況説明を一瞬でこなし、場面転換もリズミカルに素早く展開することでスピード感を生み出し視聴者を作品世界に問答無用で引き込んでいく。また、作家特有の"おどろおどろしさ"をCGを使うことで上手く映像として成立させ、"ほぼ原作に忠実"の名に恥じないクオリティーを出している。
1話30分と短めなのだが、演者のクセのある演技、映像技術満載の画力、原作の持つわくわく感あふれるストーリーが三位一体となって、あっという間の30分間を過ごすことができる。しかも、ナレーションや登場人物たちのせりふ回しなど、現代に迎合せず当時の言い回しのまま採用することで原作をリスペクトしつつ、しっかりと時代背景を含めた世界観を再現しており、見終わると短い時間にも関わらずまさに短編を読んだような読了感を体感できる。
かつて昭和の子供たちを熱狂させた作品を、映像で手軽に読んでみたらいかがだろうか。
文/原田健