僕を苦しめる女優 「366日」【LLR・福田恵悟】
国内ドラマ 連載コラム
2024.09.18
よしもとドラマ部 (吉本興業所属のお笑い芸人)
吉本興業所属のテレビドラマ好きを公言しているお笑い芸人からなる。 現在は宮地ケンスケ・福田恵悟(LLR)・村上健志(フルーツポンチ)・大貫さん(夫婦のじかん)・りょう(小虎)らが所属。
よしもとドラマ部 (吉本興業所属のお笑い芸人)
吉本興業所属のテレビドラマ好きを公言しているお笑い芸人からなる。 現在は宮地ケンスケ・福田恵悟(LLR)・村上健志(フルーツポンチ)・大貫さん(夫婦のじかん)・りょう(小虎)らが所属。
<プロフィール>
福田恵悟(LLR)
1979年11月9日生まれ、東京都出身。NSC東京校 7期生。2002年に伊藤智博とともにLLRを結成。コンビでの活動の傍ら、ドラマ好きとして「よしもとドラマ部」でのライブを約10年、回数として実に100回以上開催している。
僕は広瀬アリスが苦手だ。
最愛のパートナーが自分のことを忘れてしまったら、一体どうするでしょうか?その人に自分を思い出させようと努力しますか?その努力とは一体どのような努力なのでしょうか?自分がいかに親しかったか説明するのか、過去に二人で行った場所を巡ってみるのか、共通の知り合いを会わせてみるのか...。
どれも可能性はありそうですが、かなりしんどい努力と言わざるをえないでしょう。では、諦めますか?このドラマはそこが一番難しいのだと考えさせられる作品です。
言い方は良くないですが、いっそのこと、死んでしまった方が踏ん切りがつくのかもしれません。そうなんです、これは最愛のパートナーが死ぬよりも、もしかしたら辛いことなのかもしれないのです。居るのに居ないのです。居ることが居ないことより辛いのです。
その辛さから解放されたいがために、努力に明け暮れるでしょう。しかし、いつしかそんな自分にとっては献身的な努力がパートナーにとっての重荷になっていく。自分が忘れてしまった事が、この人にこんなに辛い思いをさせてしまっていると自分を責めていく。思い出してもらおうと献身的にされればされる程、心を閉ざしていく...。
そして、もしかしたらそんな努力をしている間に、その記憶を失くしたパートナーは新たな誰かに惹かれてしまうかもしれないのです。なんだかひどいと思うような例えですが、記憶を失くした人間が、また同じような人生を歩むとは限らないのです。
だからと言って、自分のことを忘れているパートナーに自分以外の誰かに惹かれないでくれと言うことほど、お門違いなことはありません。ただただ、自分のことを思い出してくれると願って、その人の新たな人生を見守るしかないのです。自分のことを忘れてしまった人をずっと忘れることが出来ずに...。
思わず目をふさぎ、見るのも辛いドラマ。出来ることならば避けて通りたい作品。もしかしたら、最後まで見ることもなく、いつしか存在すら忘れていたかもしれません。
しかし、それを渾身の演技と、天性の明るさ、そしてなんとも言えないすべてを包み込むような魅力で、見る者の不安を取り払う。この物語の本質を僕たちに優しく突きつけてくる。このドラマから逃げてはダメだと語りかけてくる。もし、現実世界で自分に同じことが起こったとしても、しっかりと受け止めて立ち向かわなければならないと分からせてくれる。
いつしか僕は、物語の中の彼女を応援していた。僕は、この重くて辛くて泣けてくるドラマから逃げることを許されなくなった。分かったよ、どんな結末が訪れようとも僕はこのドラマの最後を見届ける。彼女と同じように、わずかな希望の先にあるハッピーエンドを願って...。
そんな気持ちにさせる、不思議な魅力を持った女優。
広瀬アリスが僕は苦手だ。