「醜くないですか?」『吉田と粗品と』が導き出す答え【戸部田誠】
エンタメ 見放題連載コラム
2026.04.29
「なんかすごい評判で、『あのブラマヨ吉田と霜降り明星の粗品で"令和の松紳"が始まった!』っていうのを見ました」
霜降り明星・粗品がそう言うと、ブラックマヨネーズ・吉田は「嫌やなぁ、そんなハードル」と苦笑いした。
まさに「吉田と粗品と」(読売テレビ)は、「松紳」(当初広島テレビ制作、のちに日本テレビ制作に移行)での松本人志と島田紳助のように、お互いにリスペクトし合っている先輩・後輩の組み合わせ。どこか近しい立ち位置に居つつも、それぞれが確固たる価値観を持っていて、それを強く公言していることも同じだ。そうした関係性は、同じ読売テレビ制作の上岡龍太郎と笑福亭鶴瓶による「鶴瓶・上岡パペポTV」からつながっている系譜上にある番組といえるだろう。
ギャンブル好きという共通点のある2人は実は、以前別番組で一度"コンビ"を組んだことがある。
その際、ギャンブル観、ひいては価値観の違いが垣間見えると同時に、そのコンビワークの良さを示していた。そして昨年から満を持して始まったのが「吉田と粗品と」。悩める相談者と電話でつなぎ、人には言えない、でも誰かに聞いてほしい、そんなディープな悩みに二人が寄り添っていく番組だ。
たとえば、「私は人と話すとき、『自分の話は退屈なのでは?』と被害妄想が膨らみ、会話がうまくできません。実際、私の話で場を盛り下げてしまうことが多々あります。極度の人見知りですが、人とはつながりたい。そんな欲求を抱えながら会話に悩む日々です。人と上手く会話をするためには、どうすればいいのでしょうか?」といった悩みだ。
それに対し、二人がアドバイスをしていくのだが、その回答は凡百(ぼんびゃく)の悩み相談では決して出てこないであろう、独特なものだ。
吉田は「圧倒的に自分より、ちょっと劣ってる人、こいつには何があっても逆転されへんやろうという人、そういうやつらと集まって、自信をつけていくっていうのはどうやろ?」と言い出す。それだけを聞いても頭の中は「?」となるが、これは吉田自身の経験則なのだという。仕事の現場に行くと周りはテレビで生き残ってきた猛者たちばかりだ。自信をなくし、萎縮してしまっていた。そんなとき、将来有望じゃなさそうな後輩たちを集めて飲みに行き、「お笑いとはな...」などと語っていた。そのときは「最強」になれる。その成功体験で自信を持ち、仕事現場で力を発揮できるようになったという。そんな吉田のアドバイスに対し、
「それ、醜くないですか?」
と、相談者が率直に言うと、粗品は爆笑。まさに番組初回、粗品は吉田に対し「最低じゃないですか、考え方(笑)」と言い、それに対し吉田は「最低というか独特」と返し、「それがもうたまらんくて、めっちゃ好きなんですよ」と、粗品は「最低」にも見える吉田の独自の言動が大好物なのだ。
一方でPTAの役員をしていて苦労しているという主婦に対しては、実際に妻がPTAの活動をしていたのを見ていた経験を踏まえて、頑張っている姿を見て「いい妻だな」と改めて思い夫婦の絆が強まったなどと真摯に話し、相談者が感動して涙ぐむ場面もあった。
対して、PTAに関してピンと来ない粗品は「吉田さんの経験談を聞けてよかったっていうところ、申し訳ないんですけど...いや、これ違うんじゃないですか」とあえて逆張り。彼女の悩みのタネのママ友に対し「先手打って、自分の息子に、そのママ友の悪口を言いふらさせるっていうのはどうですか?」と言い出し、いい感じにまとまりかけたその場を"混沌"に引き戻すのだ。
吉田も粗品も、自分を良く見せようという意識が薄い。逆に、自分が良いと思ったことを強く主張し、それに忠実に生きている。だからその主張が時に「最低」だったり「極端」だったりしても、それぞれの「本気」の言葉だからこそ、胸に響いてくる。
「悩み相談」という体裁をとった価値観のぶつかり合い。綺麗事では救えない現実に「正しさ」では決してたどり着けない回答を示している。




