倉嶋紀和子と細江純子"銘友"の2人が燗酒の魅力に出合う
エンタメ インタビュー
2024.12.20
酒場雑誌『古典酒場』の創刊編集長・倉嶋紀和子が日本各地の酒どころを巡り、日本酒の奥深さに迫る人気シリーズの特番「にっぽん酒処めぐり~燗酒SP~」が、12月31日(火)に旅チャンネルにて放送される。
同番組は、昨今、体に優しくゆっくり楽しめることで人気の燗酒(かんざけ)にスポットを当て、倉嶋が燗酒にこだわる神奈川の酒蔵・酒場を巡る。小田原漁港にやってきた倉嶋は相模湾の幸で腹ごしらえした後、足柄上郡で銘酒「丹沢山」を醸す川西屋酒造店を訪問。フラスコを使って60度以上に温める"ド燗酒"を体験する。その後、ゲストの競馬評論家で友人の細江純子と合流して神奈川の銘酒にこだわった小料理屋を訪問。銘酒と名物料理のマリアージュを堪能しつつ、おかみの人柄に癒やされる、という内容。
今回、倉嶋と細江にインタビューを行い、収録の感想や燗酒の楽しみ方、お酒の魅力などを語ってもらった。
――収録の感想は?
倉嶋「細江さんと飲めるのが本当に楽しみで!一緒にお酒を飲んでこんなに楽しい方なんていないですから(笑)」
細江「違う業界ではあるんですけど共通点も多いから。根っこの部分が似ているんですよね。だから今回、(倉嶋に)お声がけいただいたことがすごくうれしかったです。おかみさんともお話できて『好きなことを突き進む』という姿勢に刺激を受けて、本当にいい時間を過ごすことができて感謝です」
――燗酒SPということで燗酒にスポットを当てた内容ですが?
倉嶋「夏でも燗酒を飲むくらい好きなんですよ。翌日が楽なんですよね。じわりじわりと染み入る感じもいいし、優しく飲めるのがいいなって思って。だから、本当にうれしいテーマでしたね」
細江「酒燗器を使って自分で燗酒を作ったのですが、初めての経験でした。お薦めの温度というかたちで『このお酒は、この温度がいい』というのも学ばせていただきながら、"知りたいことを知る"という喜びも味わわせていただいて、そういうところも楽しかったですね。いろんな人と出会っていろんな学びや発見に出合うことってすごくいいなと思いますし、そこにお酒が入れば壁がなくなりますからね」
倉嶋「細江さんと飲むと、壁が一気になくなるんですよ。前にご一緒させてもらった時に、いろんな壁がどんどんなくなっていって、みんなが愉快に飲めて『この世の生きている人たちは、みんな友達なんじゃないか』ってくらいでしたから(笑)」
――収録では、おかみさんの"日本酒愛"をトークで引き出してらっしゃいましたが?
細江「生産者がつくる、それを卸す、そして飲むという、それぞれ工程が分かれるわけじゃないですか。そうすると、その(生産者と消費者の)間の人が"どれだけ生産者の思いを汲み取って、どう解釈して、消費者に出すか"というのが大事だと思うんです。お邪魔したお店のおかみさんは、酒蔵のことも分かっていて、なおかつ料理のことも、お客さんのことも分かってる。みんなとお酒が幸せになれる方法を知っているんですね。これってなかなかないことで、生産者の思いに寄り添えなければ違うものに変化してしまうんです。馬の世界も同じなんですよ。だから、それをすごく分かってらっしゃるお店はすごいなっていうのと、馬の世界との共通点も今回感じて、こだわりというか、そういうお店で飲む方がよりお酒を楽しめるんだろうなと思いました。お世辞抜きで、プライベートでまた来たいなって思いました」
倉嶋「本当にその通りですね!細江さんの分析力がすごい...。お店に対するご感想と、それがなぜそうなっているかというところまで分析するところがすごい」
細江「生まれて、育成して、牧場に行って、厩舎に行って...っていう馬と一緒なんですよ。でも、この循環の中で一貫して分かっている人って、いるようで実はなかなかいないんです。一貫して分かる人がいれば、みんな幸せになれるのに。それが分かってらっしゃるというのがすごいですよね」
――燗酒を楽しむ時のこだわりなどを教えてください。
倉嶋「お酒によってお薦めの温度があったり、燗冷ましがおいしかったりとかもあるんですけど、やっぱり自由に自在に自分が好きな温度帯で飲むのが好きですね。一口飲んで『ちょっと違ったな』って思ったら、また温めたり冷ませばいいかなって、雑な感じで楽しんじゃっています(笑)。そんな飲み方でも、ちゃんとおいしいお酒を造っている酒蔵さんはすごいなと思いますね。本当にリスペクトします」
細江「『お客さんの層がお店を作るんだな』と思う一方で、それってお店の人の志だったり、つくる雰囲気がそうさせるわけだから、そういうお店の空気感を大事に守ってらっしゃる方のお店に行くようにしています」
――燗酒の魅力は?
倉嶋「冷えた状態で飲むのももちろんおいしいんですけれども、温めていくと冷酒で飲んでいた時には感じられなかったうま味や酸味、日本酒を造っている人は『あまりいい単語』じゃないっておっしゃるんですけど、渋味やえぐ味もどんどん出てきて、味に厚みが出てくるんです。私はそれが大好きで、厚みが出ると何のお料理にも合うようになってくるので、食いしん坊な私としては『ひとまず燗につけとけ』っていつも思っています(笑)」
細江「以前までは『高級な日本酒は燗酒にするにはもったいない』っていうイメージがあったんです。でもそれは違うんだなって、今日気付きました。燗につけると表情が変わって、表情が違うからこそ合う物があるんだなと。だから、同じお酒でもまた違った表情を楽しめて、それに合うお料理も楽しめるというのが魅力だと思います」
――視聴者の方にメッセージをお願い致します。
倉嶋「神奈川って東京に近いので、あまり酒どころのイメージがなくて、『酒どころに行くなら遠くに行こう』と思いがちだったのですが、『こんなに近くに、こんなにおいしい日本酒どころがあるんだな』って改めて発見することができました。そして、燗酒っていいですよね。燗酒を飲むと幸せになるので、ぜひ番組をご覧いただいて、皆さんにも飲んでいただきたいなって思いました」
細江「お酒は人と人とのいらぬ壁を削ぎ(そぎ)、そこで土地の物、こだわる人の思いと出合うことができました。その上、心が通じ合う倉嶋さんとの会話...。本当に感謝と乾杯です。そんな様子をぜひご覧いただければ!」
文・撮影/原田健