声優・藤原夏海インタビュー#1 「一途に、幼い頃から声優という夢を追い続けた」

声優・藤原夏海インタビュー#1 「一途に、幼い頃から声優という夢を追い続けた」

『SPY×FAMILY』ダミアン・デズモンド役をはじめ、「MAJOR 2nd」 の茂野大吾役、「真・中華一番!」リュウ・マオシン役など、数々の作品で等身大の少年性や情熱的なキャラクターを演じ、そのまっすぐで芯のある声と真摯な熱量で観る者の心を惹きつける藤原夏海さん。この企画では全3回にわたって、声優を志したきっかけから、役作り、理想の声優像にいたるまで、出演作品のお話とともにインタビュー。飾らない、その素顔の魅力に迫ります。

■内気な性格を直したくて、積極的に人前に出て行った

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――幼い頃はどんな性格のお子さんでしたか?

「家ではめちゃくちゃおてんばで、陽気なタイプだったと思います。でも、そのくせ学校とかで人前に出ると、結構、もじもじしちゃう部分もあって。小学生の頃はお昼の放送でしゃべっている放送委員の子たちを見て、『恥ずかしくて、私にはあんなふうにできない!』って思い込んでいるくらい、人前に出てなにかをする勇気がない子でしたね」

――あんまり目立ちたがり屋なタイプではなかったんですね。

「どちらかといえば引っ込み思案なほうでした。友達とこそこそ『やいやい!』ってやっているようなタイプで...(笑)。でもいま思えば、本能としては、なにか表現したい気持ちがあったのかもしれないです。だから小学生ながらに『内気なままじゃダメだ!』って思ってブラスバンド部に入ったり」

――ブラスバンドですか...!

「そう、『とにかく人前に慣れなきゃ』と思って、積極的にそういう場に自分の身を置こうとしていたんだろうなぁ、って思います」

――小学生ながら、向上心というか、行動力がすごいですね...!

「たしかに、ちっちゃいときの行動力がなぜかすごくて、いまの自分でもびっくりするくらいなんですよね(笑)。中学校では委員会に入って、全校生徒のみなさんの前で壇上に上がって話をしたり、吹奏楽部に入ってコンサートに出たり。高校時代はバンドを組んで、文化祭の時にボーカルで歌を披露したりもしてました」

――いや、それだけ聞いてると全然引っ込み思案じゃないですけど...(笑)。

「(笑)。いや、とにかく人前でなにかすることに慣れようと必死で...!大勢の前に出るようなことをガンガン率先してやっていただけなんです」

――でも、それだけ経験を重ねていれば確実に度胸がつきますよね。

「それはそうですね。高校生のときに、自分の歌を大勢の人に届ける経験をしたときに、『あ、気持ちいい!』って思えたんです。元々歌が好きだったっていうのもあるけど、その楽しさだったり、幸福感を味わえたのは大きかったなって。なんだかんだで、人前でワーっとなにかを表現することに向いているというか、楽しさを感じる人間なんだなって気づきました」

――その時点で、ある意味、将来声優の道を目指す下地ができてたんですね。ちなみに、藤原さんといえば、少年役のイメージですが、性格的には「男勝り」なところもあったんですか?

「ありましたよ!いたずら好きっていうほどではないですけど、女子が好きな遊びというよりは、男子が好きな遊びばっかりしてましたね。休み時間になると、校庭に行ってドッジボールをしたり、あとは鉄棒をするのがすごく好きだった。放課後はゲーム。この辺は、家族の影響もあるかもしれませんが...」

――お兄さんや、弟さんがいたんですか?

「あ、いや3人姉妹の末っ子ではあるんですけど(笑)。真ん中の姉が、わりと男勝りな感じで、幼い頃からゲームが好きだったりしたので、一緒に過ごしてて私もしぜんとそうなったんだと思います。真ん中の姉の影響は大きかったと思いますね」

■「マイク前に立つ将来の自分」を紙粘土で

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――そんな活発な少女が、「声優を目指そう」と思ったきっかけはなんだったのでしょうか?

「それも、やっぱり真ん中の姉の影響なんですよ...!うちは、家族みんな、ゲームやアニメ、映画が好きで、海外作品の吹き替えも含めて、よくいろんな作品をみんなで観るような家だったんです。その中で、とくに真ん中の姉が声優さんにすごく興味を持ちまして。私に、『この作品のこの声と、こっちの作品のこのキャラクター、同じ人がやってるんだよ』とかって教えてくれたんですよね」

――なるほど...!当時、憧れていた声優さんはいらっしゃいますか?

「初めて姉に教えていただいたのが、三石琴乃さんでした。『美少女戦士セーラームーン』のうさぎちゃんと、『新世紀エヴァンゲリオン』のミサトさん。その二人が『同じ人なんだよ』って教えてもらったときに『え...!性格も雰囲気も全然違うじゃん!』ってなって...、幼いながらに『同じ人がこれを演じてるなんて、すごい!』と感動を覚えまして。私もこんなふうにいろんな人になってみたい、って思ったのが声優になるいちばん大きなきっかけだったと思います」

――たしかに...!あの頃、三石さんに衝撃を受けた人は数知れず。

「ほかにも、姉と一緒にアニメを見る中で『このキャラと、このキャラも一緒なんだよ』っていろんな人を教えてもらってはいたけど、やっぱり自分の中でのいちばんの衝撃は三石さんでしたね」

――もうその段階で、将来声優になるってわりと心に決めてたんでしょうか?

「そうですね...!たしか小学校6年生の卒業前に、図工で『紙粘土で自分の将来の夢を表現しましょう』という授業があったんですけど、その時点ですでに『声優としてアフレコしている姿』というのを紙粘土で作ってたので(笑)」

――完全に将来が固まってますし、作っている場面もめちゃくちゃ具体的ですね(笑)。

「『声優さんってどんな風にお仕事してるんだろう?』って気になって、ネットで調べたらテレビの映像に向かってマイク前でアフレコしている声優さんの写真を見つけまして、それが頭にぼやーっとイメージとしてあったんですよね。とはいえ、もうその頃から明確に『声優になりたい!』という想いがあったんだろうと思います(笑)」

――実際に声優になろうと動き出したのは、いつ頃だったんですか?

「高校生の頃、進路を決めるタイミングです。その頃には、養成所のこともいろいろ調べていました。でも、養成所に通うのにお金がかかるってわかったので、高校を卒業したらまずは就職して、自分で養成所に通うためのお金を貯めようと決めていました」

■養成所の学費のために地元の惣菜店に就職

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――高校卒業後、ご自身でお金を貯めるために一度就職された。先ほど撮影した動画で「静岡のお惣菜屋さんで働かれていた」とおっしゃってましたけど、もしかしてそれが...?

「そうですそうです!地元で何店舗か出しているお惣菜屋さんに就職しまして、最初の1年間だけ正社員として働いていました。本当は、養成所のお金を貯めたあとも、正社員として働きつつそのまま通っちゃいたいなと思っていたんですけど、東京に通う距離を考えると、正社員と両立するのは、さすがにちょっと難しいかなと思って」

――なるほど...!

「それで、ひとまず1年間働いたあとに上司と話しまして...そしたら、上司に『あなた、この仕事のほかに、やりたいことがあるんでしょ』って言われまして......ドキッ!って(笑)」

――バレてた...(笑)。

「じつは、そうなんです。自分の中では、目の前のやるべき仕事をガシガシやっていたつもりだったんですけど(笑)。べつに隠していたつもりもなかったんですけど、ズバッと見抜かれたときはびっくりしましたね」

――そういうのって、なんとなく伝わっちゃうものなんですね。

「それで『じつは声優を目指していまして、正社員を辞めて別のアルバイトでお金を貯めるつもりです』とお話ししたんです。そしたら、上司の方が『そのまま働いてもらった方がうちとしても助かるから、パートとしていてくれない?』と言ってくださって...!そこからパートとして切り替えて、2年ほど働かせていただきました」

――温かい職場ですね...!

「いや、本当にありがたかったです!ただ、本当はもっと早く養成所に通うつもりだったんですけど、直前になって『まだ心の準備が...!怖いかも...!』ってビビっちゃって(笑)。それで養成所に通うのも、もう1年遅らせて2年しっかりお金を貯めてから、本格的に養成所に通い始めました」

――でもそのとき社会に出て働いた経験って、いまでも役立っているんじゃないですか?

「それはそうですね...!お店では接客をメインでやっていたので、お客様への振る舞いだったり、つねに声を出していた経験は、少なからずいまに繋がっていると思いますし。現場に入ったときや、こうやってインタビューを受けたり撮影していただくときも元気に振る舞うってかなり大切ですし、『元気になにかを発する』っていう、私のベースはそのときに培われたんだと思います」

■学校にいるときくらいは、のびのびとした姿でいてほしい|TVアニメ『SPY×FAMILY』ダミアン・デズモンド

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――日本だけでなく、海外でも人気を博している『SPY×FAMILY』では、アーニャと同じ学校に通うダミアン・デズモンドを演じられています。役作りにあたっては、とくにどんな点を意識されていましたか?

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「ダミアンの役作りでいちばん大切にしたのは、『子どもらしさ』でした。ダミアンって、家庭環境がすごく特殊で、じつはかなり苦労している子じゃないですか。威厳ある父親のもとで、お父さんには認められたいし、優秀なお兄さんとも仲良くやっていきたい。だけど、なかなかうまくいかないもどかしさを抱えているんですよね。家庭の中では素直になれないというモヤモヤや葛藤を、一人で押さえ込もうとしてる...」

――まだ6歳なのに、と考えると複雑ですよね...!

「そうなんですよね。だからこそ、家庭じゃなくて学校にいるときくらいは、本来のダミアンらしく、のびのびと過ごさせてあげたいなって。父の前ではなかなか見せられない活発な部分だったり、友達とワーワー騒ぎたい、年相応の元気なエネルギーを、学校のシーンではしっかり表現したい、と思っていました」

――学校でのダミアンといえば、やっぱりアーニャとの掛け合いが最高です。あの小学生男子ムーブが、観ていてすごくほほえましいです(笑)。

「観ている方にとっては、かわいくてクスッと笑えるような場面が多いと思うんです。でも、演じる私としては『視聴者さんを笑顔にしたい!』ということを狙っているわけじゃなくて、ダミアンとして、アーニャのアクションをまっすぐ受け止めることが大事だな、とは思っています。アーニャの、あの無自覚で、キラキラした言動に対して、本当に素直にまっすぐ恥ずかしがったり、照れくさそうにしたり」

――たしかに...!家庭で素直になれない分というか、アーニャの前では感情の動き方がより素直になる、というか...!

「そうなんです!周囲から『どうしたんですか?』って言われたときに、照れ隠ししながら『バッ...!そんなんじゃねぇよ!』って全力で否定する...(笑)。その、素直でまっすぐな気持ちが、ダミアンを表現するうえではいちばん大事だなって思っていたので、演じるときにはかなり意識していました」

■新鮮なお芝居が生まれるアーニャとの掛け合い|TVアニメ『SPY×FAMILY』ダミアン・デズモンド

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――「ダミアンが尊い」と感じているファンも多いですが、藤原さんが思うダミアンの魅力ってどんなところだと思いますか?

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「ダミアンって、ついつい好きな子につい意地悪しちゃうような、どこか"昭和の男の子"っぽさがあるじゃないですか。最近の子たちだと、逆にすごくスマートでクールな印象がありますけど、あの不器用で素直な感じもすごく愛おしい部分だと思いますし、それがダミアンの魅力だなとは思いますね」

――アーニャ役の種﨑敦美さんと、アフレコ現場でのやり取りはいかがですか?

「いや、もう本当に種﨑さんがお見事なんですよ! テストの段階から、いろんなお芝居やアプローチを仕掛けてきてくださるので、それをダミアンとして打ち返すのがすごく楽しくて...!アーニャの、あのすっとぼけたニュアンスに対して、必死に戸惑ったり否定したり...。テストと本番で、また少し表現をガラッと変えてくることもあって、毎回すごく新鮮な刺激があります」

――プロならではのライブ感ですね...!

「ほんと、やり始めたときはどんなものが生まれるかわからないですからね(笑)。それに、アーニャってどんなにシリアスな場面であっても、何をしても許されちゃうじゃないですか。もう本当にずるいなと思うんですけど(笑)。でも、種﨑さんがそこで、いろんな表現を見せてくれるからこそ、ダミアンのリアクションもどんどん引き出されていくんだなと感じます」

――アーニャの一言で、ダミアンの言葉が引き出されていく。その構図が、まさしくアーニャとダミアンの関係みたいですね!(笑)

「たしかに...!(笑)。ファンの皆さんが『大人になった二人はどうなるんだろう』って未来の場面を想像して、すごく妄想を膨らませてくださっているという話もよく聞くんですけど、それもすごくわかりますよね(笑)。二人ならではの空気感や、やり取りを楽しんでいただけているのかなと思うと、嬉しいことだな、と思います!」

■成長と勇敢さを感じた「バスジャック編」のエピソード|TVアニメ『SPY×FAMILY』ダミアン・デズモンド

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――作品の中で、藤原さんがとくに印象に残っているダミアンのシーンを教えていただけますか?

「やっぱり、バスジャック事件のシーンですね...!イーデン校のクラスみんなで巻き込まれてしまって、すっごく危険で緊迫した状況になっちゃうんです。その中で、アーニャに首輪爆弾が仕掛けられてしまって。ただ、アーニャ自身は偽物だとわかっているので、その爆弾をコンコンって叩いたりしているんですけど(笑)。そんな危険な状況のなか、ダミアンがバスジャック犯に対して、『あいつの爆弾 オレの首につけかえろ‼』っていうシーンがあるんです...!」

――「MISSION:44 赤いサーカス」というエピソードですね...!

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「これまでも、ダミアンの勇敢さが垣間見えるシーンはありましたけど、あの瞬間は『なんてかっこいいんだ!』って本当にシビれましたね...!」

――あのダミアンの行動に胸を打たれた視聴者も多かったと思います。

「観てくれている人も同じ気持ちだったんだと思うと嬉しいですね...!あと、その直前にダミアンがアーニャたちのためにバスジャック犯の注意を引きつけようとする場面があるんですけど、そこで彼が思いついた秘策が、バスジャック犯に『うんこが今にももれそうだぜ...‼』と伝えるだけっていう......なんかそのアイデアも含めて、もうすっごくダミアンらしくて(笑)」

――ありましたね(笑)。

「物語の最初の頃は、『本当につむじ曲がりで生意気な子だな』という印象が強かった。でも、ベッキーやエミールたちクラスメイトと一緒に過ごしていくなかで、ダミアンらしさだったり、素の優しさがどんどん表に出てくるようになって。あんな緊迫した状況で、『そんな作戦かい!』ってツッコミを入れたくなるような場面ではありましたけど、彼なりの成長をすごく感じましたし、その後に勇敢さもバシーンと決まったシーンだったので、すごく心に残っています」

――『SPY×FAMILY』はアニメオリジナルの話も多いですし、今後も物語の展開が楽しみですね!

「そうですね!アーニャやダミアンをはじめ、子どもたちの成長やドラマも含めて、作品の魅力をこれからも一緒にお届けしていけたら嬉しいなと思っています」

■料理に対する純粋さをいちばん大切にしたかった|「真・中華一番!」マオ

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――「真・中華一番!」では主役のマオ役を演じられていました。昔から多くの方に愛されている名作ですが、マオ役に決まったときのお気持ちはいかがでしたか?

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「もう、とにかくびっくりしました! 歴史ある作品の続編ですし、旧作版のアニメが放映してからも結構時間が経っていたので、キャストが代わるということに対するプレッシャーや難しさは、正直すごく感じていました」

――たしか、旧作版でのマオは、田中真弓さんがやられていました。

「本当に、尊敬する大先輩で...!昔から『中華一番!』という作品が好きな方にとっては、旧作版の田中真弓さんのお芝居で、すでにマオのイメージってできあがっている方も多かったと思うんです。でも、以前のイメージをそのままトレースするのも絶対に違うと思ってはいて...。その中で自分なりのマオを作り上げていかなきゃいけない、というのは強く意識していました」

――藤原さん自身が捉えたマオを表現する必要があった。

「そうなんです。だからこそ『自分なりのマオはこうだ!』って決めて突き進む、その難しさや葛藤を感じていて、どんなふうに表現していくべきか、すごく悩んだのを覚えています」

――実際のお芝居では、とくにどんなことを意識されていたんでしょうか?

「いちばんは、マオの根底にある『料理で人を幸せにしたい、笑顔にしたい』という気持ちです。実際に物語が進むと、料理でバトルをしたり、『裏料理界』の刺客たちと戦ったりするんですけど、マオにとっては、"勝ち負け"そのものが目的ではない」

――なるほど...!

「もちろん、彼の中に『裏料理界がやっている悪事を阻止したい』って気持ちはあると思います。でも、やっぱり根本にあるのは、料理人としての思いだと思うんですよ。だからこそ、料理をしているときの純粋なワクワク感だったり、楽しさや嬉しさ、そういう気持ちをいちばん大切に演じようと意識していました」

――いわゆる、筋金入りの「料理バカ」ですよね(笑)。

「本当にそうなんですよ!原作を読んでいても『本当に料理が好きなんだな』というのがまっすぐ伝わってきますし、いろいろな料理人が登場する中でも、いちばん『料理バカ』って言葉がふさわしい人ってなると、やっぱりどうしてもマオになっちゃうんですよね(笑)」

■マオのおかげで料理をするように|「真・中華一番!」マオ

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――中華一番は料理シーンの臨場感もすさまじいですが、それを表現するために意識された部分もありましたか?

「じつはその辺は、結構イマジネーションが試される作品でもあって...!『扱っている食材の匂いってどんな感じだろう』とか、『食感はこんな感じかな』とか、そういった具体的なイメージを頭の中で膨らませながら演じていました」

――とくに苦労したポイントでいうと?

「とくに包丁で食材を、バババババーッて切るシーンとかは、アニメーションの動きに合わせて息を吹き込んだり、料理をしているときの体の動きをリアルに声に乗せる工夫もしていました。じつは細かな積み重ねをやっていたんですけど、それが料理シーンの臨場感として届いていたら嬉しいですね」

――そうした細やかに演技の工夫を重ねる一方で、マオの『料理バカ』な性格に対してはどのような意識でのぞんでいたんですか?

「マオにとって、料理ってただ作るだけじゃなくて、食べた人に『すごく美味しい!』って喜んでもらえる幸福感がいつでも根底にあるんですよね。相手がワーって喜んでくれる顔が見たいからこそ、料理をする時間そのものが愛おしくて楽しいんだなっていうのはすごく感じていて」

――藤原さんご自身は料理されるんですか?

「いや、それが当時は全然していなかったんですよ...!だから『料理を心から楽しむって、一体どんな感覚なんだろう?』っていうのは、最初、どう表現すればいいのかかなり悩みまして。どうやって自分を、マオのあの熱量に近づけていくか、ひとつひとつひも解いていく感じでした。でも、自分が料理をしない人だったからこそ、マオの持っているピュアな情熱にすごく感動していましたし、憧れもありました」

――お惣菜屋さんで働いているときに、料理を作ったりは?

「たしかに厨房に入ったりすることもあったので、お惣菜屋さんで働いていた頃に、お客さんに喜んでもらえた記憶を必死に思い出して、お芝居のヒントにしようと思ったこともありました。ただ、マオのように『心から料理が楽しい!』とは感じられていなかったし、なにしろ、食材を買いに行くことすら『ちょっと面倒くさいな...』って思っちゃう人間なもんで...(笑)」

――(笑)。

「でも、そうやってマオの『料理ってこんなに楽しいんだ!』という情熱に本気で向き合ったおかげで、私自身も刺激を受けた部分はあって。じつは、自分でもちょくちょく料理を作るようになったんですよ...!ひき肉が好きなんで、たまにドライカレーとか作ってます(笑)」

取材・文/郡司 しう 撮影/梶 礼哉

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