「薬屋のひとりごと」壬氏役・大塚剛央が語る作品への思い「終わってしまったら抜け殻になりそう(笑)」

爆発的な人気を誇るアニメ「薬屋のひとりごと」で、主人公の猫猫(マオマオ)と絶妙なコンビネーションを見せる壬氏(ジンシ)。第1期、第2期と回を重ねていくなかで、ミステリアスな印象の奥に人間味あふれる素顔をのぞかせてきた。その声を担う声優・大塚剛央さんに、第2期までの印象的な場面や役への向き合い方、新たにスタートした第3期。そして12月に公開される待望の劇場版の魅力を聞いた。

――「薬屋のひとりごと」が幅広い世代から支持されている理由をどのようにとらえていますか?

「謎解き、人間ドラマ、後宮での陰謀、猫猫と壬氏の関係など、本当にいろいろな魅力があるので、何がどう刺さるのか、一概には言えないと思っています。でも、支持される大きな理由としては、作品としての"完成度の高さ"や"人間ドラマの厚み"などが挙げられるのではないでしょうか。伏線回収だけでなく、そこに人間ドラマが絡むことで、物語も人間関係も広がり続ける。その"広がり続ける世界"が世代を問わずワクワクを生むんじゃないかなと思います。」

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――ちょうど、そこに「薬屋のひとりごと」の台本がありますが、大塚さんは台本を手にしたらいつもワクワクするとか、そういう感じはありますか?

「そうですね。家で台本をチェックしていて、『ああ、面白いな』と、思わずつぶやいてしまうことがあります。本自体の面白さもそうですが、アニメになったら、このシーンはどうなるんだろうと考えるとワクワクして、毎話毎話楽しみになります。」

――大塚さんが演じる、壬氏の魅力を教えてください

「彼の魅力は、蓋を開けてみたらこんなに人間臭いんだというところじゃないかなと思います。最初はミステリアスなキャラクターだったところから、実はもがき苦しんでいるんだということが徐々に明らかになっていく。一見、何不自由なさそうな立場にいるのに、生きづらさを抱えていたことなどがとても人間臭くて、見ている人たちの共感を呼び、壬氏の魅力につながっているんじゃないかと思います。」

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――壬氏を演じる中で、一番大事にされていることは?

「壬氏は宦官(かんがん)の立場のときはある種仮面をかぶっているので、多少芝居がかったところもあるのですが、だからといって声色を変えるよりは、まず『今、壬氏は何をしたいのか』『どんな状況なのか』を優先しています。猫猫との掛け合いでは壬氏の素が引き出される。そういう風に、自然と壬氏としてアウトプットできたらいいなと思っています。」

――大塚さんのなかで、第1期、2期で見てほしい壬氏のシーンは?

「第1期の9話です。壬氏の執務室で高順(ガオシュン)も交えて話していた場面なのですが、猫猫の話を聞きながら、壬氏が彼女との間に隔たりを感じたシーンです。立場の違い、死生観の違いが浮き彫りになり、今まで和気あいあいとした掛け合いもあった中、赤いライティングで不穏な雰囲気が漂い、挿入歌に花のカットも入ったり...。壬氏が猫猫との間には決して埋まらないものがあると気づく。そこをアニメならではの演出で見せています。本当に素晴らしくて、ここのシーンは原作やコミックスを読んだ時よりも印象に残っています。」

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――3期では壬氏のどんなところに注目してほしいですか?

「立場を明らかにしたからこそ、周囲の目も変わり、自分自身も変わらざるを得ないところもあると思います。皇弟・月の君として求められるものが増えてきましたし、その立場としての発言もしていかなければいけない、やらなければいけないこともある。立場ゆえにままならないものもあります。きっと今までとは違った一面が見えると思います。」

――12月には劇場版が公開され、ますます多くの人から注目されそうですね。

「劇場版が決まったときはどんな内容なのか、想像がつきませんでした。ストーリー原案は日向夏先生が担当されていますが、オリジナルなので基本的に参考にするものもない。でも、テーマを聞いて、台本を開いて『ああ、これは劇場版の『薬屋のひとりごと』だ』と思いました。物語は、原作では描かれない"その時、壬氏と猫猫が何をしていたか"が描かれるので、劇場版は作品全体の奥行を広げることにつながりますね。」

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――大塚さんにとって『薬屋のひとりごと』はどういうものでしょうか?

「触れない期間はちょっと考えられないぐらいの生活の一部というか、密度が濃い関わりをさせていただいています。万が一にも、『薬屋のひとりごと』が終わってしまったら、抜け殻になりそうな(笑)。それほど、壬氏としての関わりが自分の中でも大きいものになっていると思います。」

――最後にファンのみなさんへメッセージをお願いします。

「『薬屋のひとりごと』は原作小説、コミックスから入っていただいてもいいですし、アニメから入っていただいてもいい。そのどこかに触れたことでもっと『薬屋のひとりごと』を知りたくなる。そんな魅力を持った作品だと思います。まだの方はどこからでもいいので一度触れてみてください。第3期、さらに劇場版も、期待していただけたらと思います。 ぜひ『薬屋のひとりごと』をお楽しみください。」

文/前田かおり 写真/髙橋耀太