声優・石見舞菜香インタビュー#2「10年、20年経ったときに自分自身の人生経験が生かせる役者でありたい」
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2026.02.27
「フルーツバスケット」の本田透をはじめ、「【推しの子】」の黒川あかね、映画「さよならの朝に約束の花をかざろう」のマキアなど、数々の話題作でヒロインや重要人物を演じ、その透き通る声と繊細な表現力で、キャラクターの言葉に命を吹き込む石見舞菜香さん。穏やかな印象を与える彼女ですが、一方で親の反対を押し切って声優の道へと進むという、自分を通す"芯の強さ"も持っています。このインタビューでは全3回にわたって、石見さんが声優を志した原点となる幼少期のエピソードから、声優という仕事に込める思いまで、出演作品の裏話とともに語っていただきました。
■日本酒をメニューの上から頼んだりする

――石見さんは日本酒がお好きで、とくに好きな銘柄とかあるんでしょうか?
「それが、銘柄はまったく詳しくなくて...。お店に行っても、『これ見たことないから、これにしよう!』って直感で選んだり、なんならメニューの上から順に頼んでいったりするくらい。味の違いを語るほどではないんですけど、出されたものは何でもおいしく飲んじゃうタイプです(笑)」
――「とりあえず上から!」っていいですね(笑)。酔っ払うと銘柄や味、覚えてられませんしね。
「そうなんですよ〜、名前を覚える前に飲んじゃうので(笑)。全体的にどのお酒も好きです。とくにお刺身と一緒に飲むのが好きで、日本酒とお刺身の組み合わせは、間違いないです」
――ああ、いいですね......!ふだん、ご自宅でもよく飲まれるんですか?
「いえ、家で一人で飲むことはあんまりないですね。どちらかというと、人と飲むお酒が好きなので、飲み会とか、友達と集まったときとか。お酒そのものの味も好きですけど、誰かと一緒に共有するあの楽しい時間が好きなんだと思います」
――その気持ち、わかります。よく行く日本酒のお店もあったり?
「行きつけのお店はないですけど、以前行った『日本酒の飲み比べ』ができるお店はすごく楽しかったなぁ...冷蔵庫から、自分で瓶を出して注げるスタイルで、お盆に3種類くらいおちょこを乗せて、席まで持っていけるんです。『次はどれにする?』って友達と言いながら飲み比べて、飲み終わったらまた次のを選びに行って...」
――日本酒のドリンクバーみたいな...(笑)。
「そうそう、まさにドリンクバーでした!(笑)しかも、食べ物の持ち込みも自由なお店だったので、好きなおつまみを持ち寄ってワイワイできて。ああいう自由なスタイルで飲める場所は、また行ってみたいなぁと思います」
■作品や役ごとにアプローチを変えて

――前回のインタビューで『【推しの子】』の黒川あかねのお話をお聞きしましたが、あかねのように、ご自身を"憑依型"だと感じる瞬間はありますか?
「私の場合、『作品やキャラクターによる』というのが正直なところです。ものすごく想像力を働かせて構築していく作品もあれば、自分の感性のまま、心動くままに演じる作品もあって。自分の中では、その2つのパターンがあるような気がしてます」
――その「構築する」のか「感性のまま」なのかは、作品や役のタイプなどで違うんでしょうか?
「やってみて初めてわかることのほうが多いですけど、多少は傾向があるかもしれません。たとえば、ギャグやコメディー作品だと、『ギャグのお芝居』ならではの独特の空気感や、ある種のお約束のような流れっていうのが、あると思うんです。けっしてテンプレートに当てはめるわけではないんですけど、その場のノリや空気感を崩さずに、自分もその波にうまく乗っかっていくことが多い気がします」
――現場の"輪"で作っていくような。
「そうですね。だから、意外と頭で考えながら計算してやる現場も多くなりがちなんです。一方で、『【推しの子】』のようにリアルな心情描写を大切にする作品や、生っぽい感情が求められる現場だと、あまり頭で考えすぎず、自然と湧き上がってくるものを大切にしたお芝居になっていくことが多いかな」
――なるほど。もう一つお聞きしてみたいのが、事前準備。たとえば、黒川あかねはリサーチと考察力がハンパないですけど、石見さんご自身はいかがですか?
「そこに関しては、あかねちゃんみたいに『すべての情報を知って、それをそのままお芝居として表現できる役者さん』って、本当に天才だと思ってるんですよ...!」
――というのは?
「たとえば、『このキャラは利き手がどっちで、こういうクセがあって』という情報を知っていたとしても、それを『声だけの演技』でどう表現に繋げていくか、というのはすごく難しくて。あかねちゃんのような映像の役者さんなら、利き手や仕草を視覚的に見せられますけど、声優の場合、そこを音だけで表現するのはまた別の技術が必要になってしまうんです」
――たしかに...。
「あと、いざ現場でみんなと合わせてみたら『こういう方向性でいきましょう』と調整が入ることもよくあります。だから、あまり事前情報を頼りに、自分の中でキャラを固めてしまうと、それはそれでいい結果にならない。もちろん原作は読み込みますし、キャラについてもちゃんと把握していくけど、第1話の収録の段階では決め打ちしすぎない、というのは心がけているところではあります」
――ガチガチに決め込まず、現場での変化に対応できるようにしておく、と。
「そう。監督やほかのキャストさんとのキャッチボールの中で出たアイデアだったり、現場で生まれるものを大切にしたいので、準備はちゃんとしつつ、構えは柔軟にしておくよう心がけています」
■台本には表情や口の形を書き込んでいく

――役作りをするときに、普段のルーティンや石見さん流のやり方、みたいなものはあるんでしょうか?
「そうですね...。台本の書き込みに関しては、ちょっと変わってるかもしれないんですけど、表情とか口の形を自分で描いちゃうんです。笑っているシーンだったら、ニコッとしている口の形を描き込んだり、嬉しそうな感情のときは、そのセリフの周りを『キラキラ』させてみたり(笑)」
――そっか。前回のインタビューでも、絵を描くのが大好きだったとおっしゃってましたもんね。
「あとは、立たせたいセリフを丸で囲んだり。文字情報だけじゃなくて、パッと見た瞬間に視覚的に感情が入ってくるようにしたいんです。それはもしかしたら、中学校のときに一人でやってた練習が由来してるかもしれないんですけど...」
――どんな練習ですか?
「マンガに声をあてて、一人劇みたいな感じで家で練習してたんです。完全に趣味で(笑)。でも、そのときから"キャラの表情がわかったほうが自然と声が出しやすい"っていうのは思っていたので、だから台本を見たときも、なんとなく"どんな表情なのか"っていうのはわかるようにしておきたくて、描いてるんです」
――マンガの絵の表情からキャラの感情を受け取っていた経験が、そのままいまの台本チェックに生きているんですね。
「そうなんです。だから、台本という文字だけの世界でも、なんとなく表情がわかるようにしたくて、自分で描くようになりました」
――おもしろい...!
「チェックの映像やキャラクター設定の絵は参考にしつつ、でも、いざマイク前で台本に視線を落としたときにも、その表情がパッと目に入ってくるのが大事で。基本はそのキャラクターの絵を参考にしつつ、自分へのト書きみたいな感覚で描いていますね」
――この声優インタビューのシリーズでも、「台本に絵を描き込む」という方は初めてお会いしたかも。これから挑戦してみたいジャンルや役などはありますか?
「ありがたいことに、最近はどんどん新しいジャンルのキャラクターを任せていただけるようになってきていて。ずっと憧れていたポジションの役柄だったり、ちょっとした悪役だったり。挑戦できる機会がすごく増えてきているので、いまは『これがやりたい!』というよりも、任せていただいた役に、ひとつひとつ向き合うほうが大事かなと思います」
――どんどん役の幅が広がっていっていますよね。
「それはほんと、環境に感謝ですね...!あ、『特定の役をやってみたい』という願望ではないけど、『年齢とともに、求められるキャラクターが変わっていく役者』にはなれたらいいな、と思っています。自分の人生経験を重ねて、それがそのまま活かせるような......たとえば、もっともっと大人な役だったり、母親役だったり。いまから10年、20年と経ったときに、そのときの自分自身の経験が生きる役で求めてもらえる。そんな役者さんに、なれたらいいなってずっと思っています」
■チームの大切さを教えてくれる|「勇者パーティを追い出された器用貧乏」キャロライン・イングロット

©都神樹・講談社/勇者パーティを追い出された製作委員会
――2026年1月から始まった「勇者パーティを追い出された器用貧乏」では、教導探索でオルン率いる第十班の一員であるキャロラインを演じられています。
「キャロラインは、とにかく底抜けに明るく"見える"キャラクターですね。登場からハイテンションで、『もっとテンション高く!』『もっと元気に!』というディレクションもあって、とにかく明るくやらせていただきました」
――ほかの作品でもあまりないくらいのハイテンションでしたか?
「そうですね、数多くいる明るいキャラクターのなかでも、飛び抜けて明るいというか...でも、じつは『光が強ければ影もまた強くなる』という部分もあったりするので、表面的には明るく見えてもそれだけじゃなくて...詳しくはまだ言えないんですけど」
――奥に"何か"を抱えた明るさなんですね。彼女を演じるときはどんなことを意識していたんでしょうか?
「例えば、彼女には『空気を読まない』という側面があるんですが、アフレコのときは、あえて『周りの声を聞かない』ようにしていました。ほかのキャラクターのトーンや声量に合わせてしまうと、なんとなくテンションも周りの調子に合っちゃうんです。だから、会話というよりも、相手に飲まれないようにとにかく自分のペースでしゃべる。『聞く』よりも『話す』意識を強く持つほうが大きかったですね」
――先ほどの『現場で立ち上がる感情を大切にする』というお話とは、真逆のアプローチですね。
「そうなんです。普段の掛け合いから感情が生まれていくお芝居とは、全然違うアプローチだったので、それは演じていて新鮮な感覚でした」
――主人公・オルンは大塚剛央さんがやられていて、『【推しの子】』でも共演されていましたよね。
「そうそう。でもオルンとは掛け合いをすることは、あんまりないんです。というか、とにかく彼はモノローグが多い!難しい言葉や説明セリフがどんどん出てくるんですけど、大塚さんは滑舌が本当に良くて、それをなんなくこなしちゃうんです...!『私だったら、絶対噛んでる』と思えるようなセリフが、何回もあったなぁ(笑)」
――それはすごい...!
「しかも淡々と決めていくから、本当にすごいです。後ろから『うわぁ、すごいなぁ......』って尊敬の眼差しで見ていました」
――現場では、どんなお話をされるんですか?
「それが意外と、お互いに現場ではあんまり喋らないタイプでして...。『【推しの子】』の現場でも隣に座ったりするんですけど、私が極度の人見知りなのもあって、案外、静かに過ごしています。『同期』だということが判明したのも、じつはお会いしてからしばらく経ってからだし(笑)」
――そうなんですか...!同期トークで盛り上がったりは?
「いや、それが判明したときも『うわー!』と盛り上がるよりは、『あ、そうだったんですね...』としみじみ噛みしめる、いい距離感な感じで(笑)。お互いに干渉しすぎないながらも、現場ではとても信頼できて、私はすごく尊敬しています」
――いい距離感ですね(笑)。あらためて、石見さんが感じるこの作品のテーマや見どころを教えてください!

©都神樹・講談社/勇者パーティを追い出された製作委員会
「まず魅力的なのが、キャラクター。個性豊かなキャラクターたちは観ているだけでも楽しいですし、一人ひとりに背景のドラマがあるので、きっと『この気持ちわかる』って感情移入できるキャラが見つかると思います。あとは、作品の大きなテーマでもある『チームワーク』。物語の冒頭こそ、オルンが勇者パーティを追い出されて、人への不信感や絶望を抱くところから始まりますけど...でも、そこからいろんな仲間と出会い、チームで戦うことの素晴らしさや、そのなかでの自分の役割を見出していく。『仲間と戦うことって、こういうことなんだ』という大切さを、改めて教えてくれる作品です。私が演じるキャロラインは、そのチームの中でも、誰よりも先に『わーっ!』と走り出していくような、切り込み隊長的なポジション。勇者パーティだけでなく、いろんなチームが出てくるので、そんな賑やかなストーリーを楽しんでいただけたら嬉しいです」
■誰一人として個性がかぶってない|「魔都精兵のスレイブ」月夜野ベル

©︎タカヒロ・竹村洋平/集英社・魔防隊第2広報部
――同じく2026年1月から始まった「魔都精兵のスレイブ」第2期。石見さんが演じられている月夜野ベルは、どんな人物だと感じていますか?
「ベルちゃんは、とにかくおどおどしていて臆病な感じ。でも、すごくかわいいキャラクターだな、というのが第一印象でした。アフレコでも、『もっと自信なさそうに』『もっとおどおどして』という感じのディレクションで」
――さきほどのキャロラインとは、真逆ですね。
「私が『これくらいかな?』と想定したよりも、さらに気弱な感じでオーダーをいただくことが多くて。思っている以上に、守ってあげたくなるような、繊細な臆病さを持っている子なんだなと思いながら演じていました」
――作品の魅力については、石見さんはどう感じていらっしゃいますか?
「この作品はとにかくキャラクターの数がすごいですよね。あれだけたくさんのキャラがいるのに、誰一人として個性が被っていないのが本当にすごくて。台本を読んでいるだけでも『このキャラおもしろいなぁ』とワクワクしてしまうくらい、一人ひとりのキャラクター性が際立っているなぁと思います」
――本当に、魅力的なキャラが多い作品ですよね。
「そうなんです。だから、誰が観てもきっと熱中してしまうキャラが一人は見つかるんじゃないかな。じつは、私の学生時代の友人もこの作品の大ファンで、出演が決まったときに、連絡をくれたんです...!」
――それは嬉しいですね...!
「ほんとに!身近な友達がそこまで熱中しているのを見て、『ここまで愛される作品に出演できるなんて』っていう思いもありましたし、そんな魅力的なキャラの一人になれるんだっていう嬉しさも感じました。今回の第2期からの新キャストには、私と世代の近い役者さんがたくさん参加されているので、同世代のみんなと一緒に、この熱い作品をもっと盛り上げていけたらいいなと思いますし、個人的にも長く続いてほしいなと願っている作品です」
■異世界系の作品はアニメでこそ映える

――アニメをはじめ、ここ数年、異世界系の人気がすさまじいですが、石見さんはその人気の理由ってなんだと思いますか?
「やっぱり、アニメーションという表現技法と、異世界という舞台の相性がすごくいいんじゃないでしょうか。魔法がバンバン飛び交ったり、派手な能力が発動したり。実写でもおもしろくなるとは思うんですけど、あのスケール感やファンタジー要素は、アニメでこそ最大限に『映える』のかなって思いますね」
――たしかに、実写だとちょっと重たい感じがするかも(笑)。
「そうなんですよ。あとは『見ていてスカッとする』。主人公が最初から強かったり、あるいはどんどん強くなって周りに認められていったり。そのノンストレスな設定が、現代社会で生きる私たちに刺さるんじゃないでしょうか」
――わかります。疲れて帰ってきて、アニメの中でまでつらい思いはしたくないですもんね。
「そうそう(笑)。つまずいて後ろに戻るようなことがあまりなくて、つねにレベルアップして進んでいくじゃないですか。異世界系のジャンルならではの、観るときの気持ちよさみたいなものがあるからこそ、これだけ多くの人に求められるジャンルになったんだと思います」
――本当、そうですね。もし石見さんご自身が異世界転生するとしたら、どんな世界でどんな存在になりたいですか?
「うーん......でも私、戦うのは怖いなぁ(笑)」
――たとえば、「絶対ケガをしない最強スキル」を持っていたとしたら?
「たしかに、絶対ケガはしたくないけど...それよりも『刺激』が苦手なんですよね。だからダンジョンに潜るとか、魔王を倒すとかはちょっと無理かも...。もし行けるなら、とにかく平和な世界がいいかな。事件も起きない、穏やかな場所で」
――いわゆる「スローライフ系」ですか?畑を耕したり、薬を作ったり。
「そうです、そうです!のんびり通販生活を楽しむとか、そういう穏やかな暮らしに憧れますね。高望みはしないので、とにかく刺激のないところに...波の立たない"凪"のような生活を送れたら最高だな、と思います(笑)」

取材・文/郡司 しう 撮影/梶 礼哉




