ニューヨーク・ヤンキースはなぜ特別なのか 現地取材で見えた伝統と誇り【カーロン・マイア】

ニューヨーク・ヤンキースはなぜ特別なのか 現地取材で見えた伝統と誇り【カーロン・マイア】


カーロン・マイアの知ればハマるMLB
第三回:なぜヤンキースは、どこまでもヤンキースなのか

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■ 街で見かける、あの「NY」

ニューヨーク・ヤンキースの「NY」のロゴが入ったキャップは、アメリカだけでなく、日本でも本当によく見かけます。野球ファンはもちろん、ストリートファッションや普段のおしゃれとしてかぶっている人も多いですよね。

ロサンゼルス・ドジャースの「LA」のキャップもよく見かけますが、長くヤンキースを取材してきたこともあって、私は「NY」の二文字を見ると、ついつい反応してしまいます。ニューヨーク以外の街であのキャップを見かけると、この人もヤンキースファンなのかな、と勝手に親近感を抱いてしまうこともあります。

ヤンキースといえば、ピンストライプのユニフォームや数々の名選手、そして長く受け継がれてきた伝統を思い浮かべる方も多いと思います。私自身、取材を重ねる中で、この球団ならではの空気を感じることが何度もありました。

今回は、そんなヤンキースにまつわる、ちょっとした話をいくつかご紹介したいと思います。

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■ あの「NY」は、どこから来た?

あの「NY」のロゴには、実はかなり古い歴史があります。そして私がその由来を知ったとき、一番驚いたのがティファニーの名前が出てきたことでした。ティファニーといえば、ニューヨーク生まれの高級宝飾ブランド。オードリー・ヘプバーン主演の映画『ティファニーで朝食を』でも知られ、婚約指輪などで多くの女性が一度は憧れたことのあるブランドではないでしょうか。

ただでさえ名門で、華やかなイメージのあるヤンキース。その象徴ともいえるあの「NY」ロゴのルーツにまでティファニーが関わっていると知って、私は「なんでこの球団は、こういうおいしいところまで持っていくの!?」と、思わずテンションが上がってしまいました。

でも調べてみると、単にティファニーだからすごいという話ではありませんでした。
そのルーツとされているのが、1877年にティファニーが手がけたニューヨーク市警の勲章です。勇敢な行為を称えるために作られたその勲章に、重なり合う「N」と「Y」のデザインが使われていました。後に、そのデザインをもとにした「NY」がヤンキースのシンボルとして使われるようになります。当時の球団共同オーナーの一人が、元ニューヨーク市警のトップだったことから、このデザインが球団に取り入れられたと考えられています。

もともとは、勇敢な行為を称えるために生まれたデザインだった。そう知ったとき、私はなんだか妙に納得しました。というのも、ヤンキースという球団には、今もどこか人の背筋をピンとさせるような空気があるからです。

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■ ヤンキースには、独特の空気がある

以前、ヤンキースの番組でご一緒した元メジャーリーガーの方と話していたとき、こんなことを言われたことがあります。

「ヤンキースへ行く日は、なんだか自然と背筋が伸びる。きちんとした格好で行かなきゃと思うし、気づけば球団カラーを意識してネイビーの服とかを選んでいるんだよね」

その話を聞いたとき、思わず「やっぱりそうですよね! 私もヤンキースに行くと、なんとなくいつもより服装を意識しちゃうんです」と、つい話がはずんでしまいました。もちろん、メジャーリーグにはメディアにも服装規定があります。でも、私たちが話していたのは、そういう決まりのことではありません。

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現地で取材をしていると、アメリカのメディアの方たちからも、どこか似たような空気を感じることがあります。誰かに言われたわけでもないのに、なんとなくヤンキースを意識してしまう。あの球場には、そうさせる何かがあるように思います。

ヤンキースの選手たちは「ピンストライプを着る」のではなく「ピンストライプを背負う」と表現します。ユニフォームの背中に選手の名前が入っていないのも、個人より球団そのものを前面に出す、ヤンキースらしい伝統の一つです。100年以上積み重ねられてきた歴史は、ユニフォームや球場に飾られた写真だけではなく、そこで働く人や取材する人にも、自然と伝わっているのかもしれません。私自身、ヤンキースタジアムへ行く日は、今でもいつもより少しだけ気持ちが引き締まります。

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■ 球場でしか出会えない、規格外の美しさ

ヤンキースタジアムで選手を間近に見ていると、その迫力に改めて驚かされることがあります。ジャンカルロ・スタントン選手も、その一人です。

テレビで見てもかなり大きな選手ですが、目の前に立つと、そのスケール感は想像以上でした。196cmという身長もさることながら、それ以上に目を奪われるのが、鍛え抜かれた体です。間近で見ると、筋肉の厚みも体のスケールもテレビで見る以上で、漫画やアニメのキャラクターをそのまま実写にしたかのような迫力があります。一瞬、非現実的にさえ感じるほどの体つきで、人間の体はここまで鍛えられるのかと、思わず見入ってしまいました。

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あまりにも気になって、以前、本人に「一体、何を食べたらそんな体になるんですか?」と聞いたことがあります。するとスタントン選手は豪快に笑って、「ピザでもハンバーガーでも何でも食べるよ!」と答えてくれました。もちろん、それであの体になるわけはありません(笑)。でも、あの笑顔も含めて、いかにもスタントン選手らしいやり取りで、今でも印象に残っています。

そして、あの体から放たれるホームランは本当に圧巻です。球場で見ると、その打球の速さと飛距離には改めて驚かされます。あれだけの体を間近で見たあとだと、このパワーも当然なのかと思ってしまうほどです。

テレビでは何度も見ている選手なのに、球場ではまったく違って見える。そういう瞬間に出会えるのも、野球場へ足を運ぶ楽しさの一つです。

※スタントン選手は今季、右ふくらはぎのケガで戦列を離れ、復帰間近の8月下旬に左ふくらはぎも負傷。今季中の復帰は不透明となっている。

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■ リングに込められた誇り

ヤンキースといえばもう一つ、見るたびに特別な気持ちになるものがあります。2009年のワールドシリーズ優勝リングです。球団スタッフの方などが今も身につけて仕事をされていることがあり、手元で鮮やかなブルーの石とダイヤモンドが輝くリングを見ると、つい目がいってしまいます。

このリング、見た目の華やかさはもちろんですが、実はよく見ると、そのデザインにはヤンキースの歴史が詰まっているんです。中央の「NY」ロゴそのものにもダイヤモンドが敷きつめられ、さらにその周りを囲むように数多くのダイヤモンドがぐるりと配されています。ロゴやその周囲に使われている109石のダイヤモンドは、当時のヤンキース109年の歴史を表したものです。さらに4石の大きなダイヤモンドは、一塁、二塁、三塁、ホームを表しています。リングの内側には「YANKEE STADIUM 2009 INAUGURAL SEASON(ヤンキースタジアム 2009年・開場初年度)」の文字も刻まれています。2009年は現在のヤンキースタジアムが開場した最初のシーズン。そして、その年にヤンキースは27度目の世界一に輝きました。

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さらに以前、球団関係者の方から、このリングのデザインには当時の選手たちの意見も反映されていたと聞いたことがあります。自分たちが勝ち取った世界一を、どんなリングとして残すのか。選手たちもそのデザインに関わっていたと聞くと、このリングがまた少し特別なものに見えてきます。

ちなみに、このリングには一人ひとりの名前が刻まれていて、オークションに出ることもあります。名前入りなので、誰に贈られたリングなのかまで分かってしまうんですよね。今もそのリングを指にはめてヤンキースタジアムで働いている人たちがいます。2009年から長い年月が過ぎても、世界一になったときのリングを身につけ、同じ球場で仕事をしている。そんな姿を見ると、やっぱりこのリングは特別だなと思います。

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■ 伝統を守りながら、変わっていく

これだけ伝統や格式を大切にしてきたヤンキースですが、時代とともに変わっている部分もあります。

その象徴の一つが、選手の身だしなみに関するルールです。ヤンキースでは約50年にわたり、口髭を除いて髭を伸ばすことを認めない独自の身だしなみルールがありましたが、2025年、その方針が見直されました。現在は、きちんと整えられた髭であれば認められています。あれほど伝統を重んじるヤンキースが、長年続けてきたルールを変えた。私にとっては、これもなかなか興味深い出来事でした。

100年以上の歴史があるからといって、すべてを昔のまま守り続けるわけではありません。それでも、「ピンストライプを背負う」という感覚は、この球団に残っています。そうしたヤンキースらしさは、歴代の名選手たちから、現在のキャプテンであるアーロン・ジャッジ選手、そしてスタントン選手をはじめとする今の選手たちへと受け継がれています。

時代に合わせて変わっていくところがあっても、ヤンキースタジアムへ行けば、今もあの独特の空気がある。長年取材してきた今でも、「やっぱりヤンキースだな」と思うんですよね。

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レギュラーシーズンもいよいよ終盤。一試合一試合の重みが増していく時期です。今回ご紹介した「NY」のロゴやピンストライプ、その背景にあるヤンキースの歴史を少し知ってから試合を見ると、これまでとはまた違ったヤンキースが見えてくるかもしれません。

カーロン・マイア

カーロン・マイア (ライター)

アメリカを拠点に、MLBやNBAなどスポーツ取材16年。TV、ラジオリポーター、スポーツコラムの執筆、ニュース取材、番組コーディネーターとして、NHKをはじめとする国内主要メディアなどで活躍。

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カーロン・マイア (ライター)

アメリカを拠点に、MLBやNBAなどスポーツ取材16年。TV、ラジオリポーター、スポーツコラムの執筆、ニュース取材、番組コーディネーターとして、NHKをはじめとする国内主要メディアなどで活躍。

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