小村真也が語るトヨタヴェルブリッツの今季総括とW杯への思い
スポーツ インタビュー連載コラム
2026.06.20
ラグビーが教えてくれたこと~楕円球に魅せられた人々の熱い思い~
今季のリーグワンで序盤は連敗が続いたトヨタヴェルブリッツ。後半戦は調子を上げたものの、最終的に9位でシーズンを終えた。昨年は日本代表デビューも果たした2年目のSO/FB小村真也に、今季の戦いやW杯への思いについて聞いた。
――ヴェルブリッツは2025-26シーズン、序盤あまり調子が良くありませんでしたが、シーズンの中盤から調子を上げて、終盤ではプレーオフ争いを演じました。その要因は何だと思いますか?
「開幕から7連敗して、一時は10位まで落ちてしまいました。そこで、自分たちの強みをもう一度見直して、そこに立ち返ったことによって、最後はプレーオフ争いを演じることができたと思います」
――改めて、今季のヴェルブリッツの強みは?
「特にFWの強いキャリーや9番からのテンポの良いアタックやキックが自分たちの強みだと思っています。シーズン後半はそこをうまく使い分けながら戦えたと思います」
――14節(4月4日)、ホストでクボタスピアーズ船橋・東京ベイ戦に24-7で快勝した試合は自信になったのでは?
「そうですね! やっぱりスピアーズの大きいFW相手に、僕たちのFWも頑張ってくれて、全然フィジカル負けしなかったと思いますし、全力を出し切れたというのは、自分としても自信になったかなと思います」
――その中で小村選手としては、どうチームにコミットできていると思いますか?
「最近は10番ではなく、15番で使ってもらうことが多いのですが、10番でも15番でも、スペースに思い切ってアタックをしていくことが自分の強みだと思っています。(元日本代表の)SO(松田)力也さんが10番でゲームをコントロールしてくれている分、僕もそれを助けながら、一番良いスペースに、自ら走ることもあればボールを動かして、他の選手が走りやすくすることが、自分の強みだなと思っています」

――15番(FB)でのプレーについては、ご自分ではどう評価していますか?
「15番をやるのは帝京大学以来ですが、10番でも15番でもどちらも好きです。まずは試合に出させてもらっていることに感謝しています。12番にもゲームメイクできる選手がいて、フィールドに10番タイプの選手が3人いることがチームの強みになっていました。その中で、ヴェルブリッツの大きいFWをどう前に出していくか。3人で協力しながらやれていたと思います」
――昨季はアーリーエントリーで試合に出場し、今季は2年目のシーズンでした。振り返っていただけますか?
「昨季よりはプレーしている中で、自分としても試合を落ち着いて見られるというか、少し離れたところからゲームを見られている感じがしています。昨季は10番で出してもらって余裕を持ってプレーできていなかったですが、今季はある程度、余裕を持つことができたかなと思います」
――コーチ陣からはどういった要求やアドバイスをもらっていたのでしょうか?
「BKはイアン・フォスターコーチから毎練習、毎試合レビューがあるのですが、そこで僕は、自分の強みをどう試合に出すかということをいわれていました。雨の試合だったら、頭の中でもキック、テリトリーキックということに傾きすぎていたので、『もっとスペースがあるならランも使っても良かったのでは?』といわれました。ランは僕の強みだし、スペースを見逃しているシーンもあったというレビューを受けました」
――同じ京都出身、そして帝京大学の先輩である元日本代表SO松田力也さんと一緒にプレーして得ているものはありますか?
「全体練習が終わった後の自主トレーニングも一緒にやっていますし、話しやすく接してもらっています。家に呼んでいただいたりとか、一緒にご飯に行ったりとかもしています。共通の知人とも多く、仲良くさせてもらっています!」

――改めて、小村選手がラグビーを始めたきっかけは?
「祖父が伏見工業高校(現・京都工学院)の元監督(山口良治/元日本代表)なので、その影響もあって、兄のFB健太(現・レッドハリケーンズ大阪)と一緒に、3歳からラグビーを始めました。祖父は、よく試合を見に来てくれていました。小学校の頃はミニバスもやっていて、平日はバスケットボール、週末はラグビーみたいな生活をしていました。でも、ラグビーの方が本気で取り組めていたので、中学校に入るタイミングでラグビー一本に決めました」
――高校でニュージーランドに留学し、大学から日本に戻って帝京大に進学。帝京大では4連覇に貢献しました。
「高校は兄も進学していたこともあり、ニュージーランドに留学しました。英語を話せるようになったのが大きいかな。外国人選手や外国人コーチとのコミュニケーションがダイレクトに取れるというのは自分の強みの一つになっています。大学は日本に戻ってきてプレーしようと思っていたので、トレーニング環境が整っていましたし、兄もいたので帝京大に進学しました。日本の大学はニュージーランドの環境と比べると、完全に違う世界でしたが、『絶対に勝ち切る』『細かいところまで徹底する』というところが身についたと思います」
――ヴェルブリッツには元オールブラックスのSHアーロン・スミスなど国際経験豊富な選手も多いです。どんな影響を受けていますか?
「初めはテレビで見ている選手だ!と思っていて、全然、慣れなかったんですが、今はチームメイトという感じでやらせてもらっていますし、毎日いろんなことを学ぶことができています」
――オフの過ごし方は? またチームメイトで仲の良い選手は誰ですか?
「休みの日は、グラウンド以外でもラグビーに使える時間も増えたので、映像を見たり、自分のプレーを振り返ったりもしています。また、オフにはゴルフをよくしています。SH茂野海人さん、SHスミスと行くことが多いです。シーズンオフは週3回くらいラウンドしていました(笑)。ベストスコアは92なので、もうちょっとうまくなれる気がしています」

――日本代表活動のことを少しお聞かせください。昨年11月、敵地のアイルランド代表戦で初キャップを得ましたね!
「ここからが自分のラグビーキャリアのスタートだと思うので、これからもっと精進して頑張ります。ただ(初キャップの)試合の前、(日本代表を率いる)エディー(・ジョーンズHC)さんに『どこかで起用する』とはいってもらっていたのですが、1週間、フワフワというか、ずっと実感がなかったです。いざ、試合に出ると、(アイルランド代表のホームで)今まで5万人規模の大観衆の中でプレーした経験がなかったので、良い経験になりました」
――初キャップ時、日本代表の桜のジャージーは2枚もらえたと思いますが、誰かに渡しましたか?
「ファーストジャージは祖父にあげて、もう1枚は自宅にあります。祖父とはLINEやテレビ電話でも話すことも多かったのですが、とても喜んでくれていました」
――日本代表活動で、エディー・ジョーンズHCから学んだことは?
「エディーさんからは、プレッシャーの中で自分がミスしてしまった後にどう振る舞うのか、プレッシャーがかかった中で、リザーブで入る時に何を意識してプレーしないといけないか、そんなことを学びました。ヴェルブリッツでもリザーブになることもあるので、その経験を生かしながらプレーしています」
――実際に選手とコーチで接してみて、ジョーンズHCはどんな印象ですか?
「厳しいところは厳しいですが、結構、ジョークとかもいうので、チームを明るい雰囲気にさせる面もあります。もちろん、ラグビーに関してもメンタル面や細かいスキル面など、ピンポイントでいろんなアドバイスをしてくださいます」
――ヴェルブリッツだけでなく、日本代表のラグビーを経験することは、やはり、選手としてプラスになっていますか?
「そうですね。両方のラグビーを経験することは、自分にとって大きな財産になっていると思います。スペースを自分で見つけて、テンポ早くプレーするという自分に求められていることはチームでも、代表でも大きく変わらないです。ラグビーのスタイルは違っても、どちらでも自分の強みを生かせるようにと思っています」
――リーグワンの長いシーズンが終わりました。これからは代表活動期間に入ります。来年W杯が控えていますが、どういった心境でしょうか?
「もちろん、W杯に出場したいという思いはあります。その夢をかなえるために日本代表でもヴェルブリッツでも、試合に出た時は、毎回ムラのないパフォーマンスを出せるように意識しています」
――ラグビー選手として、将来の目標や理想の姿はありますか?
「いつのタイミングになるか分からないですが、ニュージーランドでもヨーロッパでもいいので、将来は海外のチームに行ってみたいと思っています。10番でも15番でも、他のポジションでも、どこのポジションで出場しても『何でもできる選手』に、試合の流れを変えられるような選手になりたいです」
――ラグビー通じて一番、学んだことはありますか?
「ラグビーはいろんな国の選手や、育ってきた環境が違う選手たちがいる中で、協調性を持って力を合わせてやるスポーツです。違う文化の選手と信頼し合って、一つの勝ちに向かっていくのがラグビーの魅力で、その大切さを学びました」
――ホストスタジアムの一つであるパロマ瑞穂ラグビー場がリニューアルされましたね! 試合をしてみた感想は?
「瑞穂ラグビー場は観客との距離が近いので、たくさんのファンの方々に応援してもらえますし、そういった雰囲気が大好きです。自分の名前が書いてあるタオルを見るとうれしいですね!」

――最後に、ヴェルブリッツのファン、そしてラグビーファンに向けて一言お願いします。
「ヴェルブリッツは強いFWとスキルのあるBKが揃っているので、見ていて楽しいラグビーをしていると思います。来季こそは上位に進出したいと思いますので、今後も応援よろしくお願いします。僕自身も見てくれている方々、ファンの人たちをワクワクさせるようなプレーをしたいと思っています!」
PERSONAL INFO
祖父(元日本代表・山口良治*。京都工学院高[旧・伏見工]元総監督)の影響もあって、3歳から兄の健太(現・レッドハリケーンズ大阪)と一緒にラグビーを始めました。ラグビーを通じて、いろんな文化や環境で育った選手たちと信頼し合い、一つの目標に向かうことの大切さを学びました。ニュージーランドでは英語を身につけ、今のコミュニケーションにも生きています。
*TVドラマ「スクール☆ウォーズ」の主人公のモデルとして知られ、ラグビー界に多大なるご貢献を果たされた山口良治さんが5月29日にお亡くなりになりました。故人のご冥福を心よりお祈り申し上げます。
PROFILE
'02年5月28日生まれ。京都府出身。180cm /92kg。 NZ・ハミルトンボーイズ高校→帝京大学→トヨタヴェルブリッツ。ポジションはSO /FB。日本代表3キャップ(2026年6月8日現在)。
取材・文/斉藤健仁 (C)TOYOTA VERBLITZ
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