成宮寛貴が10年ぶりの映画『藁にもすがる獣たち』で語る覚悟「怪優のポジションにいたい」
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2026.09.19
江戸川乱歩賞作家・曽根圭介の小説を、城定秀夫監督、鈴鹿央士主演で映画化した『藁にもすがる獣たち』。2020年には韓国で映画化されヒットした本作は、たまたま見つけてしまった1億円をきっかけに、決して出会うはずのなかった人物たちが複雑に絡み合いながら金の"獣"と化していくサスペンス映画だ。監督は『名無し』の城定秀夫。脚本は『岸辺露伴は動かない』シリーズの小林靖子が担当する。本作で裏社会と通じる不良警官・江波戸良介を演じる成宮寛貴にインタビューを敢行。作品の舞台裏を大いに語ってもらった。

■10年ぶりの映画出演。「ついに映画が来たか!」と高鳴る胸の鼓動
――まずは本作への出演が決まったときの感想と、どんな意気込みを持って撮影に臨まれたのかを教えてください。
「復帰作のドラマ『死ぬほど愛して』(ABEMA)の城定秀夫監督からオファーをいただいて、連続して仕事ができるということが喜びでした。まずは、監督の期待に応えたいという思いが強かったですね。そして、10年ぶりに自分が映画に出演するという感慨がありました。三島由紀夫の舞台(『サド侯爵夫人』)に出たり、俳優として自分が試されるような機会も経て『ついに映画が来たか!』という...。映画はやはり特別な場だと思うし、ドキドキしながら現場に入りました」
――脚本を読んだ際には、どのような印象を持たれましたか。
「あり得ないようであり得るストーリーだなと。登場人物が個性的でポップに描かれているけど、リアルに感じられました。どのキャラクターも儚い魅力に溢れていて、自分一人では抜け出せない状況にある中で、1億円という人生を変えられる大金が突如として目の前に現れるわけです。その大金を巡って人間の浅ましさやいやらしさが渦巻いていくのですが、人が一生懸命にやっている姿って、端から見ていると妙に面白かったりしますよね。そんな面白さのある映画だなと思いました」

■ズルい立ち回りも自ら提案。不良警官・江波戸のキャラクター造形
――そんな作品において、自身が演じる江波戸良介という人物をどう捉えたかを教えてください。
「良介は、計画性のある人物ではないし、いわゆる切れ者ではないので、その点は意識しました。ただ、動物的な野生の勘というものがあって、逃げ足が速いという特徴がある(笑)。危険を察知して素早く行動に移すという。
あと、この男は何かを先送りにして過ごしてしまう欠点があるように思えます。快楽にも溺れやすいタイプですね。女性と博打に弱くて...。描かれてはいないけど、おそらくパチンコ屋にも入り浸っていそう(笑)。ガラの悪い人たちとつるんでいるので、警察官ではあるけれど、影の部分を背負っているのは不自然ではないと思うんです。そんな"不良らしさ"を意識して演じました」

(C)曽根圭介/講談社 (C)2026「藁にもすがる獣たち」製作委員会
――台本に書かれていないことをアドリブで入れたりもしたそうですね。
「青木マッチョさん演じる、ヤクザ組員のエリンギと格闘する場面は、最初は普通のかっこいい殺陣だったのですが、体格的にどうやってもかなうわけがない相手じゃないですか。だから、かみついたり唾をかけたりするような、ズルい立ち回りをするのはどうかと僕から提案しました。
あと、この映画は、スピーディーな展開を重視していることもあり、当初は最後も良介がすっと退場する感じだったんですよ。ただ『最後に何かをやりたい』と最初に監督と打ち合わせをさせてもらって、僕がアイデアを出して、あるシーンを入れているんです。ちょっと物語を象徴するような仕掛けにもなっているので、ぜひ楽しみにしていただきたいですね」

左から成宮寛貴、二ノ宮隆太郎、青木マッチョ
(C)曽根圭介/講談社 (C)2026「藁にもすがる獣たち」製作委員会
■ぎっくり腰で挑んだ壮絶な現場と、城定秀夫監督への絶対的な信頼
――城定秀夫監督についての印象は?
「城定さんの特徴は、撮った映像を見直さないこと。演じるほうは不安になりますよね。確認して修正することができないから。その点では、ハードな現場でした。ただ、監督としては『撮れている』という確かな感覚があると思うので、そこを信じて演じました。
俳優以上に登場人物を深く理解し、把握している監督さんです。経験も非常に豊富なので、本当に鋭い眼を持っている方でもあります。ただ、『こうやってほしい』というようにグイグイ来る方ではないので、僕は自分から『こういうのはどうでしょう』と提案することが多かったですね。人間性もすごく優しい方だし、こちらが監督と同じ体温で作品に向き合っていれば、これほど一緒に仕事して楽しく過ごせる監督さんはいないですね」

――本作の共演者について、印象に残った方はいらっしゃいますか?
「やっぱり小手伸也さんのお芝居が本当に面白くて、毎回笑いをこらえるのが大変でした(笑)。僕の部下的な立場で、登場するデメキン役の二ノ宮隆太郎くんも毎回違うことをやってくるんですよ。彼も面白い役者さんですけど、この映画では、僕が振り回しているように見えて、実は僕のほうが周りに振り回されているんです。
森七菜さん演じるし~なにも結構振り回されるし、デメキンも僕の言うことを聞いているのかいないのか、さっぱりわからないし...しまいには、あの恐ろしいエリンギと対決させられますからね(笑)」

左から成宮寛貴、小手伸也
(C)曽根圭介/講談社 (C)2026「藁にもすがる獣たち」製作委員会
――ほかに現場で苦労したことは?
「実は、撮影中に現場でぎっくり腰になってしまって...。風呂場でまったく動けなくなって、その日の撮影もできなかったんです。ただ、その後に数日間の撮休が入っていたので、その間に鍼治療などを受けて、どうにか続けました。終盤での疾走する場面とか、痛みを抱えながら演じていて、最後にはエリンギとの大立ち回りもあったから、コルセットをして臨んだんです。
ロケ中も猛暑の中で激しいアクションを撮っていたので、ドロドロになってその日が終わるような...。さらっと終わった日がほぼないような感じでした。なかなかきつい撮影で、壮絶な日々ではありましたけど、そんなキツさを逆に楽しめた感じがします。僕は精神修行的なことを自分に課すのが、割と好きなのかもしれません(笑)」

■同世代の俳優たちを意識しつつ、目指すのは"怪優"のポジション
――さて、個性的な本作の登場人物の中で、成宮さんが好きなキャラクターはいますか?
「風吹ジュンさん演じる寛治(鈴鹿央士)のおばあちゃん(佐藤富子)かな。ボケているようで、実はしっかりしている。彼女の行動のすべてが、鈴鹿くんが演じる孫の寛治への愛に溢れているんですよね。風吹さんの自然なお芝居にも感銘を受けました。現場で見ていると、風吹さん自身から富子さんへの切り替えというものが、ほとんど感じられないんです。本当に素敵な役者さんだなと思いました」

――本作への出演により、今後の活動への糧になったことがあれば教えてください。
「40代の半ばという年齢になって、改めて芝居を再開しているので、今はフラットな気持ちでいるんですよ。お父さん役とか、そういう生活感のある役はまだしっくりこない。本作の良介のような尖ったやんちゃな人物を演じられるのは、なんかいいなと思っています。
自分としてはいわゆる"怪優"と呼ばれるようなポジションにいたいと思っています。そんな僕にとって、何をするかわからない、やんちゃな人物を演じる機会を与えてもらったことは、本当にありがたいことでした。こういう役を定期的にやっていく必要があると思いました(笑)」

――では、最後に本作をご覧になる方にメッセージをお願いいたします。
「荒唐無稽なストーリーのようで、実は自分にも起こりうるかもしれない物語だと思って見ていくと、より楽しめる作品だと思います。本作は、東映が作る"脳汁ドバドバ"な映画です。あっという間に時間が過ぎていくスピード感をお楽しみください。
そして、『人が何を大切にして生きるのか』とか、『自分が大切だと信じていたものが実はつまらない物だったりする』ことに気づかされるような、そんな深みのある作品にもなっているので、皆さんもキャラクターを通して、そんなことを考えながら楽しんでほしいです」

PROFILE
1982年9月14日生まれ、東京都出身。2000年、宮本亞門演出の舞台『滅びかけた人類、その愛の本質とは...』でデビュー。その後、数多くの映画、ドラマに出演。2016年に活動休止した後、復帰作「死ぬほど愛して」(2025)ではABEMAオリジナルドラマ史上最高の総視聴数を獲得。今年は宮本亞門氏が演出を手掛ける舞台『サド侯爵夫人』で主演を務めた。今作が復帰後初の映画作品となる。主な出演作品に「オレンジデイズ」(2004)、NHK大河ドラマ「功名が辻」(2006)、「相棒」シリーズ(2012-13)など。
取材・文/渡辺敏樹 撮影/中川容邦
ヘアメーク/肥沼美代子(&'s management) スタイリスト/杉長知美




