『汝、星のごとく』へと続く――横浜流星×藤井道人監督が『正体』で築いた揺るぎない信頼関係

『汝、星のごとく』へと続く――横浜流星×藤井道人監督が『正体』で築いた揺るぎない信頼関係

大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」の主演、邦画実写作品として歴代1位の興行記録を叩き出した『国宝』...と、大躍進となった2025年を経て、新たな動向に視線が注がれている横浜流星。

9月16日(水)に30歳という節目を迎えるなか、『国宝』の脚本家・奥寺佐渡子と再タッグを組む10月期のTBSドラマ「LOST10」でGP帯連続ドラマ初の単独主演を飾り、製作発表時から注目を集めてきた主演映画『汝、星のごとく』が10月9日(金)より公開に。『流浪の月』(2022年)に続く凪良ゆう作品であり、広瀬すずとの再共演も話題を呼んでいるが、ヒットへの期待を支えているのが、盟友・藤井道人監督との信頼関係だ。

■盟友・横浜流星&藤井道人監督――度重なるタッグで培った信頼関係とは?

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横浜と藤井監督といえば、横浜がまだ10代だった頃に初タッグを組んだ青春群像劇『青の帰り道』(2018年)、"犯罪者の息子"と蔑まれる壮絶な主人公に扮した『ヴィレッジ』(2023年)など、短編やドラマシリーズを含め、度重なるタッグで信頼関係を築いてきた間柄。その中でも、互いのキャリアのターニングポイントとなった必見作といえば『正体』(2024年)だろう。

染井為人の同名小説を原作とする本作は、死刑判決を受けた容疑者が脱走し、その343日間にわたる逃亡劇を描くサスペンス。警察の追手が迫る中、潜伏する先々で名前や姿を変える死刑囚・鏑木慶一(横浜流星)の正体と真の目的が次第に露わになっていく。

クランクインの3年前から藤井監督と脚本やセリフについてのやり取りを重ね、"非常に思い入れのある作品"と明かしている横浜は、今回この"5つの顔を持つ逃亡犯"という難役を演じるにあたり、潜伏中の彼と関わった人たちの証言から浮かび上がる主人公の多彩な側面を体現した。

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例えば、日雇い現場で知り合う野々村和也(森本慎太郎)の前では、瓶底メガネにボサボサ髪の髭面という漫画に出てくるような風貌から"ベンゾー"と呼ばれる地味な男。また優秀なライターの"那須"として出会ったWEBメディア編集者・安藤沙耶香(吉岡里帆)の前では、自分のことを気にかけてくれる沙耶香の言葉に思わず涙を流す素直な青年に様変わり。さらに、ある目的から近づいた介護施設で出会った酒井舞(山田杏奈)には、やさしく面倒見の良い職場の先輩の"桜井"として接するなど、人物像の違いを演じ分けているが、どの顔にも鏑木の本質である人を信じる心がにじんでいる。

こうして"5つの顔"を演じ分け、逃亡犯の感情の機微を見事に浮かび上がらせた横浜は、第48回日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞。それと同時に、吉岡里帆に最優秀助演女優賞、森本慎太郎と山田杏奈に新人俳優賞をもたらした藤井監督も、自ら最優秀監督賞に輝くなど、それぞれのキャリアを語る上で欠かせない代表作となった。

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なお「正体」は、映画化に先んじて2022年には「連続ドラマW 正体」としてドラマ化もされている。ヒットしたホラー映画『事故物件 恐い間取り』(2020年)以来の再タッグとなる主演・亀梨和也×監督・中田秀夫コンビに、谷口正晃監督が加わったこのドラマ版でも、脱獄した死刑囚・鏑木慶一の"正体"に切り込んでいる。

潜伏先で出会う人々として、市原隼人(野々村和也役)、貫地谷しほり(安藤沙耶香役)らがキャスティングされており、映画版との描かれ方の違いも気になるところ。映画・チャンネルNECOでは映画とドラマが2週連続で放送されるので、2つの映像作品を見比べてみるのも面白いだろう。

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■横浜流星も参加したNetflixシリーズ版も話題に!藤井道人の名を広めた映画『新聞記者』

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また、ぜひ『正体』とともに、藤井道人監督の名を広く知らしめた代表作としてチェックしておきたい1作が、秀逸な社会派サスペンス『新聞記者』(2019年)。

映画版も手がけた河村光庸(スターサンズ)プロデューサーのもと、横浜流星らを加えた新キャストにより全6話のドラマとして2022年に自らリブートしたNetflixシリーズ版でも知られるが、原案となったのは東京新聞社会部記者・望月衣塑子の同名ノンフィクション。政治問題やスキャンダルに正面から切り込み、タブーに挑戦したといわれる衝撃的なオリジナルストーリーで、第43回日本アカデミー賞最優秀作品賞など数多くの映画賞を受賞した意欲作だ。

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政権がひた隠そうとする真相に迫る女性新聞記者と、熱い信念と理想に燃えるエリート官僚──相対する立場の2人の人生が交差しながら、ある官僚の自死を発端とする政府の闇に迫っていく。権力とメディアの裏側を描く内容は公開当時、大きな波紋を呼んだ。

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物語の軸となる、アメリカ育ちの東都新聞記者・吉岡を演じるのは、日本でも活躍する韓国映画界の至宝シム・ウンギョン。一方、現政権に不都合な情報操作に奔走する内閣情報調査室の官僚・杉原に扮するのは松坂桃李。それぞれが抱える葛藤や覚悟を繊細な表情や間の取り方で表現した2人の演技は高く評価され、作品賞に輝いた第43回日本アカデミー賞において、それぞれが最優秀主演男優賞・女優賞を獲得し3冠を達成した。

彼らの熱演を引き出した藤井監督は、センシティブな内容もあってか、当初はオファーを2度断ったことを公言しているが、光と闇を強調したスタイリッシュな画作りに加え、あくまでフィクションとしてのスリルをしっかりと追求。重厚な題材とエンタメ性を成立させるバランス感覚の良さもまた、現在の活躍ぶりに繋がっていると言えそうだ。

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15年にわたる男女の軌跡を通して、一筋縄ではいかない人生の複雑さを見つめる『汝、星のごとく』で、あらためてタッグを組む横浜流星と藤井道人監督。互いの魅力を引き出し合いながら、これまで観客の心を揺さぶってきた2人が、次にどのような化学反応を見せるのか?その期待に胸を膨らませながら、彼らの代表作を振り返りたい。

文/武山奏戸