こがけんが語る『エブエブ』:アカデミー賞7部門受賞作が革命だった理由
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2026.02.27
アカデミー賞の季節が今年もやってきた。1929年から続く映画界の祭典は、2026年で第98回を迎え、現地時間3月15日(日)に米・ロサンゼルスのドルビー・シアターで開催される。毎年、多くの話題作が生まれるアカデミー賞だが、見る人それぞれに「忘れられない一本」があるものだ。今回、映画好き芸人・こがけんに、これまでのアカデミー賞作品の中で特に印象に残っている作品について話を聞いた。
――過去のアカデミー賞受賞作で、印象に残っている作品とその理由を教えてください。

「『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』です。2023年のアカデミー賞で、作品賞と監督賞をはじめ最多の7部門を受賞した、マルチバース・ムービーの決定版といえます。
当時は、多くの映画ファンが『ドクター・ストレンジ』(2016)から始まったヒーロー映画におけるマルチバース・ブームに魅了されていたさなかでした。『ミナリ』(2020)から続く、アメリカで生きるマイノリティーであるアジア人に焦点を当てる着眼点の面白さと今っぽさ(当時っぽさ)、そして僕が幼少期に夢中になった懐かしの俳優が起用される激アツキャスティングなど、長年映画ファンをやってきた自分へのご褒美みたいな作品だったんです」

「『あの時、別の選択をしていたら自分の人生はどうなっていただろうか』という、誰もが一度は考える問いに対して、"選択の数だけ別の自分がいる"マルチバースの概念を利用して主人公に自分探しをさせる設定の秀逸さにしびれてしまいました!
そんな哲学的テーマもありつつ、下ネタ満載のおバカ・カンフームービーでもあるというインディーズ魂あふれる本作が、アカデミー賞を席巻するなんて誰が想像したでしょう。アカデミー賞に革命を起こした、まさに"変化"の象徴的作品でもあると思います」

――特に心に残った俳優とその理由を教えてください。

キー・ホイ・クァン
「本作は、当時ハリウッド作品でありながら、アジア人俳優がメインのキャスティングであることが注目されていましたが、それと同時に、起用した俳優に再評価の機会を与えた作品としても注目されました。主演女優賞を獲得したミシェル・ヨーや、『ハロウィン』シリーズで知られるジェイミー・リー・カーティスがまさにそうなんですが、個人的に特に激アツだったのはミシェルの夫役のキー・ホイ・クァンです」

「彼は『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』でインディとバディを組むショーティ役で子役デビューして人気に火がつき、続いて出演した『グーニーズ』でもデータ役を好演し、さらに大人気になりました。僕もその容姿に子供ながらに親近感を覚え、作品内での活躍っぷりに魅せられて、大好きになったのを覚えています。
ただ、彼の人生は順風満帆ではありませんでした。大人になるにつれ俳優仕事が激減し、20歳を過ぎる頃には完全に仕事がなくなってしまいます。ですが映画に関わりたかった彼は、大学で映画を学び、アクションの指導を行うスタント・コーディネーターや助監督などをしながら、あくまで裏方として映画に貢献しました。
それでも俳優をやりたい想いがどうしても捨てきれず、47歳で俳優として再出発したんです。そしてオーディションに受かった唯一の作品が、今作『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(『エブ・エブ』)だったんですよ」

「本作での彼の素晴らしい演技と華麗なアクションを見たとき、ホントに心が震えていつの間にか泣いていました。そして今作で、キー・ホイ・クァンはアカデミー助演男優賞を獲得したんです。彼は、不遇時代を経てなお失わなかった俳優としての熱意とスタント・コーディネーターとしてのキャリアという伏線を最高のカタチで回収した、アメリカン・ドリームの体現者だと思います。
それから、この年のアカデミー作品賞のプレゼンターは、インディ・ジョーンズことハリソン・フォードだったことも忘れてはいけません。彼の人生は、映画よりも映画なんです」




