南沙良が映画「万事快調〈オール・グリーンズ〉」で演じた朴秀美役への思いを語る「彼女の卑屈な面が愛おしい」

南沙良が映画「万事快調〈オール・グリーンズ〉」で演じた朴秀美役への思いを語る「彼女の卑屈な面が愛おしい」

審査員満場一致で松本清張賞を受賞した、波木銅の青春小説「万事快調〈オール・グリーンズ〉」が映画化され、1月16日より全国公開中。監督は「猿楽町で会いましょう」の児山隆。主人公には南沙良が起用され、ラッパーを夢見るが、自分の居場所を見いだせずに鬱屈した日々を送る高校生・朴秀美を演じる。彼女がもう一人の主人公である映画好きの矢口美流紅(出口夏希)と、漫画好きの岩隈真子(吉田美月喜)と共に、奇妙な同好会「オール・グリーンズ」を結成し、禁断の課外活動を始めたことで危険な騒動が巻き起こっていく物語だ。主演の南沙良にインタビューを敢行し、作品への思いを語ってもらった。

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――まずは、本作にどんな意気込みを持って臨みましたか?

「これまで挑戦したことのない役柄だし、作品のジャンル自体も過去にないようなものでした。原作小説を読んで、疾走感があってすごく面白かったですし、テンポが抜群にいいと感じました。これを映画にしたら絶対に面白いと思ったので、参加したいという思いが強まりました。キレのある強い言葉が散りばめられて、朴、美流紅、岩隈の3人の会話のテンポ感がとても心地よかったんです。悲壮感が全然ないし、映画でもその感じが出せればいいなと思いましたね」

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――今回演じている主人公・朴秀美の人物像については、どのように捉えましたか?

「朴秀美が身を置いている環境は、決して明るいものではないんですけど、本人はそう思っていないんです。まったく悲観することなく、鼻で笑っているタイプの女の子だという印象がありました。ただ、自分の中に行き場のない怒りや思いを抱えている人物でもあると感じました。朴には、ちょっと卑屈なところがあるのですが、私はむしろそんな一面が人間らしくて好きです。私も朴ほどではないですが(笑)卑屈な面を持っているので、共感できるし、とても愛おしいと感じました。そんな複雑な内面を、バランスよく演技で表現できたらいいなと思って演じました」

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――演じる上で意識したこと、特に大切にしたことは何でしたか?

「まずは悲観的になり過ぎないことと、あとは声のトーンですかね。私は喋っていると声が高くなってしまうことがあるので、そうならないように意識しました。それから、動く時の重心の置き方とかも注意しました。スケートボードをする場面があるのですが、私はこれまで経験がなかったので、パークを回って、実際にやっている人たちの動きや持つ雰囲気などをじっくり観察しました。彼らの服装なども気になっていたので。ほかには、朴が好きなSF小説なども読んでみました」

――役作りに真摯に取り組まれたのですね。ラップの場面については?

「私は昔からヒップホップを聴くのが好きなので、ラップ自体にはなじみがあったんです。クランクイン前に数回練習をしたのですが、荘子itさんのご指導のおかげもあり、それほど苦戦せず、現場でもスムーズにできました。ただ、ラスト近くにラップのシーンがあるのですが、あそこは最後に急遽追加になった場面で...。リリック(詩)が上がってきたのが本番の3日前だったので、必死に覚えて撮影に臨んだんですけど、すごく大変でしたね。そういう意味でも、思い入れのあるシーンなので、しっかり見ていただきたいです(笑)」

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――児山隆監督についての印象について、お聞かせください。

「児山監督は本当にユニークな方で(笑)。作品の舞台である東海村に『イモゾー』というご当地キャラがいるんですけど、これが監督にそっくりなんです(笑)。それはさておき、作品に対する熱量がすごく高い監督で、私たち3人(南、出口、吉田)の出演作を事前に全部見てくださったみたいで...。そんな思いを受け止めて、私たちもいい作品にしたいという気持ちがいっそう強まりました。演出については、監督からの指示はあまりなく、自由に動かせてもらったのですが、きっと監督は私たちに考えてほしかったのだと感じました。だから、思いつくことを何でもやったといいますか、すごく考えながら役に入っていった印象が強いです」

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――共演者についての印象はいかがでしたか?

「出口さんとは、以前同じ作品に出演したことはありますが、ガッツリ共演するのは今回が初めてでした。こんなにも楽しく話せる人だとは思っていなくて、一緒にいて本当に居心地がいい人です。吉田さんも同様で、お芝居でここまでしっかり絡むのは初めてでしたが、とてもやりやすかった。3人とも同世代だし、空気感も似ていたので、いい調和が生まれたのかなと思います。男性陣では、金子大地さんとは共演した経験があるので、すごく安心感がありました。ジャッキー役の黒崎煌代さんとは絡むシーンが多かったのですが、事務所が一緒ということもあり、やりやすかったですね」

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――特にお気に入りの場面やセリフなどはありますか?

「この作品はタイトルが出るのが遅くて、開始45分くらいでドーンと『万事快調〈オール・グリーンズ〉』と出るのですが、その出方がカッコよくて気に入っています。『ここで来るのか!』というタイミングなんですけどね。あと、大好きなのは出口さん演じる美流紅の『これは私たちの第二部なんだよ』というセリフです。人生の第一部は自分では選べないけど、第二部、第三部というのは自分で作るものなんだなと感じられて、とてもいいセリフだと思いました」

――本作に参加して、今後の糧になったことなどはありますか?

「どの作品でもそうですが、今回は特に撮影に参加した全員の作品に対する思いが熱い現場だったと感じます。現場の熱量は映画を作りあげる上で大切だし、演じる上でも重要だと思うんですね。お芝居していても本当に楽しかったし、『万事快調』は、私にとって『映画を作ることがこんなにも楽しいんだ』と、再認識できた作品でした」

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――では、最後に作品を観てくださる方へのメッセージをお願いします。

「私自身、生活している中で『自分の居場所がない』とか、『どこにも行けないな』などと感じてしまう瞬間がたくさんあります。日常生活の中で、そんな思いを感じている方に本作を観ていただければ、きっと意味がある映画になるのだと思います。より多くの人に観てもらって、作品の熱量を感じていただければうれしいです」

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取材・文/渡辺敏樹 撮影/はぎひさこ
ヘアメーク/藤尾明日香(kichi.inc) スタイリスト/武久真理江

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