ブレイク直前の西島秀俊の演技に感嘆!昭和の名作をリメイクした「怪奇大作戦セカンドファイル」のすごみ

ブレイク直前の西島秀俊の演技に感嘆!昭和の名作をリメイクした「怪奇大作戦セカンドファイル」のすごみ

円谷プロが制作した伝説的な特撮ドラマ「怪奇大作戦」をご存じだろうか。1968年にTBS系で放送開始された本作は、社会に発生する謎の科学犯罪に挑む組織「SRI」(Science Research Institute=科学捜査研究所)の活躍を描いた作品で、怪奇現象の実態は、人間の手による科学犯罪であるという構成が特徴だ。円谷プロの代表作「ウルトラシリーズ」の系譜ではあるものの、怪獣や宇宙人が登場する派手な作風ではない。だが、社会の闇に切り込むような重いテーマの回もあり、過激なストーリーとショッキングな映像により、未だに特撮ファンの間で語り継がれている作品である。円谷プロがウルトラシリーズとは異なる大人向け路線として制作した異色作であり、特撮というより日本のSFドラマ史に大きな足跡を残した作品と言っていいだろう。

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■日本のホラー映画界を代表する豪華な監督陣が演出を担当

2007年には、NHK BS-hiでリメイクがなされて「怪奇大作戦セカンドファイル」のタイトルで全3話が放送された。オリジナルの作風を受け継ぎつつ、21世紀の科学技術や社会問題を盛り込み、名作を現代に甦らせた作品として高く評価されている。

SRIのメンバー構成は旧作に準じているが、大きな改善点として主人公が変更され、西島秀俊演じる牧史郎が主役となった。旧作で牧を演じたのは岸田森(きしだ しん)だったが、牧が主体となったストーリーに傑作が多く、"昭和の怪優"として知られる岸田の芝居があまりに印象深かったこともあり、「怪奇大作戦=牧史郎」のイメージが強かった。後半では、実質的に牧が主人公だった感もある。ちなみに、旧作では勝呂誉が演じた、主人公的な位置づけの三沢京助役には、ココリコ・田中直樹が起用されている。

NHKと円谷プロは、名作の復活に際して、オリジナル版にも関与した実相寺昭雄をシリーズ構成と脚本に参加させ、懐古的リメイクではなく、「現代社会の怪異」を描く作品として再構築した。特に注目すべきは、監督陣の顔ぶれだ。『呪怨』の清水崇(第1話)、『リング』の中田秀夫(第3話)という日本ホラー映画界の両巨頭が演出し、第2話の演出と企画プロデューサーは平成ウルトラシリーズを支えた北浦嗣巳が務めている。まさに、ファン垂涎の陣容を整えた。

西島と言えば、第79回カンヌ国際映画祭で絶賛された、ニコラス・ウィンディング・レフン監督作『Her Private Hell(原題)』(7月に全米公開予定)への出演をはじめ、主演映画『時には懺悔を』(8月公開予定)、『存在のすべてを』(2027年2月公開予定)と、活躍ぶりが目覚ましい。本作は、まだ国民的な人気俳優になる前、36歳の時に主演し、彼の俳優人生において重要な位置を占めた貴重な作品と言えるだろう。SRIの中心人物で、冷静沈着な科学捜査官である牧は、論理を重視しながらも、人間への共感を失わないキャラクターとして描かれている。

本作における西島秀俊の演技については、後の映画『ドライブ・マイ・カー』にも通じる彼の芝居の原型を見ることができる。決して派手に演じることなく、理解し難いものへの恐怖と科学への信頼を滲ませつつ、他人に共感する優しさも感じさせる。抑制された演技ながらも、心情が伝わってくる味わい深さが魅力になっている。特に第2話「昭和幻燈小路」では、幻想的な世界に迷い込みながらも理性を失わない牧の姿が印象的で、西島の静かな演技力が際立っている。

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■全3話に凝縮された濃密なストーリーに引き込まれる

本作の魅力は単なる謎解きには留まらず、事件の背後にある「科学の暴走」や「人間の欲望の深さ」、さらには社会から取り残された人たちの悲哀を描き出している。「怪奇現象より怖いものは、人間の醜さである」という旧作の基本テーマを色濃く受け継いでいる点にも好感が持てる。その奥深いテーマを表現するのに、西島の抑えた演技が絶妙にハマったという印象だ。田中直樹は熱血漢の三沢を体当たりで熱演。彼自身の持ち味を生かし、牧とは対照的な直情型のキャラを巧みに演じている。全3話ながら、各話の内容は極めて濃密だ。第1話「ゼウスの銃爪」は、突然の発火で女性が焼死する事件の裏に潜む、陰謀と兵器技術の恐怖を描く。第2話「昭和幻燈小路」は、下町の住民が大挙して失踪する怪事件が発生し、牧たちが過去と現在が入り混じる異空間に迷い込む。昭和への郷愁と戦後日本の記憶を扱った、極めて評価の高いエピソードだ。第3話「人喰い樹」は、奇怪な植物による連続怪死事件を描く。生命科学と自然への畏怖をテーマとして、オリジナル版の怪奇性を最も色濃く継承した作品と言える。

放送当時は、オリジナル版へのリスペクトが色濃く、旧作を知るファンにも高く評価され、映像の味わい深さと大人向けSFとしてのストーリーの完成度も評判となった。西島秀俊を中心としたキャストの演技も好評で、「全3話では短い。10話くらい見たかった」などと、長期シリーズ化を望む声も多かった。リメイク作品ということで、オリジナルほどの強烈さ(現代では放送できない過激な描写も多い)には及ばないかもしれないが、「科学と怪異の境界」を描いた大人向けドラマとして、本作の完成度は極めて高い。今見ても非常に見応えのある作品である。特に西島秀俊のファンにとっては、大物俳優としてブレイクする直前の彼の魅力を堪能できる貴重な一作と言えるだろう。「ウルトラマン」ほどの圧倒的な知名度はないものの、「怪奇大作戦」を熱く支持するファンは数多い。今回、チャンネル銀河で放送される「怪奇大作戦セカンドファイル」を見てもらえば、オリジナルへの関心も高まることだろう。その意味でも、優れたリメイク作品の価値は大きいのである。

文/渡辺敏樹

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