「VIVANT」から「結婚できない男」まで!実力派俳優・阿部寛の幅広い魅力が炸裂する名作ドラマ3選
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2026.06.19
6月22日に62歳の誕生日を迎えた俳優・阿部寛。二枚目スターとして活躍し、以降は演技派に転身。ラブコメディ、大作映画、ミステリー...どんな作品でどんな役を演じてもハマってしまう。キャリアの中で何度も"別の顔"を成功させてきた阿部だが、「どの時代の阿部寛が好きか」ということで、人によって挙げる代表作がまったく変わってしまう俳優でもある。そんな阿部の代表作の中から、今回は3作を厳選して深掘りしてみた。
■最後の弁護人(2003年・日本テレビ)
2003年1月期に日本テレビ系で放送された法廷ドラマ。"国選弁護人"を主人公に据えた作品で、「ほかの弁護士がしり込みする厄介な被告」ばかりを弁護する。つまり、「最後の砦」のような存在である弁護士が主人公の法廷ドラマだ。
阿部が演じる主人公・有働和明は、"国選弁護"を中心に活動。弁護士費用を払えない被告人や、世間から「絶対に犯人だ」と見なされている人物の弁護ばかりを引き受けている。報酬が少ないため、生活は極貧。事務所の家賃やスタッフの給料もまともに払えない始末だ。それでも「被告人がどんな人間だろうと、最善を尽くして無罪を目指して弁護する」という信念を持ち、弁護士として有能な男である。

(C)NTV
幼児殺害事件や少年犯罪、ストーカー事件、冤罪の可能性がある凶悪犯罪といった事件の裁判が描かれ、非常にシリアスな社会派の作品だ。「被告は本当に犯人なのか」、「法律は誰を守るのか」を視聴者に問い続ける重い展開で、見ごたえは抜群。痛快な"逆転裁判型"の作風ではなく、世間の偏見や報道の在り方、被害者感情、罪を犯したかもしれない人物を弁護することへの社会的な嫌悪などを正面から描いた、重厚で骨太な作品である。ちなみに本作で有働のライバルの検事・沢登役で出演している松重豊も印象深い。
有働は「世間から憎まれる被告人」であっても、徹底的に調査して、わずかな矛盾から真実へ迫っていく。そんな彼自身も妻を亡くした重い過去を抱えており、しかも彼が弁護した事件をきっかけに命を落としたのだ。だからこそ有働は、「弁護人は本当に正しいことをしているのか」という苦悩を常に抱えつつ、それでも信念を持って裁判に挑んでいく。一話完結形式ながらも「弁護士とは何か」を主人公自身に突きつける物語が一貫して続いていく構造も魅力だった。特に最終回は、自身の「妻の死」に向き合うヘビーな展開が待ち受けており、必見だ。今見ると、時代を先取りした感もあり、SNSで拡散された感情による断罪が日常化している現代において、本作は、「嫌われる人間にも弁護は必要なのか」という、民主主義社会の根本を描いている。単なる2000年代の法廷ドラマというより、「法は感情に流されてはいけない」という重厚なテーマを持った作品として、極めて意味深い作品と言えるだろう。

■結婚できない男(2006年・フジテレビ系)
2006年にフジテレビ系で放送されたラブコメディ。阿部が演じる偏屈な独身建築家・桑野信介の日常を描いたドラマで、口コミで人気が浸透し、後年には「平成を代表するコメディドラマ」の一本として高い評価を受けた。桑野は、「僕は結婚できないんじゃなくて、結婚しないんです」と言い張るが、根本的に人付き合いが苦手。孤独を愛していると標榜しながらも、じつは寂しがり屋だ。本音では結婚願望があるのに、見栄を張って隠そうとする。そんな像が強烈な個性を持ち、多くの視聴者に愛されて記憶に刻まれる作品となった。2000年代前半は「結婚しない」生き方が、社会的に可視化され始めていた時代。しかし本作は、本作は独身の是非を単純化せずに「一人でいる快適さ」と「他人と暮らす煩わしさ」を認めつつも、結婚を求めてしまう矛盾をテーマにしている。それをユーモアと哀愁を込めて描き、阿部の絶妙な演技によって最大限に昇華された点が魅力だ。
桑野信介は、腕は超一流だが性格に難がある建築家。偏屈で神経質、他人と距離を置く皮肉屋だ。「一人焼肉」や自宅でのクラシック鑑賞を堪能する場面がコミカルに挿入されるが、ある日、体調不良で病院に運ばれたことから彼に変化が訪れる。病院で知り合った内科医の早坂夏美(夏川結衣)、腹痛で倒れた桑野を助けた隣人の田村みちる(国仲涼子)らと関わりながら物語が少しずつ動いていく展開だ。

本作は、阿部寛の代表作の一つに数えられているが、「わかりやすいようで複雑な人物像」を見事に体現した演技が素晴らしかった。桑野は偏屈で「嫌なヤツ」であるのだが、内面はナイーブで不器用。他人を恐れる傷つきやすさを内包。微妙に空気が読めないのも特徴で、一歩間違えば"痛い人"になってしまう人物を魅力的に見せたのは、阿部の演技の巧さに他ならない。特に真顔と間の取り方が絶妙で、なんともいえぬ愛嬌を感じさせた。つまり、「笑わせようとしていないのに面白い」のである。これができる俳優は多くない。桑野が至って真剣に語れば語るほど、視聴者には滑稽に見える。そんな"ズレの芝居"が見事だった。夏川結衣演じる早坂夏美とのユーモラスな掛け合いも絶品で、彼女の演技も本作の成功に不可欠だったはずだ。主人公にイラつき、あきれながらも放っておけない。そんな夏美の心情を絶妙に表現した夏川の自然体の演技も高く評価された。
恋愛ドラマでありながら、「他人と生きることの難しさ」を描いた本作は、心理描写に重きを置いた点も新鮮だった。「ソロ活」や「非婚化」、「コミュニケーション疲れ」が叫ばれる今、本作のテーマは当時よりも響くかもしれない。初回放送から13年を経た2019年に、続編 「まだ結婚できない男」が制作されたのもそんな時代の変化が一因だろう。

■VIVANT(2023年・TBS系)
2023年にTBS系「日曜劇場」枠で放送された堺雅人主演、福澤克雄演出による超大作ドラマ。「半沢直樹」、「下町ロケット」、「陸王」、「ドラゴン桜(2021)」などをヒットさせた福澤の日曜劇場路線の集大成と呼べる作品だ。日本のドラマとしては異例の海外ロケを断行し、映画級のスケール感と情報を最小限にした画期的なプロモーション、さらに視聴者による空前の考察ブームを巻き起こしたことで、人気テレビドラマとなった。
主人公の商社マン・乃木憂助を演じる堺雅人に対し、阿部は警視庁公安部外事課の警視・野崎守を演じている。野崎は公安警察のエリート。この役は、阿部寛が長年培ってきた、長身の体躯による威圧感と低音ボイスの迫力。さらに滲ませるユーモアと知性。いわば暑苦しさと胡散臭さを両立させた個性的な人物像で、まさに「阿部寛のために用意された」ような役だ。有能なエリート警視でありながら「クセ強」で、人懐っこさを感じさせる。つまり人間的な魅力に溢れた人物だ。視聴者は、野崎に魅了されながらも「信用していいのか分からない」感覚を持ち続ける。そんな微妙さが、スパイドラマとしての核にもなっていた。

(C)TBS
本作において、コミカルさと静かな迫力を融合させたような演技を見せた阿部は、俳優としての評価をさらに高めることにもなった。特に秀逸だったのは、"説明せりふ"の処理能力だろう。本作は難解な専門用語や設定説明が異常に多い作品だが、阿部はそれを、リズムと熱量、表情の巧さによってエンタメに昇華させてしまっている。「阿部寛がしゃべると難しい話が面白くなる」のだ。これは非常に高度な技術であり、彼が稀有な俳優であることが証明されたと言えるだろう。後半での最大の見どころは、阿部寛とノゴーン・ベキを演じる役所広司の対峙である。敵役ではあるが、ベキは単純な悪役ではなく、人格者である。父性を有し、革命という理想に燃えつつ、深い悲しみを背負った人物だ。だからこそ、阿部の"国家側の論理"と、役所の"理想の暴走"が衝突するこの場面で、単純な善悪ではない重厚さが生み出された。日本のドラマとしては異例なスケール感と映像美、重厚で複雑なストーリー構成により、本作は大ヒットした。特にモンゴルで撮影されたというパートは、テレビドラマの枠を超える見事な映像だった。堺雅人、役所広司をはじめ、二階堂ふみ、二宮和也、松坂桃李といった主役級の俳優が勢ぞろいした本作にあっても、阿部寛の力量と存在感は見事だったという他ない。「VIVANT」は、日本のテレビドラマの底知れぬ可能性を示し、大きなインパクトを業界に与えたが、俳優・阿部寛にとっても、コメディ・社会派・熱血・ミステリアスを全て盛り込んで表現できる稀有な俳優であることを示した作品になったのではないだろうか。
7月26日(日)よりTBS系にて第2シーズン放送スタート
文/渡辺敏樹




