湊かなえ原作ドラマ・映画3選!綾野剛や戸田恵梨香ら出演の名作で「イヤミスの女王」の真骨頂を堪能

湊かなえ原作ドラマ・映画3選!綾野剛や戸田恵梨香ら出演の名作で「イヤミスの女王」の真骨頂を堪能

2007年に「聖職者」で第29回小説推理新人賞を受賞して小説家デビューし、「聖職者」から続く連作集「告白」が、2009年に本屋大賞を受賞した湊かなえ。同作は2010年に松たか子主演で映画化され、2010年度の日本映画興行収入成績が第7位、書籍も大ベストセラーとなり、一躍人気作家の仲間入りを果たした。

その後も、映画『少女』(2016年)や、映画『望郷』(2017年)、映画『母性』(2022年)、ドラマ「花の鎖」(2013年、フジテレビ系)、ドラマ「Nのために」(2014年、TBS系)など、実写化された作品は枚挙に暇がなく、5月より映画『未来』も公開されるなど、長年にわたってエンタメ界をにぎわせ続けている。

■映像化にもってこいの多重構造の構成

湊かなえの特徴といえば、「イヤミス(読後に嫌な気分になるミステリー)の女王」と呼ばれる独特な作風が1番に挙げられるが、より一層踏み込んで分析すると、1つの事件を登場人物ごとの視点を切り替えて描くことで、隠されていた事実が次々と明らかになる"多重構造の構成"が読者のページをめくる手を止めさせない。

これは、映像化、特に連続ドラマ化にはもってこいで、毎話ごとに盛り上がりとインパクトを盛り込むことができ、主人公以外にもスポットが当たるという一石二鳥、いや三鳥、四鳥のメリットがある。しかも、縦軸として描かれる事件には緻密な伏線と予測不能などんでん返しが用意されており、事件そのものもしっかりと楽しめるのだから映像化されるのも自明なのだ。というのも、デビュー前に新人脚本賞に佳作入選していたり、ドラマ「高校入試」(2012年、フジテレビ系)でオリジナル脚本も手がけていることからも分かるように、映像における見せ方、視聴者の気の引き方をよくつかんでいるからだろう。

■世界観から抜け出せない"どこか他人事にはできない"リアリティー

そして何より、「イヤミス」の支柱となっている人間の心理描写が卓出している。家族や友人関係、学校など逃げ場のない関係性における"歪み"や、どこにでもいる普通の人が抱える"心の闇"をテーマに、日常に潜む悪意や嫉妬、自意識の過剰さといった人間の醜い内面を浮き彫りにしており、読み手や視聴者に"どこか他人事にはできない"リアリティーを感じさせる。

誰しもが経験したことのある、ちょっとした欺瞞や自己弁護、見てみぬふりなどが、不幸にも積み重なって大きな事件に発展していくという、読み終わった後、見終わった後でも「どこでどうしていれば、こんな結末を避けられたのだろう」と思わず引きずってしまい、また読みたく、見たくなるのだ。

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■三者三様の"多重構造の構成"と"人間の心の闇"が癖になる

そんな作家の魅力が存分に堪能できる映像化作品、ドラマ「夜行観覧車」、映画『白ゆき姫殺人事件』、ドラマ「リバース」がJ:COM STREAMで見放題で配信中。

ドラマ「夜行観覧車」は、鈴木京香主演で2013年にTBS系で放送されたもので、高級住宅街に引っ越してきた一般家庭の家族を中心に、街で起きた殺人事件を機に、崩壊する家族の再生と絆を描くサスペンス。

娘の受験失敗からの家庭内暴力、街の住民たちとの格差や劣等感、本心は見せられない近所づきあいの難しさ、などが積み重なり、澱がいつしかヘドロのように溜まって簡単には取り除けなくなっていき、気づいた時には取り返しのつかない事態に陥っているという、家族が崩壊の一途をたどるさまが描かれている。鈴木演じる主人公の真弓をはじめ、夫、娘も、家族は皆、一生懸命頑張っているにもかかわらず、掛け違ったボタンのように、頑張れば頑張るほど堕ちていく。登場人物に悪人はいないのに状況だけが悪くなっていくという"どうしようもなさ"に目が離せなくなる。

殺人事件の発生からスタートし、真弓ら遠藤家が引っ越してきた4年前からの回想シーンをいくつも散りばめ、"過去"と"現在"を激しく行き来しながら、登場人物同士の関係性や状況の変化、心情の変化などをジグソーパズルのピースのように描いていき、物語が進むにつれて全体像が見えてくるという見事な構成となっている。

映画『白ゆき姫殺人事件』は、化粧品会社の美人OLがめった刺しにされ、燃やされた遺体となって発見された事件を描いたミステリー。インターネット上の炎上や報道被害をテーマにしており、世間の無責任な発言や思想の怖さをセンセーショナルに描写している。

綾野剛演じるテレビワイドショーの制作を請け負う契約ディレクターが、立身出世を狙って独自に事件の取材を進めていくのだが、被害者の会社の上司や同僚、事件の日から失踪している被害者の同僚の友人など、さまざまな人の証言を集めていくうちに、証言に齟齬が生じ始め、何が本当で何がうそなのかが分からなくなっていく、という迷路のような展開に目が離せない。

しかも、"右向け右"の無責任な発言や思想が、山火事のように速く甚大な被害をもたらしていく"怖さ"と共に、人の証言の"あいまいさ""不確かさ"といった脆弱性が描かれているところもポイント。自分にとって不都合なことは言わなかったり、曲解していたり、都合よく言い換えたりと、証言の1つ1つは「ちょっと盛っただけ」なのだが、そればかり集まるとむしろ真実は見えなくなってしまうという、SNSにおける注意喚起も盛り込まれており、視聴者に対しても「物事に対する向き合い方とは?」というメッセージを突き付けてくる。ほか、見終わった後に気付くタイトルの意味に思わずうなってしまう。

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ドラマ「リバース」は、藤原竜也演じる主人公・深瀬和久が、恋人・越智美穂子(戸田恵梨香)と出会う"現在"を軸に、深瀬の親友・広沢由樹(小池徹平)の不審な事故死が発生した"10年前"の大学時代のエピソードを織り交ぜながら進行。深瀬らの"10年前"の罪を責める告発文の差出人と事件の真相を突き止めるミステリー要素と共に、大学時代はそれほど仲良くなかったゼミ仲間が友情を深めていく人間ドラマを群像劇で描いている。

保身から口をつぐんだ"罪"に蓋をして生きてきたが、告発文が送られてきたことで"罪"が明るみになり、現在の平和な暮らしが脅かされる危機感と共に、10年間"罪"にとらわれ続けていた苦しみも描写。

10年前の"罪"が白日の下にさらされそうになっているという、「犯人は仲間の中の誰かなのか、それとも仲間以外の第三者なのか」という謎と、「そもそも事故として処理されたが、実は事件だったのでは」という謎が同時進行で明かされていく展開は新鮮だ。

そして、ちょっとした"歪み"から発展した「言い出しづらくて言いそびれたことが、こじれにこじれてにっちもさっちもいかなくなってしまう」という、いつどこで起こってもおかしくないリアリティーが、視聴者の心を揺さぶる。

練りに練られた謎解きのハラハラ感と重厚な人間ドラマを存分に楽しんでほしい。

文/原田健

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