北大路欣也主演「三屋清左衛門残日録」──長年愛される理由と新作の見どころを徹底分析「人物相関図付き」
2025.11.20
いよいよシリーズ最新第9作となる新作が放送される「三屋清左衛門残日録」。東北の小藩で前藩主の用人の職を辞し、家督を嫡男の又四郎(松田悟志)に譲った清左衛門(北大路欣也)は、道場通いや釣りを嗜みながら、親友の町奉行・佐伯熊太(伊東四朗)が持ち込む藩内の難題の解決に向けて奔走する。これまで、藩内部の熾烈な派閥争いや陰謀、旧友との再会と別れなどが描かれてきた。
日本を代表する俳優・北大路欣也が惚れ込み、主演を務めるシリーズの魅力はどこにあるのか。ここでは、現代にも通じる四つの「妙味」をご紹介したい。

まず、一つ目は、人との距離に難しさを感じる人に見てほしい「人間関係の妙味」。
清左衛門は、重職を勤めあげ、藩士として立派な経歴を持つが、若いころの友は必ずしも成功した者ばかりではなかった。
シリーズ第3作「三十年ぶりの再会」では、かつて修業した中根道場の仲間たちと三十年ぶりに再会を果たし、「友と飲む酒ほどうまいものはない」と実感したのもつかの間、辛すぎる別れを経験する。月日を経る中で立場が変わってしまった友人とどうつきあっていくか。清左衛門の人との距離のとり方、話しかけ方などは、人間関係を保つうえでのヒントになる。
続く二つ目は、ミステリー好きの人に見てほしい「謎解きの妙味」。

清左衛門は、しばしば藩内の陰謀や悪意を感じ取り、その真相を追うことになる。隠居という身の上で、派閥や権力争いとは無関係でいられるのが強みだ。藩内の事情に詳しい親友の町奉行・熊太からの情報も謎解きに欠かせない。
シリーズ第6作「あの日の声」では、二十年前に武士を辞めた男の息子が、普請奉行と斬り合い、二人とも命を落とすという事件が起こる。その後も続く不審な死。まさか手を汚したのはこの男だったのか!!と思わず声を上げたくなるクライマックスだった。最新第9作「永遠(とわ)の絆」でも、若い夫婦に起きた悲劇、そして熊太の旧友の死を知った清左衛門が、その裏にある黒い渦の正体に迫る。
謎が解けた瞬間、なんともいえない切なさが残るのもシリーズならでは。小さな幸せのため、奔走する清左衛門の思いに胸が熱くなる。
三つ目は、時代劇に挑戦する若手俳優を応援する人に見てほしい「時代劇共演の妙味」。

道場で汗を流し、清流釣りなど趣味も楽しむ清左衛門は、息子世代やこどもたちからも慕われる。そこから物語が動くことも多い。シリーズ第8作「春を待つこころ」では、御前試合に敗れ、落ち込む若き剣士・窪井信次郎(藤岡真威人)と出会い、彼が慕う若い娘に迫る魔の手と戦った。藤岡は本格時代劇初出演。70年のキャリアを誇る北大路との初々しい共演場面は話題となった。
なお、最新第9作「永遠(とわ)の絆」には、若手キャストとして佐藤流司、山谷花純が出演。ベテラン陣では、上川隆也、藤岡の父・藤岡弘、、佐野史郎もゲストに。どんな共演シーンになるかも楽しみだ。
そして四つ目は、幸せって何だっけ?と思う人に見てほしい「人生の妙味」。

いつの世も、いくつになっても人生に迷いはつきもの。人生の達人のように見える清左衛門も隠居してから、時間の過ごし方や亡き妻への思いが、さまざまに変化してきた。そんな中で、親友との友情、なじみの小料理屋「涌井」で美味いものを食し、孫と遊ぶ楽しみを見つけていく姿がじっくり描かれる。そんな清左衛門とともに美しい自然の風景を眺めるひとときは心地いい。
どんな世代にも届く「四つの妙味」。新作でも存分に楽しんでほしい。

文/ペリー荻野














