岡田将生のイケメンぶり&演技力を堪能できる「ザ・トラベルナース」ほか出演作3選

岡田将生のイケメンぶり&演技力を堪能できる「ザ・トラベルナース」ほか出演作3選

俳優・岡田将生は、透明感のある繊細な演技に定評があり、若手時代から感情表現の幅広さと安定した演技力で知られる。2006年に俳優デビューし、映画『重力ピエロ』(2009年)や『告白』(2010年)、大河ドラマ「平清盛」(2012年)といった話題作で重要な役を好演。特に映画『悪人』(2010年)では性格の悪いイケメン大学生役という、クセのある難役を見事にこなして演技力を高く評価された。

長身で清廉な雰囲気を醸しながらも、特に円熟した色気を感じさせ、近年では、ナイーブな青年から冷酷な悪役、情にもろい大人まで自在に演じ分ける実力派の俳優としての地位を築いている。特に2021年公開の映画『ドライブ・マイ・カー』で演じた不穏な俳優・高槻耕史役の演技は、濱口竜介監督や共演者からも絶賛された。2009年のブルーリボン賞新人賞をはじめ、2021年度全国映連賞男優賞、2024年度日本アカデミー賞優秀助演男優賞など、数多くの映画賞も受賞している。今回は、そんな岡田将生の演技を堪能できる3作を厳選してご紹介したい。

■中井貴一との掛け合いが楽しい医療ドラマの傑作「ザ・トラベルナース」

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テレビ朝日系木曜ドラマ「ザ・トラベルナース」は、2022年に放送されて人気を博し、2024年に続編も作られたユニークな医療ドラマの傑作だ。岡田と中井貴一のW主演で、岡田は医療行為も行うNP(Nurse Practitioner)資格を持つ、アメリカ帰りの看護師・那須田歩を演じている。中井は超有能で謎めいた看護師・九鬼静役で共演。トラベルナースとは、スーツケースを手に医療現場を渡り歩いて看護に従事するフリーランス看護師のこと。日本ではなじみが薄いが、アメリカでは全看護師の10%を占める存在だ。岡田演じる那須田歩は、アメリカの医療現場で活躍したエリートNPだけにプライドが高く、日本の看護師の意識の低さや医師から見下されていることが気に入らない。言動もはっきりしていて、感情移入しにくい人物に見える。ただ、ミステリアスな伝説の看護師である九鬼と出会い、時に反目して鼻っ柱を折られながらも、徐々に意識を変革して周囲とも協力し合うようになる。やがて歩や九鬼の存在が、医師や看護師、患者たちを少しずつ変えていくというストーリーだ。

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プロ意識が高いクールなキャラクターながら、可愛げもある主人公を演じる岡田の演技は、視聴者から高い評価を受けた。特に中井とのコミカルな掛け合いと、日本の医療に問題提起をしながら改革への熱意をにじませる硬軟のバランスが絶妙。腕利きの看護師ながらも、人間味溢れる深みのあるキャラクターを見事に作りあげた。医療現場の人手不足や看護師のジレンマ、旧態依然の病院の体質など、医療のリアルなテーマを描きながらも、テンポの良い会話、個性的なキャラクター、痛快なストーリー展開など、エンタメとしても完成度が高く、岡田&中井コンビを中心に、松平健、寺島しのぶ、菜々緒、安達祐実、柳葉敏郎といった豪華な共演陣が脇を固めて見ごたえ抜群の演技合戦を見せてくれた。メインライターを務めた中園ミホは、「ドクターX」シリーズを手掛けた脚本家だけに、医療ドラマはお手の物。本作にも音楽やナレーションの入れ方など、同作を思わせる演出が随所に見られる。

■正義の新人医師を演じた医療ミステリー「聖なる怪物たち」

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医療ドラマだが、毛色の違う作品として2012年に放送されたドラマ「聖なる怪物たち」(テレビ朝日系)を紹介したい。本作は、河原れん原作の医療ミステリー小説をドラマ化し、岡田は主人公の新人外科医・司馬健吾を演じている。経営難に苦しむ総合病院を舞台に、医療現場の過酷な現実を描いた作品だ。大久保記念病院の若手外科医・司馬健吾(岡田)は、飛び込みで訪れた身元不明の妊婦の緊急手術を行うが、妊婦は出産直後に死亡。身元の分からない新生児だけが病院に残される。妊婦を助けられずに悔やむ司馬だったが、実はこの緊急出産は仕組まれたものだった...。

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岡田は、医師としては未熟で頼りない面もあるが、患者を助けるために全力で命の重さと向き合う、正義感と使命感にあふれる純粋な医師を好演。妊婦の死に疑問を感じ、その裏に隠された代理出産の陰謀に迫っていく。いわばタイトルにある"怪物たち"に迫っていく立場だ。自分を産んだ直後に母が亡くなった過去を背負い、医大に行かせてくれた父への感謝を忘れない。看護師長の春日井優佳(中谷美紀)とその妹で財閥の日向家に嫁いだ圭子(加藤あい)ら怪物側の登場人物のキャラが際立っている中で、孤軍奮闘する司馬を熱演している。医師や看護師、教育者といった"聖職者"たちの恐るべき真実を暴きながら、作中で人間的に成長していく司馬の姿を演じる岡田の、変化を表現する演技力に感心する。この頃の岡田は、感情をぶつけるような強い芝居に迫力があり、視聴者が共感しやすいのだ。

■ナチュラルな演技が光った映画『そらのレストラン』

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最後に、2019年公開の映画『そらのレストラン』を取り上げたい。本作は、『しあわせのパン』、『ぶどうのなみだ』に続く大泉洋主演の北海道企画の第三弾で、チーズ工房を経営する酪農家が1日限りのレストランを開くまでの奮闘記を描いている。岡田は、東京から北海道に移住し、牧羊を営む青年・神戸役で出演した。北海道・せたな町の海が見える牧場で、牛を飼いながらチーズ工房を営む設楽亘理(大泉洋)は、妻のこと絵(本上まなみ)、娘の潮莉(庄野凛)との家族3人暮らし。石村(マキタスポーツ)、富永(高橋努)、野添(石崎ひゅーい)ら気の合う仲間たちにも恵まれて幸せに暮らしていた。やがて東京から来た神戸(岡田将生)も加わり、それぞれが生産する食材を持ち寄っては、北海道の食材を楽しむ彼ら。そんな食材を目当てに、札幌の有名シェフ・朝田(眞島秀和)がやって来る。卓越した朝田の調理で、食材が段違いに美味となることに感動した亘理は、この味をもっと多くの人たちに知ってほしいと、仲間とともに1日だけのレストランをオープンさせようと思い立つ...という物語だ。

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本作は、北海道の雄大な自然を背景に、現地で暮らす人々のささやかな日常をリアルに描いた静かな作品。大泉をはじめ、キャストたちのナチュラルな演技と、北海道の自然美や食材の魅力を存分に引き出す独特なカメラワークが魅力である。2019年にアメリカのソノマ国際映画祭にて、日本映画としては初となる外国映画最優秀審査員賞を受賞するなど、海外でも高い評価を受けた。人間ドラマではあるものの、劇的な展開や起伏のあるストーリーをあえて排した異質な作品だけに、俳優たちの演技アプローチも難しかったはず。普段は存在感のある強い役を演じることが多い岡田だが、本作での神戸は、大事な羊に逃げられてオロオロしたり、朝田が作った羊肉の料理が食べられなくておどおどするような"カッコよくはない"人物だ。それを極めて自然にさらっと演じ切るところに好感が持てる。当初は情けない感じだった神戸が、亘理たちと接する中で自信を持てるようになり、後半では顔つきも変わってくる。作品の中で「成長」を表現するのがじつに巧い。それが俳優としての岡田の魅力だとわかる。

考えてみれば、「ザ・トラベルナース」の那須田歩も、様々な患者と接したり、九鬼に説教されたりして"成長"していく過程が描かれている。「聖なる怪物たち」に至っては、医療ミステリーが主軸ながらも、全編が司馬健吾の成長物語と言ってもいいほどだ。つまり、俳優としての岡田将生の魅力は、物語の中で"成長"する変化の過程を説得力抜群の演技で見せられることなのかもしれない。2018年放送のドラマ「昭和元禄落語心中」(NHK)では、青年期から老年期まで同一人物の多層的な変化を表現し、落語家としての葛藤や執念が鬼気迫る演技として高い評価を受けた。初期こそ凛々しい好青年役のイメージが強かったが、後にはサイコパスの殺人鬼役などもこなし、演技の幅広さを示している。俳優として自身も"成長"し続けているのだ。自身の演技について語る言葉が常に謙虚で、更なる飛躍を目指している姿勢にも好感が持てる。役柄への真摯なアプローチと巧みな演技力により、視聴者の心に訴えかける岡田将生。彼のポテンシャルは計り知れない。近年、授賞式やブランドのイベントなどで"イケメンぶり"が度々話題になっているが、端正なビジュアルだけでなく確かな演技力にもぜひ注目してほしい。

文/渡辺敏樹

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