岡田准一初のプロデュース作品「イクサガミ」にかける思いとは―「時代劇をつなぐために長年考えてきた答えが『イクサガミ』」
国内ドラマ 独占配信インタビュー
2025.11.20
Netflixの新作バトルロワイヤルシリーズ「イクサガミ」が、世界独占配信された。原作は第166回直木賞をはじめ数々の賞を受賞してきた今村翔吾氏が、武士の時代の終焉(しゅうえん)を迎えた明治を舞台に描いたエンタメ時代小説。「人斬り刻舟」の異名を持つ主人公・嵯峨愁二郎(さがしゅうじろう)を演じるのは、初のプロデューサーとして本作に臨む岡田准一。今回は主演の岡田准一に作品に懸ける思いを聞いた。

――本作では「時代劇のアップデート」がひとつのテーマとのことですが、その背景について教えてください。
「これまで正統派の時代劇に出演する中で、先輩たちから『時代劇をつないでいってほしい』と言われてきました。当時は『時代劇は上の方の世代に見てもらうもの』という意識がありましたが、今後世界に届く日本人が誇りに思う時代劇を、どうしたら作れるのかと長年考えていたことの答えが、この『イクサガミ』です。
『イクサガミ』では、若い世代が時代劇の美しい部分やかっこいい部分を改めて見直し、自分たちのフィルターを通してアップデートするために、監督やスタッフ、メインキャストに30~40代のメンバーを集めました。上の世代の知見をお借りしてサポートしていただきながら、若いチームがトップにいるという現場でしたね」

――藤井道人監督とタッグを組んだ決め手は?
「彼の芝居に対する思いですね。僕は役者だから芝居が好きなんですが、『最後まで行く』の撮影の時に、藤井監督が俳優に付ける振りが絶妙だったんです。僕にとってアクションは言葉を越えた表現であり、芝居の延長線上でもある。その一番の理解者を考えた時に浮かんだのが藤井監督でした。彼だからこそストーリー性とキャラクター性を描いた上で、アクション構築が必要となる『イクサガミ』が撮れると思いました」
――「イクサガミ」の原作を初めて読んだ時の感想を教えてください。
「今村先生の作品はほとんど読んでいますが、『イクサガミ』は今村先生が書く時代劇の中でも"時代劇をつないでいく"というテーマが見えた作品で、シンパシーを感じました。本作制作時に今村先生とたくさんやりとりをさせていただきましたが、膨大な歴史の知識を踏まえた上でエンタメに昇華させているということを、まざまざと感じました」

――「イクサガミ」を映像化する上で大切にしたことは?
「時代劇のアップデートは、必ずその延長線上でなくてはならないと思っていたので、ファンタジー要素を入れずに、あくまで時代劇の美しさを表現するように留意しました。黒澤明監督の殺陣や数々の先輩たちの名シーンへのリスペクトを込めたオマージュをちりばめながら、自分たちのフィルターを通してどうアップデートするかを常に考えました」
――脚本作りで大変だったこと、編集作業でのこだわりについて教えてください。
「実は、本作は脚本段階からカットしたシーンがほぼないんです。そのくらい、脚本作りに時間をかけました。僕や藤井監督、その他のスタッフで何度も直しながら最後まで詰めて濃密な脚本に仕上げました。編集に関しても、アクションパートを僕が見直して、さらに藤井監督にも見せて直して...と何レイヤーも重ね合わせて細部までこだわり抜きました。
音に関しては、スタジオでいい音響で完成させても、テレビでは低音がほぼ聴こえないこともあるので、藤井監督がそれらをすべて加味して何度も繰り返し見て、最後まで調整してくれました。CGもスマホ、タブレット、テレビのどれで見るかによって、印象的に見える部分が変わるんです。それらも藤井監督が今のフェーズに合わせて何度も調整してくれて......本当に尊敬します!」

――最後に、これから作品をご覧になる方たちにメッセージをお願いします。
「エンターテイメントとして気楽に見てほしいですね。いいものを探している人たちの心に引っかかってくれるとうれしいです」
取材・文/水本晶子 写真/中川容邦














