天海祐希主演「緊急取調室」最新作が放送開始! 女優としての実力を堪能できる作品3選

天海祐希主演「緊急取調室」最新作が放送開始! 女優としての実力を堪能できる作品3選

女優・天海祐希は、宝塚歌劇団の史上最短・最年少でトップスターの座に上り詰め、退団後は話題作に続々と出演。パワフルで華のある女優として幅広い層に支持されている。「離婚弁護士」(2004年)や「女王の教室」(2005年)、「BOSS」(2009年)といった数多くの代表作で知られるが、その人気を不動のものにした「緊急取調室」(テレビ朝日系)シリーズの印象がより鮮やかだ。本作は2014年に放送開始され、2021年にはシーズン4が放送。その間2度のスペシャル版を経て、2025年10月よりシーズン5の放送と12月には劇場版の公開も予定されている。ここではそんな「緊急取調室」シリーズをはじめ、天海祐希の稀有な実力を堪能できる3作品を紹介しよう。

■容疑者との心理戦がメインの異色作「緊急取調室」シリーズ20251016_amami_02.jpg

天海が演じる主人公は、叩き上げの女性刑事の真壁有希子。彼女が所属する緊急事案対応取調班(通称キントリ)は、特殊な容疑者や重要参考人を「取調室」に呼び、直接対峙して真実を引き出す部署だ。銃撃戦や派手なアクションはなく、心理戦がメインの異色作で、ドラマの中心は「言葉の攻防」。決して自白しないとか、供述が二転三転するというクセのある容疑者を自白させるための取調べ専門チームが中心の物語である。

レギュラー陣は、管理官の梶山勝利(田中哲司)をはじめ、中田善次郎(大杉漣)、菱本進(でんでん)、小石川春夫(小日向文世)がキントリの同僚。さらに捜査一課の「モツナベコンビ」こと、監物大二郎(鈴木浩介)と渡辺鉄次(速水もこみち)。加えてシーズン1には、上司の郷原刑事部長(草刈正雄)と相馬一課長(篠井英介)が登場。シーズン3位以降には、逝去した大杉に代わって玉垣松夫を演じる塚地武雅、シーズン4では捜査一課の山上刑事役の工藤阿須加らがレギュラー入りした。

心理戦が主軸のストーリーは緻密で緊迫感があり、毎回登場する手ごわい容疑者を相手に有希子らが奮闘する展開が魅力。基本は一話完結だが、シーズン1後半では、かつて殺害されて殉職した夫・真壁匡(眞島秀和)の死の謎を追う展開が描かれ、最終話では衝撃的な真相が明かされる。

容疑者と「言葉だけ」で対峙する作品のため、天海の演技力が作品の肝。抑制された声のトーンや間の取り方で相手を追い詰める演技に緊張感があり、ドラマを支えた。知的で冷静沈着な一方、ユーモラスな部分や人間味を感じさせる点も素晴らしく、シリアスさと軽妙さを自在に操る柔らかい演技は、まさに唯一無二。取調室の場面では、舞台で鍛えた聞きやすい発声と活舌、さらに豊かな表現力が生きる。そんな強みを活かしつつ、テレビらしくリアルに演じられる技術が高評価に繋がった。シーズン3以降は仲間との絆や人間味が前面に出て、より自然体で温かみを感じさせ、新シーズンが大いに楽しみだ。

■天海祐希でしか成立しない特異なキャラ「合理的にあり得ない 〜探偵・上水流涼子の解明〜」

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近年では、2023年放送のドラマ「合理的にあり得ない 〜探偵・上水流涼子の解明〜」(フジテレビ系)での演技も評判になった。元弁護士で頭脳明晰、変装を武器とする女探偵・上水流涼子(天海)が、IQ140の相棒・貴山伸彦(松下洸平)とタッグを組み、あらゆる依頼を超大胆な方法で解決していく物語。不条理がまかり通る現代の「あり得ない」敵を、「あり得ない」手段で葬る、極上痛快なエンターテインメント作品である。

天海は、頭脳明晰だが型破りな探偵という特異なキャラクターを好演。変装の達人という設定のため、衣装やメイクも毎回変えて、ユニークないでたちで登場。表情や仕草もオーバー気味に演じている。「緊急取調室」とは一変したコミカルでポップ、エキセントリックな人物を巧みに表現。まさに天海祐希にしかできないハマり役であり、彼女の演技の幅と奥行きを改めて見せつけている。

特に相棒役の貴山伸彦との掛け合いが楽しく、テンポ抜群でユーモラスなやり取りが見事だった。ただし、探偵として依頼人の心情に迫る場面では、一転して重厚な芝居を見せるので、そのギャップでキャラクターが立体的になる。本作でのキレのあるセリフ回しとテンポ感は、やはり舞台で培われたものだろう。役者にとってコメディシーンは案外難しいものだが、コミカルな演技でも天下一品な天海の魅力が最大限に生かされ、新たな代表作として昇華させたという印象だ。

ちなみにドラマ「正直不動産」などでも知られる本作の脚本家・根本ノンジは、「フィクション度の高い上水流涼子という役に命を吹き込み、実存感とリアリティをシナリオ以上に表現してくれた」と、天海の演技を絶賛している。

■等身大の普通の主婦を好演した映画「老後の資金がありません!」

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巧みな演技力に加えて、キャラクターとしても魅力のある天海だが、映画の出演作は意外に少ない。そんな中から、2021年公開された「老後の資金がありません!」を紹介したい。

垣谷美雨の同名小説を原作とする本作は、普通の主婦である主人公が老後を豊かに過ごそうと思っていた矢先に、次々と困難に襲われながらも奮闘する物語だ。天海が演じる後藤篤子は、夫の章(松重豊)と2人の子供の4人暮らし。節約をモットーとし、コツコツと老後の生活資金を貯めてきた。ある日舅が他界し、多額の葬儀費用を負担することになる。貯金が目減りしてガックリする中で、パートの仕事も失ってショックが倍増。追い打ちをかけるように、娘・まゆみ(新川優愛)の結婚式費用ものしかかる。極めつけは夫の勤務先が倒産し、失業という緊急事態に。そんな茫然自失の後藤一家に、浪費癖のある高級志向の姑・芳乃(草笛光子)までが同居することになる......。

本作は、想定外の出費や生活の変化が一気に押し寄せ、「老後資金」がみるみる消えていく困難に立ち向かい、家族や周囲との関係を見直して、主人公が人生を前向きに生き直す姿を描くコメディ映画だ。天海が普通の主婦を演じる新鮮さに加え、見栄っ張りだが頼りない夫役の松重豊、ヘヴィメタバンドで活動する恋人・松平(加藤諒)との派手婚を望む長女役の新川優愛、自由奔放な姑役の草笛光子らの共演陣も個性的だ。

さらに柴田理恵、石井正則、若村麻由美、友近、哀川翔、高橋メアリージュンといった共演陣が脇を固める。「老後資金」というシリアスなテーマを扱いながらも、篤子の悩みや葛藤をリアルに表現した天海を中心に、芸達者な俳優陣による演技合戦が楽しめる作品に仕上がっている。重くなりがちな題材を、明るくポジティブに描ききった秀作と言えるだろう。

カッコいい女性像に加え、コミカルで破天荒な人物から等身大の主婦まで、リアルかつチャーミングに演じる天海祐希は、まさに稀有な女優である。10月放送開始の「緊急取調室」シーズン5に加え、10月31日には映画「てっぺんの向こうにあなたがいる」(吉永小百合主演)にも出演。脇役でも光るところを見せてくれそうだ。

文/渡辺敏樹

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