朴璐美「アドベンチャー・タイム」新作で語る狂気と、脳をまさぐられる感覚「収録はマジで地獄(笑)」
アニメ 日本初インタビュー
2026.10.02
不思議な世界「ウー大陸」を舞台に、人間の少年フィンと親友の魔法の犬ジェイクが冒険を繰り広げる人気アニメ「アドベンチャー・タイム」。その待望の新シリーズ「アドベンチャー・タイム:サイドクエスト」が10月5日(月)よりカートゥーン ネットワークにて世界同時放送される。
本編の重厚な展開から離れ、2人の"冒険の原点"を1話完結のフレッシュな世界観で描いていく本作。主人公・フィンの声を演じる朴璐美は、次回作が必ずあると思っていたと自信を持って話す。そんな朴に、約7年ぶりとなるアフレコ現場でのエピソード、そして今改めて感じる作品の魅力について、熱い思いを語ってもらった。

■「やっぱりやるよね」 クレイジーなクリエイターたちへの絶対的な信頼
──久々の新シリーズの始動ですが、再びフィン役のオファーを受けたときのお気持ちはいかがでしたか?
「前作の最終回の時から感じていたのですが『またやるだろうな...』という予感めいたものがあったんです。私自身、2012年の第1話の収録で『何なんだこのクレイジーなアニメは!』と衝撃を受けて以来、うそ偽りなくこの作品の大ファンで。だからこそ、あのクレイジーなクリエイターの方々がここでモノづくりをやめるわけがないと思っていました(笑)。ですから、久しぶりにこの作品に触れられてうれしいというよりは『そうだよね、やっぱりやるよね』と納得してしまう感覚でしたね。
実は昨年、アメリカのイベントにご招待いただいた際、現地でジェイク役とアイスキング役のキャストの方にお会いしたんです。見た目もそのまんまジェイクですし、アイスキング役の方はものすごくインテリジェンスな方で大興奮でした。その際、『この間収録したから、日本でもやるんじゃない?』と教えていただいていたのもあって、当然やるという前向きな気持ちで、またこの作品の看板を背負っていける喜びを感じました」
──今回の「サイドクエスト」の台本や映像をご覧になって、感想はいかがでしたか?
「相変わらず、最初のセリフからその後の展開がまったく予想できないんですよ(笑)。だけど、いつの間にか最後にはタイトル回収がきちんとされていて『これぞアドベンチャー・タイム!』と頭の中をいじられる感覚に興奮しました。懐かしいとなるかと思いきや、本当に何の久しぶり感もなく普通に始まるんです。『ずっとやっていましたが、何か?』という顔をして、ひょうひょうと始まるのが逆に恐ろしくて。クリエイターたちのクレイジーさとセンスのかたまり具合に、涙が出そうになりました(笑)」

■「考えるな、感じろ」初心者も長年のファンも脳みそを揺らぶされる世界
──今作「サイドクエスト」は、初めて見る方と長年のファンでそれぞれどのように楽しんでほしいですか?
「初めて見る方も今まで見てきた方も関係なく、すんなり世界観に入っていける作品です。サイドクエストだからと気負わずに、ただ見てやられてしまってください!ディレクターの甲斐さんからも、最初から『考えるな、感じろ、それのみです』とおっしゃっていました。ゼロから脳みそを揺さぶられるなんて、未経験の方がうらやましいくらいです。
一方で、長年のファンの方には『えぐいほどアドベンチャー・タイムだよ』とお伝えしたいです(笑)。1話ごとに、よりブラッシュアップされた鋭いアイスピックで刺してくるように、社会風刺を潜ませてくる深みが増しています。刺されていることすら分からないまま、脳髄をまさぐられるような感覚を楽しんでほしいですね」
■フィンの原音キャスト入れ替えと、自身の中に蓄積された"フィンの原点"
──今作は若い頃のフィンを描く前日譚(たん)ですが、演じる上での戸惑いはありましたか?
「格段に声を若くしようというような気負いはなかったです。ただ、アメリカのフィンのキャストの方が変わられていて、すごくかわいらしくて初々しい声になっているんです。原音の2人の掛け合いやアドリブが本当にノリノリで。吹き替える側としては『勝手しやがれ!』と思うくらい(笑)。でもそのフレッシュさに引っ張ってもらいながら楽しく演じています。
自分自身の中に長年演じてきたフィンの感覚のかけらが蓄積されているので、自然とそれが集まってくる感覚もあり、リアクションが相変わらずズルいほど面白いので、あまり作り込まず素直に向き合っています」

■「収録自体はマジで地獄(笑)」 愛にあふれたアフレコ現場の裏側
──久しぶりに集まったキャスト・スタッフ陣との現場の雰囲気はいかがでしたか?
「スタジオに入った瞬間、テンションが非常に上がりました!ジェイク役の斎藤志郎さんやディレクターの甲斐さんたちと、また一緒にやれるなんて最高だよね、皆で大興奮ではしゃいでしまいました(笑)。前シリーズが終わってから私は結婚したのですが、みんながフィンと同じ水色のお鍋をプレゼントしてくれたんです。今回何年かぶりに直接ありがとうと言えてうれしかったですね。
でも、こんなにアドベンチャー・タイム愛を語っていますけど、収録自体は本当に地獄なんです(笑)。テンポが超絶速いですし、間がない。アメリカのキャストの皆さんが好き勝手アドリブを入れるので、必死に合わせなきゃいけない。魂を取られる作品だった...という感覚を皆で体で思い出しました(笑)。前シリーズで声帯を痛めたこともありましたが、今はもう強くなっているので何が来ても平気です。いつでもフィンの声が出せます」
──最後に、放送を楽しみにしている視聴者へメッセージをお願いします。
「ファンの方は期待して待っていてください!普通にあの世界へ引き戻してくれます。新しく触れる方は、脳みそをいじられる感覚をゼロから体験できるのが本当にうらやましいです。
かつて、ツリートランクというおばあちゃんキャラがその回の最後に爆発して皆に衝撃を与えたのに次のシーズンで普通に出てきたような、シュールでブラックな魅力は今作も満載です。先日収録した回も『3人のおばあちゃん』が出てくるのですが、エンディングがすごいことになっています(笑)。
大人の方が見ても哲学書のように楽しめますし、お子さんにとっても『なんだろう、これ?』という違和感が心に残る、貴重な体験になるはずです。ぜひご家族で、頭を柔軟にして楽しんでください」

PROFILE
1972年1月22日生まれ、東京都出身。TVアニメ「ブレンパワード」で声優デビュー。以降、舞台、アニメ、吹き替え、ナレーション、プロデュースなど多岐にわたり活躍している。アニメ代表作は「鋼の錬金術師」エドワード・エルリック役、「∀ガンダム」ロラン・セアック役、「進撃の巨人」ハンジ・ゾエ役、「NANA」大崎ナナ役、「BLEACH」日番谷冬獅郎役ほか多数。「東京国際アニメフェア2004」にて声優賞を受賞。「第1回声優アワード」で、「NANA」の大崎ナナ役で主演女優賞を受賞した。
取材・文/永田正雄 撮影/番正しおり




