声優・河西健吾インタビュー#2「声優としての転機。先輩声優に刺激を受け、"会話劇"という生のお芝居をする大切さを知った」

声優・河西健吾インタビュー#2「声優としての転機。先輩声優に刺激を受け、"会話劇"という生のお芝居をする大切さを知った」

「鬼滅の刃」時透無一郎役をはじめ、「3月のライオン」桐島零役、「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」三日月・オーガス役、「Dr.STONE」あさぎりゲン役の好演、そして「ヒプノシスマイク」ではオオサカ・ディビジョンのMCグループ「どついたれ本舗」の躑躅森盧笙役としてラップまで披露する、声優・河西健吾さん。
一見飄々としていて、どんな役でもクールにこなしているようにも見えますが、下積み時代には挫折も経験、「実力以外のことも評価される世界だからこそ、自分は実力で勝ち取りたかった」と実は奥底に声優としての熱い思いも秘めています。
このインタビューでは全3回にわたって、その人となりをひもときながら、声優・河西健吾の原点と信念に迫ります。

■趣味は、ポケカと家庭菜園

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――おやすみの日はどんな過ごし方をしているんですか?

「根がインドア派なので、基本的には自宅で過ごして、溜まった洗濯物や部屋の掃除をして、日がな一日ゲームをしたり漫画を読んだり、ということが多いです。

あとは、最近だとポケモンカードにハマっていて、カードショップで開催される店舗大会に出てみたり、ポケカ仲間に声をかけて対戦したりもしています」

――結構、趣味の中でもポケカの比重は大きめなんですね...!

「わりと大きめかもしれないですね。店舗大会に行って、見知らぬ人とワイワイ勝負するのも楽しいですし、数千人いるようなガチの大会に出て、何戦もして次の日に進めるかどうか、みたいにちょっとピリッと緊張感ある勝負も楽しい。あとは、戦いが終わったあとに感想戦で『あそこはこうでしたよね』という会話がすごく盛り上がるんですよ。

同じものが大好きな人たちが集まって、知らない人とも熱量高く盛り上がれる。そういう場はすごく貴重だと思います」

――ちなみにどんなデッキを使われているんですか?

「僕はどちらかというと、『今このデッキが強いぜ!』と言われるような流行りのデッキをあんまり使いたくないので、それに勝てるような真逆のタイプを使ったりするのが好きですね」

――環境デッキ潰しですね、わかります(笑)。もう一つの趣味として「家庭菜園」をやられているというのも拝見したのですが、こちらは何をきっかけにハマったんですか?

「『僕の趣味ってなんだろう』と考えたときにゲームに関することしかなくて、何か趣味をつくろうと思ったんです。たまたま近所にホームセンターがあったので、『家庭菜園って趣味っぽいぞ...?』と思って、小さな鉢植え、種、土を買ってきたのがきっかけでした。

毎日水やりをしてたら、芽が出てきて、日々成長するのを見ていると、『これ、意外に楽しいかも!』と思うようになるんですよ。そこから本格的に鉢を大きくしていろいろな野菜を育て始めることにしました」

――観賞用というよりは、野菜を育てる方向だったんですね。

「そうですね。番組終わりでお花をいただくことも多いので、観賞用はそれを飾って。自分で育てるのは、料理に使える作物のほうが育てがいあるのかな、という感じです。でも、みなさんが想像するような、トマト、大根とか、メインのような野菜はことごとく失敗してるんです(笑)」

――育てるの難しそうですもんね......!

「あまり余計なものは使わず、水と有機肥料だけで育てるのが好きなのですが、それだとなかなかうまく育てられなくて。トマトのときは2~3個くらい、大根も片手サイズのものしか採れず、あまりちゃんと食べた気にならなかったんですよね(笑)。

今はうまくいっていて、育てているのはニラ。2~3回収穫後に冬を迎えて、一度枯れてしまったんですけど、陽気が暖かくなるにつれてまた芽が出てきて。生命力の強さを感じました。あと夏場はシソもよく採れて、食べても食べても追いつかないぐらい。ヤバいな、と思いながらなるべくそこから採って食べています(笑)」

■「実力以外で決まる」からこそ実力で勝負したい

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――さて、前回のインタビューでは、専門学校やバイト時代の思い出などを中心にお聞きしましたが、今回は声優としてのご活動を中心にお聞きしたいと思います。声優になってみて、「理想と現実とのギャップ」みたいなものは感じましたか?

「たくさんありましたよ。まずは、専門学校を卒業してプロダクションに入れば、すぐに声優として芽が出るんだろうと勘違いしていたこと。20歳の自分は、甘かったですね。仕事はまったく来ないのに、それでも『売れるんだ』という根拠のない漠然とした自信だけはあって、日々、養成所とアルバイトの往復でした」

――そこからどうやって、気持ちが変化していくんですか?

「根拠のない自信は、当時、養成所の講師にもめちゃくちゃ厳しいことを言われて一度鼻を折られました(笑)。

挫折として実感したのは、オーディションですね。24〜25歳のとき、あるオーディションを受けたら、後日マネージャーから『いい話、悪い話、どっちから聞く?』って言われて。『まず、いい話で』って。
そしたら『監督がすごく気に入ってくれて河西くんのこと使いたいって』と。すごくありがたいなって思って」

――嬉しいですね。で悪い話のほうは?

「『制作サイドで『経験の浅い声優を起用するよりは、今波に乗っている声優のほうがいい』という話になり、別の人に決まったよ』って。そこで『ここは実力だけの世界ではないんだ』ということに、ようやく気づけたんですよね。

ネームバリューも、人脈も、運も含めたいろいろな実力。声優としての実力だけじゃなくて、それがいろいろ噛み合ったときにしか、仕事にたどり着けないんだって」

――でも声優としての訓練と違って、そういう要素って当時からすると解決策が見えづらいですよね。

「多分、解決策は持っていなかったと思いますね。ずっとアルバイトをして、生活費だって満足ではないのに、その中で今みたいに服装に気を遣って、外に出ていって色々を吸収して、誰かと会って......ってそんなに余裕もなかったし。

でも、当時の僕は『実力以外で決まる』ということがとにかく悔しくて、逆に『そんな世界で、俺は自分の声優としての道を実力で勝ち取っていきたい』というふうに、自分の目標が定まったんですよね。
そこからは、本当にそれをずっと突き詰めていったと思います」

――すごい。その悔しさがモチベーションになって、もう一度自分の中でギアが変わったんですね。

■相手がいなければ成立しない生の"会話劇"なんだと気づいた転機

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――悔しさをバネにそれまで以上に仕事に励んだと思いますが、そんな河西さんにとっての"転機"はいつ訪れたんでしょうか。

「やっぱり、初めて主演をやらせていただいた『鉄血のオルフェンズ』ですね。当時は二つオーディションを受けさせてもらっていて、一つは『鉄血のオルフェンズ』、もう一つは『マクロスΔ(デルタ)』。どちらも主人公の役で、『二大ロボットアニメがやれたらすごいな』っていう期待感もありました。

結果的には、『鉄血のオルフェンズ』は僕、『マクロスΔ(デルタ)』は内田雄馬くんがやることになりましたが、初めての主役、しかも子供の頃から大好きなガンダムのテレビシリーズ、しかも1年間。それはすごく嬉しかったですね」

――実力で勝負してきたことが間違いなかった、ということが証明された瞬間ですよね。主役をやることに対する不安はなかったですか?

「いや、ありましたよ。第一話のアフレコのことは、今でも覚えています。

もちろんそれまでにアフレコの経験もあるし、制作会社マジックカプセルさんの座組での経験もあったし、何より10年間の下積みがある。大丈夫だろうと思って収録にのぞんだんですけど、収録中、ずっと頭痛が止まらなくて。後から周りの人に話を聞いたら、顔面蒼白だったみたいです。

でも、『ここで折れたら、あとがない』という気持ちでなんとか、がむしゃらにやり切ったという感じでした」

――不安が体調にまで表れている、という感じだったんですね。

「あと、あれは一期が終わってからの打ち上げだったと思うんですが、長井龍雪監督はじめ、音響監督やスタッフ、ほかのキャストと一緒に話している中で、脚本の岡田麿里さんが第一話の収録を聞いて『正直、大丈夫かなって思いました』という話をされてて。

録りはじめは、まだキャラの個性も確立していなかったので、そういうのを見ていて岡田麿里さんは不安に感じられたと、後から知りました。でも一期で25本を録り終えて、二期に入るときには『もう全然そんなことを感じさせなくなった』とおっしゃっていたので、一期を録っていく中でだんだんと三日月に馴染んでいったのは、良かったのかなって思います」

――「鉄血のオルフェンズ」を録る中で、声優としての仕事の向き合い方など、何かつかんだものはありましたか?

「今でも覚えているんですけど、すごく刺激になったのは、"おやっさん"こと雪之丞を演じる、斧アツシさんとの会話シーンですね。

アフレコ前にはかならずテストをするんですが、テストを終え、いざ本番を録ろうというとき、直前になって僕が『こっちのほうが面白いんじゃないか』『ずっと一緒にいた仲間だし、この言い方のほうが関係性を出せるんじゃないか』という気持ちになって、テストとは違う言い方を本番でしたんですよね。

そしたら、斧さんは本番でそれを聞いて、またテストとは違う感じで返事をしてくれて。それが僕にとってはめちゃくちゃ嬉しくて、声優としてキャラ同士で『会話できた』と初めて感じた瞬間だったんです」

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――すごい......!プロだからできる、即興の対応だったんですね。

「そう、20歳からずっと声優をやってきて『あ、声優ってこういう仕事なんだ』って。お芝居といえども、『会話って相手がいないと成立しない』ということを改めてそこで感じました。

それ以降は、自分からもアプローチするし、相手からのアプローチに対しては自分なりの反応や返事をするし、ちゃんと相手の話を聞いた上で、芝居ができるようになってきたかなと思います」

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――面白いですね。いくらアフレコであっても、やっぱりライブなお芝居であるということに、改めて気づくというか。

「そうですね。それでいうと、これは他の作品だったのですが、大塚明夫さんと初めて現場でお仕事をさせていただいたときも、すごく刺激を受けました。

明夫さんが隣に立って、僕との掛け合いのシーン。二人とも同じ方向を向いているんですが、明らかに僕に対する声の"圧"があるんですよ。感情をめちゃくちゃ僕に向けてくれている、という感覚があって。『こんなに話しかけてくれる人がいるんだ』と思ったのを覚えています。

もちろん声優になる前からずっと憧れの方でしたけど、仕事でそういう感覚を教えてくれたのは、大塚明夫さんだな、と思います」

――その時の経験が、今の河西さんのお芝居にも活きてくるわけですね。

「できているかどうかは別として、そうありたいなとは思いますよね。

やっぱりコロナ禍になって、同じシーンにいる人でも別の時間帯に呼んで、レコーディングして、という機会が増えました。今はだいぶ元に戻ってきましたけど、数年間、切り抜きのレコーディングが結構多かったんですよ。

会話シーンの相手が、すでに録っている場合はなんとかできるんですが、相手の返事もなしに自分だけ先に収録しなければいけないこともある。監督とすり合わせて『多分、相手はこう返すだろうから、先回りしてこう録っておこう』みたいな。

でも、やっぱり本音は『会話劇だよね』という気持ちなんですよ。コロナ禍がようやく終わってきて『会話が楽しいな』というのは、声優のみなさん感じているんじゃないでしょうか」

■2024年春クールの作品「WIND BREAKER」「烏は主を選ばない」

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――「WIND BREAKER」では、柘浦大河役でご出演されています。キャラの魅力を教えてください。

「柘浦君は、まっすぐド直球なキャラクターでトレーニングやプロテインが大好き。周囲と接するときは元気で明るく、関西弁で相手のことを立てつつも自分の芯も持っている男の子です。

不良漫画で喧嘩っぱやいキャラが多く登場する作品の中でも、人の輪を大事にしているタイプ。ムードメーカーとまではいかないですけど、周りに慕われる感じがあって、そこが魅力的だなぁと思います」

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――「烏は主を選ばない」では、敦房役としてご出演されています。こちらのキャラの魅力も教えていただけますか。

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「時代物で漢字の読み方に関しては収録のときに苦労が絶えなかったですが、ストーリーが抜群に面白くて、毎話収録が楽しみな作品でしたね。

敦房は、自分を認めてくれた長束に対する絶対的な信頼と、忠誠心を誓っている、義に厚い人物です。それゆえに視野が狭かったり、また暴走しがちな部分だったりもあるんですが、根底にはまっすぐな彼の人間性というのが現れているので、そこをぜひ見ていただけたらなと思います」

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取材・文/郡司 しう 撮影/小川 伸晃

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