声優・河西健吾インタビュー#1「『下手なんだから自分に合わないことはやめなさい』僕の"個性"を武器に変えた恩師の言葉」
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2024.05.08
「鬼滅の刃」時透無一郎役をはじめ、「3月のライオン」桐島零役、「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」三日月・オーガス役、「Dr.STONE」あさぎりゲン役の好演、そして「ヒプノシスマイク」ではオオサカ・ディビジョンのMCグループ「どついたれ本舗」の躑躅森盧笙役としてラップまで披露する、声優・河西健吾さん。
一見飄々としていて、どんな役でもクールにこなしているようにも見えますが、下積み時代には挫折も経験、「実力以外のことも評価される世界だからこそ、自分は実力で勝ち取りたかった」と実は奥底に声優としての熱い思いも秘めています。
このインタビューでは全3回にわたって、その人となりをひもときながら、声優・河西健吾の原点と信念に迫ります。
■昔も今も、自分の部屋が大好きなインドア派

――あの......私、「鉄血のオルフェンズ」が大好きでして......。ガンプラはほとんど持っていないんですが、唯一、バルバトスルプスレクスのMGも持っているくらい......。
「そうなんですね(笑)。ありがとうございます」
――今回のインタビューでは、オルフェンズのお話なんかも聞けると嬉しいなぁと勝手に考えているのでよろしくお願いいたします!さっそくインタビューに入りますが、河西さんの幼少期はどんなお子さんだったんでしょうか?
「実家が喫茶店を営業していて、両親とも働いている家庭だったんですね。学校から帰ってくる時間には父も母も仕事で、一人っ子なものですからすぐに自分の部屋に向かって、部屋でマンガを読んだり、ゲームをしたり、というふうな過ごし方をすることが多かったです。
もちろん友達と約束があれば、外でサッカーをして遊んだり、友達の家に遊びに行ったり、ということもありましたが、比率でいえば自分の部屋で遊ぶことのほうが多かったですね。わりと、インドア派な幼少期だったと思います」
――ご実家が喫茶店だったんですね!なんか、喫茶店ならではの思い出とかありそうですね。
「1階が喫茶店で、2階が僕の部屋兼住居スペースになっている2階建てだったので。喫茶店の営業が終わると、喫茶店のフロアで夕飯食べて、そしたらみんなで2階に上がって、親子三人で川の字で寝て......みたいな生活でした。
あとは、モーニングの営業もしていたので朝が早いんですよ。で、僕が住んでた東大阪市のエリアは、結構 町工場が多いエリアなんですね。朝、僕が起きて喫茶店フロアに行くと、作業着を着たおじさんが『お、いま起きてきたのか』ってコーヒーとトースト食べながら話しかけてくれる、みたいな感じでした」
――なんだか、ほのぼのとした光景が目に浮かびますね。
「町工場が多い地域にぽつんとあるような喫茶店だったので、顔見知りばっかりで、僕のことも小さい頃から知ってくれているお客さんが多かったんです。
ケーキとかを置いているような感じではなく、もう『コーヒー、トースト、ゆで卵!』みたいな硬派目な純喫茶だったんですが、常連さんには結構愛されていたんじゃないかな」
――で、小さい頃はわりと自分の部屋が好きなタイプだったと。
「そうですね。それは今もあまり変わっていないような気がします」
――当時は、どんなアニメが好きだったんですか?
「いろいろな作品が好きでしたが、ちょうどご飯どきに放映していて覚えているのは『ドラゴンボール』ですね。あとアニメではないんですが、『金曜ロードショー』や、土曜日の『ゴールデン洋画劇場』も家族で食卓を囲んでよく観ていました。
とくにSFやファンタジーが好きで、『ネバーエンディングストーリー』『E.T.』、あと『グレムリン』なんかも、それで観たと思います」
――「グレムリン」!ギズモですよね、懐かしい!
■声優を志したきっかけ

――「声優という職業がある」というのは結構 早くからご存知だったんですか?
「いや、アニメは好きで観ていたんですが、声優を意識して観たことはほとんどなかったと思います。初めて声優という職業を意識したのが、中学生の頃。新聞の片隅に、小さく『劇団員、声優募集』と書かれている広告を見かけたんです。
当時の僕は、声優っていっても『声を使って何かをする人』くらいのイメージしかなかったんですが、漠然と『楽しそう』だとは思ってその広告に応募したりはしてましたね」
――その段階では、まだ将来の仕事として、というわけではなかったんですよね?
「そうですね。漠然と、『声を使ってキャラクターに何か吹き込むの楽しそう!』ぐらいの感覚だったと思います」
――いつ頃から、『声優になりたい』という気持ちが大きくなってきたんですか?
「それはもう、高校卒業の直前くらいです。進路を決める時期に差し掛かって、大学に行ってどこかに就職するのか、実家の家業を継ぐのか、という二つの道を考えたときに、どっちもあんまりしっくり来なくて。そのときに、声優という職業が選択肢にぽっと浮かんできた。
なんとなく小さい頃から好きだったアニメ、ゲーム、マンガのエンターテインメントの世界に飛び込んで、関われたら楽しそうだな、という思いはあったんです。でも、ゲームを作るならパソコンに詳しくないといけない。マンガを描くなら絵が得意じゃなきゃいけない。小説を書くなら文章が......。
ということで、その中で自分にできそうなものが、高校生のときにはあまり想像ができなかった。唯一その中で、声優ならできるかもしれない、と思ったのがきっかけかもしれません」
――当時から声に、自信があったんですか?
「いやいや、そういう訳ではなくて、『だって、みんな喋ってるじゃん!なら自分でもできるかも』っていう、本当に単純な気持ちでした(笑)。
そこから、どうやったら声優になれるのかを自分で調べて、調べているうちに『やっぱり自分は、この道に進みたいんだな』という気持ちが強くなってきて、専門学校に入る決断をしたのが、声優を志した道の始まりでした」
■「僕は赤じゃなくて、青なんだ」

――当時、専門学校時代のことで「今の仕事に活きているな」と感じるようなものはありますか?
「僕が通っていたアミューズメントメディア総合学院は、声優以外にもいろいろな学科がある学校だったんですが、その中で『学科同士がコラボする』みたいな時期があったんですね。
その中に、ゲーム学科の生徒が作った作品に、声優学科の生徒が声を当てる、というコラボがあって、僕も学内でオーディションを受けさせていただいたんです」
――素晴らしい取り組みですね!
「で、その作品には赤をテーマカラーにした熱血キャラクターがいて、僕は『機動武闘伝Gガンダム』を観ていて関智一さんにすごく憧れていたので、当然そのキャラを演じたくてオーディションを受けたんですよ。
そしたら、『ごめんなさい、こっちの青色のクールなキャラクターのオーディションも、受けてみてもらえますか?』と逆に提案されて、そちらを受けたら、青色のほうに受かってしまったんです(笑)」
――やりたかったキャラじゃないんですね(笑)。
「そう(笑)。でもそのときに、『僕は、赤じゃなくて青なんだ』というのが漠然とわかった気がしたんですよね。もちろん今後の声優人生を、青色クールに全振りするわけじゃないけど、声質はそっちが合うんだ、と」
――確かに、自分で思い浮かべるイメージと、周囲の人が思い浮かべるイメージって違いがありますよね。その客観的なイメージに気づけるって、実はすごく大事なことのような気がします。
「そうなんです。専門学校生の段階で、そのことに気づかせてもらったのはすごくありがたかったなと思います」
■メンタルの強さは、関西人の血!?

――ちなみに、当時はバイトなどもされていたんですか?
「高校時代には、スーパーでレジや品出しのバイトをしていましたが、専門学校になってからは、やっぱり友達と遊ぶためのお金も必要ですし、授業が夕方ということもあって、昼間はアルバイトをしていました。
当時、専門学校で同じクラスの仲の良かった友達が『サーティワン アイスクリーム』でアルバイトをしていたんですよ。その話を聞いているうちに、自分も働いてみたいと思って、紹介してもらって同じお店で働きましたね。あとは、ゲームセンターの店員とかもやりましたけど、結局サーティワンが一番長く続いたと思います」
――甘いものが好きだったとか?
「アイスクリームも大好きでしたけど、やっぱり第一は友達がいたから、というのが大きかったですね(笑)」
――アルバイトを通じての学んだことって、どんなことでしたか?
「いろいろな接客業を経験するなかで、店員がお客様と『対等な立場でいたほうがいいな』というのは感じました。
やっぱり店員さんの立場に立ってみると、『なんでも、お客様の言うことがすべて正しいのか』というと、必ずしもそうでないことがある。もちろんお店側に落ち度があれば謝るべきですが、客側の都合や落ち度に対してまで、お店側がへりくだる必要はないと思うんです。
いろいろな考え方があるとは思いますが、後々SNSなどでも『お店もお客様を選んでいい』という経営者の方々の考えを見かけたりして、僕はそれにすごく共感しました。当時から、『うちの店には合わない』と思う方には毅然とした態度で接していたので。多分、上司やマネージャーからは煙たがられてたでしょうが(笑)」
――(笑)。でも私も学生時代、接客業でアルバイトをしていたのでよくわかります。『あ、理不尽なお客様っているんだ』って。
「そうそう(笑)。例えば、ゲームセンターでバイトをしてたときの話で、やっぱり転売ヤーの方がたくさんいらっしゃるんですよ。お店側もそれに備えて、クレーンゲームで人気の景品があると『一日にお一人様一つまで』と注意書きを出しておくんですが、同じ方が朝来て、また夕方来て......ということがありました。
声をかけて注意したら『お金を入れる前に言えよ』と逆ギレされて。それでも毅然と対応していたら、いきなり筐体をバーンって大きく叩いて、脅しをかけてきた。仕方がないので上の人を呼んで、結果的にそのお客様は出禁になった、というようなこともありました」
――河西さん、結構メンタル強いですね。それって元々なんですか?
「いや、昔はそんなことなくて、小さい頃は大人しいタイプだったと思いますよ。やっぱり高校時代にアルバイトをし始めて、友達や親、先生以外の人と接する経験をしたから、少しずつ意識が変わっていったんだと思います。
あと多分、『舐められたら終わり』という関西人の血がそうさせたのかもしれないですね(笑)。その気持ちは、その後、声優を目指す上でもすごく武器になった部分のような気がします」
■「鬼滅の刃 柱稽古編」がいよいよ放映!時透 無一郎の魅力と注目ポイント

(C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
――2023年に放映された「鬼滅の刃 刀鍛冶の里編」では、河西さん演じる時透無一郎の過去が明かされましたね。続編「鬼滅の刃 柱稽古編」での時透無一郎の見どころを教えてください。
「原作を読んだり、『刀鍛冶の里編』を観てくれた方は、どういういきさつがあって彼が最年少の柱になったのか、というのは分かってくれていると思います。
壮絶な過去があったからこそ、無一郎はあれだけの努力を重ねられたし、それが今の無一郎を形作っているわけですよね。それを思って観ると、今編での無一郎というキャラクターの見え方もまた、変わってくるのかなと思います。
『柱稽古編』では、無一郎が過去の記憶を取り戻しているので、炭治郎との接し方に変化があったり、あえて炭治郎以外の隊士には辛辣に当たっていたり、これまでとのギャップにも注目してもらえたらなと思います」
取材・文/郡司 しう 撮影/小川 伸晃




