声優・小林裕介インタビュー#3「『諦める理由にも、頑張れる理由にもなった』良き戦友・松岡禎丞の存在と、常に限界突破を狙う挑戦心」

声優・小林裕介インタビュー#3「『諦める理由にも、頑張れる理由にもなった』良き戦友・松岡禎丞の存在と、常に限界突破を狙う挑戦心」

「Re:ゼロから始める異世界生活」のナツキ・スバル役や、「Dr.STONE」の石神千空役、「アルスラーン戦記」のアルスラーン役、「炎炎ノ消防隊」のアーサー・ボイル役など、数々の人気作品で主人公や人気キャラクターを演じてきた声優・小林裕介さん。今でこそキャラの個性を的確にとらえた演技力、豊かな感情表現で幅広く活躍する小林さんですが、下積み時代にはなかなかオーディションに受からず苦労も多かったと語ります。そんな小林さんの転換点になったのは、自身がどん底だったときにテレビで見かけた同世代の活躍でした。このインタビューでは全3回にわたり、小林裕介さんの出演作品に対する思いや、キャラクターへの向き合い方をひもときながら、その人となりに迫ります。

■石の上にも3年、舞台の上にも4年

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――前回のインタビューでは、就職した会社を辞め、声優一本に絞ったというところまでお話をお聞きしました。今回は、下積み時代のお話からお聞きできればと思います。

「下積み時代は......つらいことしかなかったな。事務所に入ってから声優としてデビューできるまでが大体、4年間くらい。そのあいだ仕事はほとんどゼロで、オーディションは年に1~2回あるかないか、という程度でした。活動していたことといえば、事務所が毎年開催する舞台と、新人がレッスンの一環として参加する『アトリエ公演』と呼ばれる舞台くらい。だから新人だと年2回は、舞台公演をやらなければいけない。でも僕、舞台にはあまりノリ気じゃなかったんです。そもそも声優に憧れた理由の一つに『顔出しをしなくてもいい』というのがあったので、人に見られるのは嫌でしたし、コメディの要素が混ざった演劇が多かったので『なんで人に見られて、笑われなければいけないんだろう』と。所属して最初の1~2年は、そんなストレスを抱えて過ごしていました」

――舞台を踏むごとに慣れていく感じはしなかったですか?

「社長の方針として、『舞台の芝居ができないのに、マイク前で声だけの芝居なんてできるはずがない』という話は聞いていたので、その意味というのは理解できました。ただ、それはそれとして嫌だという気持ちが消えるわけではなかったですね。でもやらなきゃいけないから、割り切ってやるしかない。これが自分の糧になって、声優としての結果に結びつくと信じて、がむしゃらにやっていましたね。一方で、声優の仕事は一向に入らないので、正直なところ、少しやけくそになっている部分もありました」

――いまになって「あの時舞台に立っておいてよかったな?」と思うこともありますか?

「それはもちろん、お芝居を学ぶ上では、やっぱり舞台の経験は大きかったと思います。例えば、声優のお仕事の一つであるドラマCDや朗読劇。アニメのアフレコの場合、セリフをどの長さで言うかはアニメーションに合わせなければいけないので、尺がことこまかに決まっています。だけど、ドラマCDや朗読劇って画がないから、セリフの尺や間の取り方は全部、役者次第なんです。それを役者同士の肌感覚でお芝居として組み立てていくわけですけど、その役者同士の空気感の感じ取り方は、舞台経験が生きているなというのはひしひしと感じます。あと、元々歌が好きでミュージカルも好きだったので、その後、外部でミュージカル作品に参加したりしたこともありました。ミュージカルに出演したことで歌うことにも自信がついたんですけど、元を辿れば、ミュージカルに出演できたのも、新人の頃に舞台を踏んできたことがベースにあるからなんですよね」

――舞台経験は、声優としてのいろいろな活動のベースになる部分なんですね。

「最近だと、バラエティへの出演もそうですよ。仮に『人に見られる』という経験をせずにバラエティに出演していたら、もっとメンタルを削られていたと思います。だけど、舞台で人に見られたり笑われたりという経験をしていたおかげで、ある程度耐性が付いていたとは思います。とはいえ、いまだ顔出しの仕事には積極的になれません。きっとこれから一生向き合わなきゃいけない一番の課題かもしれません(笑)」

■彼がいたから頑張れた 必死で追いかけたライバルの存在

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――小林さんにとっての転機、というと?

「声優としての生き方、仕事への向き合い方が変わったという意味でいうと、事務所に所属して3年目の頃。先ほど『オーディションが年1~2回、あるかないか』というお話をしましたが、初めて最終選考まで残ったことがありました。『ここで決まれば、きっと変わるよ』。マネージャーからも、そんなふうに言ってもらって気合いを入れてのぞんだのですが、結局そのときのオーディションは落選。で、その役に受かったのが松岡禎丞くんでした。そのとき、『松岡くんと小林は同じ世代だし、タイプが少し似てるから、もしかしたらこれから難しくなるかも』というような話をマネージャーから聞いて。当時の僕にとっては、それが死刑宣告のように聞こえて、だんだんと自分の気持ちがやさぐれていってしまいました」

――1回のオーディションで...!?

「そうです。その1回が、声優としての道を大きく変えてしまうこともあります。僕は、大学卒業して就職してからのチャレンジだったこともあって、3年目とはいえ、年齢的にももう30歳が見えてくる頃。『声優の道をあきらめる』という選択もちらつくし、好きだったアニメが観られなくなるくらいに追い詰められていました。そんな時期が1年ほど続いた頃に、ふと『今はどんなアニメがやっているんだろう』と気になって調べてみたら、あるアニメのかっこいいシーンが目に留まったんです。アニメーションもかっこいいし、お芝居もすごい。タイトルを見たら、『ソードアート・オンライン』という作品で、声優を見てみたらなんと主役が松岡禎丞くんでした」

――それは...!当時、やさぐれていた小林さんからすると、いろいろな感情が湧いてきそうです。

「本当そのとおりで、かつて最終選考で役を競い合ったわけですから、その時点では実力的にそこまで差はないと思っていたし、『自分が選ばれなかったのは運がなかったから』というふうに考えたりして気持ちがふさいでいたわけです。でも1年経って彼のお芝居を知らずに観て、僕は手放しで『なんてかっこいいんだ!』と思わされてしまった。それって『彼と僕のお芝居のレベルが全然違う』という現実を突きつけられたのと同じだったんです」

――たった1年で、そこまで差が開いてしまった、と。

「でも、そこで初めて『自分の演技には何が足りないか』ということに向き合う気持ちが湧いてきました。僕にだってまだまだ伸びしろはあるはずだから、舞台を踏むなりしてとにかく演技力を磨こう、と。ちょうどそのタイミングで僕のマネージャーも変わって、その方が元々役者をやっていた方だったので、ボイスサンプルを送って、『僕の演技のダメなところを全部言ってください』と伝えてみたんです。そしたら、マネージャーから『声が変わっているだけで、お芝居が全部同じに聴こえる』という鋭い指摘が飛んできて......」

――結構な返しですね...!

「自分ではちゃんとお芝居ができている気でいたので、マネージャーから客観的に指摘してもらったことで、ダメなところが浮き彫りになった感覚がありました。そこから、試行錯誤して自分なりにアプローチのバリエーションを増やして、『あんまり変わってない』とか、何度もダメ出しをもらいながら少しずつ、自分にできることを増やしていきました。自分一人だけではなく、そのマネージャーと二人三脚でタッグを組んでやっている感覚もありましたし、その経験はかなり自分の成長においては大きかったと思います。それが今日、あそこ(スタジオの一角を指差しながら)で話を聞いているマネージャーなんですが(笑)」

――なんと......(笑)。その後、松岡さんとは「Re:ゼロ」で共演されていますが、そのときはどんな心境だったんでしょうか?

「松岡くんは声優としてずっと先のほうにいて、彼が主人公で僕がモブ、彼がレギュラーで僕が準レギュラーといった関係性での出会いがほとんどでした。『Re:ゼロ』で共演したときは、初めて『自分もここまで来れたんだ』っていう気持ちになって感慨深いものがありました。僕にとっては声優を諦めかけた理由も、主役を張れるまで頑張れた理由も彼ですし、ずっと彼を追いかけてやってきたので、やっと同じ土俵で演技ができる、と」

――そんな思いで「Re:ゼロ」にのぞんでいたんですね。

「でも、アニメを見ていたらわかると思うんですが、彼のペテルギウスの演技がすごいじゃないですか(笑)。それを現場で見ていて『あぁ、全部松岡くんが持っていってしまう!』という恐怖感を抱き、それと同時に『自分も負けていられない』という気持ちも湧いてきたんです。『俺だってできる』『俺の芝居で驚かせたい』そんな思いでスバルの演技にのぞむようになりました。だから、ペテルギウスが松岡くんじゃなかったら、それ以降のスバルは引き出されてなかったと思います。『Re:ゼロ』のアフレコを通して、最終的にはお互いの芝居を見て称え合えるような仲になったので、松岡くんと僕を繋いでくれた作品という意味でも、思い入れが深い作品になりました」

■可能性を広げるチャンスを逃さない

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――小林さんが役作りで心がけていることはありますか?

「例えば、『Re:ゼロ』のスバルでいえば、初めて彼を見たときに『こういう声が出てほしい』という自分なりの理想を思い描くんです。そこから彼の人間性を考慮して少しずつ声を合わせていく。綺麗よりもガラガラっとした声っぽいなとか、お調子者で少し鼻にかける感じかなとか。セリフ回しも見ると、相手をちょっとイラッとさせるような言葉も多いから、『〇〇しようぜ!』というセリフも、『〇〇しようぜぇっ!』って言い方にしたほうが、なんかムカつくかも、とか(笑)」

――結構、ロジカルに考えていってキャラ作りをしているんですね。

「アフレコに入る前は、そういうふうに理詰めでキャラクターをどんどん突き詰めていきます。でも、ベースになる部分は理屈だけど、演技となるとわりと感覚的だと思います。その状態で台本を読んでみて、例えば人との距離感の取り方、驚いたときでも案外冷静さも保っているんだなとか、感覚的に演技をしてみて後々気づくようなこともあります。とくに掛け合いのシーンだと、あんまり事前にガチガチに固めすぎるとキャラクターが生きてこないので、キャラぶれしないようにベースは持ちつつ、感覚的な部分も大切にしていくタイプだと思います」

――あんまりやってみたことがなくて、今後やってみたいキャラクターのタイプはありますか?

「それはもう悪役ですね、誰からも共感されないような。これまで演じてきた悪役は、仲間になったり手助けをしてくれたり、最終的に主人公サイドにいるパターンのキャラクターが多かったんです。そうじゃなくて、『こんなヤツ、やられて当然だよね』と誰もが思うような完全な悪役を演じてみたいです。ただただ感情を逆撫でするだけのような悪役ではなく、本人なりの悪の美学、信念を持っている悪役であれば、なお良いですね」

――ちなみに、その理由は?

「うーん......多分、自分の中にレパートリーとしてないからなんだと思います。結構、ないものねだりをしてしまう性格なので、ほかの声優さんの低音ボイスを聴いて、『俺もこんな声が出したいな』と思ったりしてしまうタイプなんですよ。だから、自分の経験の中にない役を演じることで、自分の可能性を広げたいという気持ちがあるんです。それに、仕事を任せてくれるということは、制作側に『あの人ならきっとやれる』という期待もあると思っているんです。そんな機会をもっと増やして、どんどん自分にできないことに挑戦していきたいと思っています」

■挑戦に臆病にならないための合言葉

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――小林さんにとっての座右の銘と、それを思うに至った背景を教えてください。

「『失敗しても死にはしない』ですね。そう思うようになった背景は、大学時代に所属していた空手部ですね。週5回稽古があるような、わりとスパルタ系の部活だったんですが、空手には階級制がなくて、試合となると自分よりも体格の大きな選手とも戦わなければいけないんです。僕は身長も低いし小柄なほうなので、大きな選手と戦うたびに『今日は歯が折られるんじゃないか』『骨折するんじゃないか』という恐怖があって。それでもなんとか4年間、空手を続けていたんですが、終わってみたら大きなケガもなく、無事に卒業までやり切ることができた」

――ちょっと物々しい話でしたが、安心しました(笑)。

「そのときに『人間って、そう簡単には死なないんだな』ってわりと本気で思ったんですよね(笑)。声優をするようになってからも、もちろんアフレコの現場に最初に行ったときは緊張しましたけど、『ここでセリフを噛んだとしても、それで命の危機にさらされるわけではないよな』という謎のスケールで考えちゃうんです。そういう思考もあって、人よりも緊張しないタイプだし、緊張によって自分の実力が出せないということがないので、それは空手をやっていて、そういう心構えがあるからなのかなと思ったりします。だからこそ、いろいろなことを思いっきりやってみようという自分の起爆剤のようなものにもなっています」

――「失敗したって死ぬわけじゃない」というのが、臆せず挑戦するための合言葉でもあるんですね。「演じたことない悪役を演じてみたい」という気持ちも、そういう姿勢から生まれるのかなと思いました。

「そうかもしれないですね。実際、この気持ちでいることでフットワークが軽く、いろいろなことに挑戦できていると思いますし、仕事だけじゃなく人生全般に役立つ座右の銘だとは思っています」

――今後は、どんな声優でありたいですか?

「一番は、活躍し続けられる声優ですね。声優になった人全員が、ずっと続けていける職業ではないし、僕たちは演じる役をいただく立場なので、何をきっかけに声がかからなくなるのかなんてわからない。お芝居を磨き続けるのは最低限ですけど、何度も仕事したいと思ってもらうためには、僕だけがもつ自分らしさというのも必要だと思います。『小林ならこういう芝居をしてくれる』『こういう役をやらせても面白そうだ』、あるいはイベントやラジオなどの稼働も含めて安心して任せられると思ってもらえるように、限界突破を狙っていきたいですね」

■「Paradox Live」cozmez・矢戸乃上 珂波汰に対する思い

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――「Paradox Live」では、「cozmez」という双子ユニットの兄・矢戸乃上 珂波汰(やとのかみ かなた)としてラップも披露しています。珂波汰については、どんな思いで見ていますか?

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「最初は彼がスラム街で育ったということぐらいしか知りませんでした。だけど楽曲が出るにつれて、彼らの両親の事や、育ってきた環境が如何に過酷だったかがだんだんとわかってきて。一方で、そういう過去があるからこそ、周りが珂波汰のことを認めて気にかけてくれる、いまの環境は彼にとってとても恵まれたことだと思うんですね。愛情を受けて育って来なかったがゆえに、そのやさしさを突っぱねてしまう性格ではあるんですが、少しずつそういう態度もやわらいでいる。彼自身が、自分と他人にちゃんと向き合えるようになってきた。それがここ数年、いい形でcozmezの楽曲にも反映されてきている気がします。僕自身、彼のことを本当に理解できているかどうか自信はないけど、一足飛びではなくゆっくりと成長させてあげたいな、と思いながら演じています」

――大きな成長を描かない。

「むしろ『変わってない』と思われるぐらいがちょうどいいのかなって。でも、僕としてはちゃんと変えていくつもりで演じてはいるので、そのくらい不器用な変化で成長させてあげたいという気持ちで、彼のことは考えています」

――珂波汰としてパフォーマンスするときには、どんな気持ちでのぞんでいますか?

「僕自身、これまでヒップホップを聴かずに育ってきてしまって、初めてスタジオに入ったとき、レコーディングに4~5時間かかってしまい『ヒップホップって怖い!』と感じたのを覚えています。ヒップホップだけでも難しいのに、そこに珂波汰というキャラクターも載せて音楽として表現しなければいけないので、そこは今でも試行錯誤しながら見つけていっている感覚はありますね。なかなかその塩梅を自分で決めるのは難しいですね」

――ライブでのパフォーマンスは、どうのぞんでいるんですか?

「ライブだと、もうそういうのは考えず珂波汰としてのアレンジを押し出すイメージで歌っています。振り付けも、とくに決められていないことが多くて『自由にやってください』という感じなんですが、一緒に歌ってくれる那由汰役の豊永(利行)くんがアドリブですごくいろいろな動きを表現してくれる人なので、そのインスピレーションで色々とパフォーマンスの幅が広がっていくのは、自分でもやっていて楽しいです。その分、集中していないとすぐに歌詞がどこかに持っていかれるので、動きも歌も含めて集中力はめちゃくちゃ必要なんですが......」

■「炎炎ノ消防隊 参ノ章」放映決定 アーサー・ボイルを演じるにあたって

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――「炎炎ノ消防隊」では、アーサー・ボイル役を務められています。アーサーは、どんな思いをもって演じていますか?

「僕、じつはデビューしたときからギャグに対する苦手意識が自分の中にあるんです。それは家庭が厳しくて、あまりお笑いに縁がなく育ってきたのも理由だと思うんですが、一般的な笑いのツボというのがあまりわからなくて、みんなが笑うシーンで『何が面白いんだろう?』というのをよく感じているんです。仕事でも、自分としては精一杯ギャグっぽくやってるつもりでも、『もっと面白くして』『ギャグっぽくやって』とか言われてしまって、『いや、やってるんですけど!』という経験もたびたびしていて。そんな中で、『滑ってなんぼ』というキャラクターのアーサーは、めちゃくちゃありがたいんですよ!みんなが『はい?』って首を傾げるくらいが正解で、無理に笑いを狙いにいかなくていいという安心感のおかげで楽しく演じることができています」

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――めちゃくちゃ面白いですね!(笑)それって自分で気づいたんですか?

「いや、僕が話したときになんか気まずい感じで終わるのを見ていた中井和哉さん(第8特殊消防隊の大隊長・秋樽桜備役)が『なんか、アーサーっぽいよね』『その感じ、俺は好きだよ!』って言ってくれて(笑)。それで、『なるほど!じゃあこれで行こう!』と思って、どんなに場が微妙な空気に包まれても、『あ、俺いま自分の仕事まっとうしました』という気持ちになれています」

――アニメ見ていると、アーサーが面白くてふつうに笑っちゃいますけどね(笑)。

「そこで調子に乗って狙いに行くと、多分面白くならないんだろうと思います(笑)。ギャグの話ばかりしましたけど、アーサー自信はとても強いし、内に秘めた消防官としての思いもかなり熱いモノを持っているので、そういうシーンとのメリハリがあるのは演じていてすごく楽しかったです。視聴者からも、そういうギャップに魅力を感じてくれていた方の声はわりと多く聞こえてきていました」

――ぱっと見は、「少年マンガにいそう」だと思うんですけど、絶妙にいそうでいない
ですよね。

「そうですね。主人公の相棒的な立ち位置って、ふつう相棒のほうがしっかりしているパターンが多いですけど、相棒のほうが抜けてるってめずらしいですよね(笑)」

――ちなみに、アフレコで記憶に残っている出来事や思い出などはありますか?

「たしか、マキ役で入っていた上条沙恵子さんが『炎炎ノ消防隊 壱ノ章』がレギュラーとしては初めての作品で、すごく緊張していたんです。だけど、蓋を開けてみたらお芝居から緊張なんかまったく感じさせないし、僕は上条さんの演技がすごく好きだったんですよね。ストレートに感情を表現する新鮮さがすごくて、自然と自分の新人の頃を思い出させてくれて、なんとなく自分の気持ちにもスイッチが入りました。ほかの先輩方も含めてベテランと若手がいいバランスで混ざり合って、それがお芝居にいい具合に反映されていく現場だなというのは、アフレコのたびに感じていましたね」

――現場での空気感も良さそうですね。

「仲良くなるまでは時間がかかりましたけどね。そうそう。最初は、なぜか制作陣から『梶原くんが小林さんと仲良くなりたいと言っていたのでよろしくお願いします』という話を聞かされていたんです(笑)。当時、岳人くん、上条さんは20代で一番年代が近いのが僕。先輩とはいえ、話しかけるのは緊張しましたし、いつ、どうやって話しかけようか常にうかがっていました(笑)。だんだんと打ち解けていって、ご飯も一緒に行ったり、遊びに行ったり。次のシーズンの放映が発表されましたが、二人に会うのがすごく久しぶりなので、どんな変化をしているのか、いまから会うのを楽しみにしています」

――ありがとうございます!最後に、「炎炎ノ消防隊」の作品の魅力を教えてください。

「この作品は、ジャンルでいえば『ダークファンタシー』にあたると思うんです。人体発火現象で人がどんどん燃えてしまったり、森羅やアーサーたちが何と戦っているのかがはっきりとしなかったり、物語の中に秘められた謎がたくさんあって。物語の中に、謎が明らかになっていかないむずがゆさが終始まとわりついてくるし、だからこそ気になって続きを観てしまうという魅力もある。そんな、そこはかとなくほの暗い、でも暗すぎないトーンが、僕はめちゃくちゃ好きです。『炎炎ノ消防隊 参ノ章』は2025年4月~、2026年1月~と、分割して2クールで放映予定でまだまだ時間があるので、気になる方はぜひ壱ノ章からチェックしてみてください」

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取材・文/郡司 しう 撮影/小川 伸晃

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