イ・ビョンホン、チョ・ジョンソクらが熱演!「大統領暗殺裁判」から「ソウルの春」まで韓国サスペンス映画5選でたどる現代史
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2026.10.10
『大統領暗殺裁判 16日間の真実』(C) 2024 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & PAPAS FILM & OSCAR10STUDIO. All Rights Reserved.
韓国サスペンス映画といえば、実際に起きた出来事がベースになった作品が少なくない。特に1970〜80年代の軍事政権と民主化運動は激動の現代史としてたびたび描かれてきた。
ウ・ミンホ監督の『KCIA 南山の部長たち』(2020)と、チュ・チャンミン監督の『大統領暗殺裁判 16日間の真実』(2024)は1979年の朴正煕(パク・チョンヒ)大統領暗殺事件の前後を描いている。
■国家を揺るがした凶弾の裏側『KCIA 南山の部長たち』

イ・ビョンホン
『KCIA 南山の部長たち』(C) 2020 SHOWBOX, HIVE MEDIA CORP AND GEMSTONE PICTURES ALL RIGHTS RESERVED.
『KCIA 南山の部長たち』の主人公キム・ギュピョンは、朴正煕大統領を暗殺した金載圭(キム・ジェギュ)がモデルで、イ・ビョンホンが演じた。韓国では誰もが知る事件だが、映画では「なぜ暗殺に至ったのか」にスポットライトを当てた。
朴正煕は1961年のクーデターで実権を握り、1963年から1979年まで大統領を務めた。民主化運動を弾圧した「軍事独裁者」のイメージが強いが、韓国の経済発展を導いた指導者として高い評価も受けている。一方、金載圭は中央情報部(KCIA)の部長で、「部長」と言ってもKCIAのトップであり、大統領に次ぐ権力者だった。国家のナンバー2がナンバー1を撃った、世界を震撼させた事件だ。

『KCIA 南山の部長たち』(C) 2020 SHOWBOX, HIVE MEDIA CORP AND GEMSTONE PICTURES ALL RIGHTS RESERVED.
暗殺の理由は諸説あるが、一説には、「嫉妬」が背景にあったともいわれている。朴正煕大統領が大統領警護室長の車智澈(チャ・ジチョル)を寵愛し、その威光を笠に着て格下の車智澈が傲慢な態度を取り、金載圭のプライドが傷つけられた。大統領に尽くしてきた金載圭は裏切られた悔しさから、大統領と車智澈を射殺したというのだ。その内面の変化を名優イ・ビョンホンが繊細な演技で見せ、結果は分かっているにもかかわらず、最後まで緊張の途切れない名作となった。
■闇に葬られたもう一つの真実『大統領暗殺裁判 16日間の真実』

左からイ・ソンギュン、チョ・ジョンソク
『大統領暗殺裁判 16日間の真実』(C) 2024 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & PAPAS FILM & OSCAR10STUDIO. All Rights Reserved.
『大統領暗殺裁判 16日間の真実』は主に事件後を描いた作品だ。主人公は弁護士のチョン・インフ(チョ・ジョンソク)。金載圭が絞首刑となったのはよく知られているが、上官の命令に従ったがために事件に巻き込まれ、裁判にかけられた軍人もいたという事実は、この映画が公開されるまで一般的には知られていなかった。実在の人物はパク・フンジュだが、役名はパク・テジュ。2023年にこの世を去った俳優イ・ソンギュンが演じ、この映画が彼の遺作となった。

イ・ソンギュン
『大統領暗殺裁判 16日間の真実』(C) 2024 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & PAPAS FILM & OSCAR10STUDIO. All Rights Reserved.
チョン・インフは、パク・テジュの弁護を担当する。インフは、軍人として忠誠を誓い、上官の命令に無条件に従ったテジュの態度に心動かされ、何とか彼の命を守ろうと奔走する。重いテーマだが、チョ・ジョンソクの持ち前のコミカルな演技が光った。
朴正煕大統領による軍事独裁政権は暗殺によって一旦終止符が打たれたが、残念ながら、新たな軍事独裁政権が生まれつつあった。その中心人物は後に大統領となる全斗煥(チョン・ドゥファン)。全斗煥がモデルのチョン・サンドゥは暗殺事件の裁判を裏で操り、テジュを救おうとするインフを阻む。
■クーデターの息詰まる攻防『ソウルの春』

左からファン・ジョンミン、チョン・ウソン
『ソウルの春』(C) 2023 PLUS M ENTERTAINMENT AND HIVE MEDIA CORP, ALL RIGHTS RESERVED.
この裁判の延長線上で起きたのが、全斗煥が中心となって起こしたクーデター事件だ。観客数1300万人を超える大ヒットを記録したキム・ソンス監督の『ソウルの春』(2023)で描かれている。1979年12月12日に起きたため、韓国では「12・12軍事反乱」と呼ばれている。
全斗煥がモデルの保安司令官チョン・ドゥグァンをファン・ジョンミンが演じ、クーデターを食い止めようと奮闘する首都警備司令官イ・テシンをチョン・ウソンが演じた。イ・テシンのモデルとなった実在の人物はチャン・テワンだ。

『ソウルの春』(C) 2023 PLUS M ENTERTAINMENT AND HIVE MEDIA CORP, ALL RIGHTS RESERVED.
軍内部での攻防が電話一つ、命令一つで大きく反転し、手に汗握るスリリングな展開だった。クライマックスの光化門(こうかもん、韓:クァンファムン)での対決は実際にはなかった出来事だが、最後まで命がけで粘るイ・テシンの姿が感動を生んだ。
■民主化へのうねりと真実の探求『1987、ある闘いの真実』
このクーデターでのし上がった全斗煥は1980年、光州民主化運動を武力によって弾圧した後、大統領に就任する。当時は報道規制によって国内で光州の実態が知られていなかったが、海外の報道などをきっかけに徐々に国内でも知られるようになった。

キム・テリ
『1987、ある闘いの真実』(C)2017 CJ E&M CORPORATION, WOOJEUNG FILM ALL RIGHTS RESERVED
多くの市民の犠牲を隠した政権に対する怒りが膨らみ、民主化運動が最高潮に達した1987年の6月民主抗争は、チャン・ジュナン監督の『1987、ある闘いの真実』(2017)で描かれた。
ソウル大学の学生が警察の取り調べ中に死亡した事件から始まり、複数の主人公がリレーのようにバトンをつなぎながら、それが拷問死であったことを暴いていく。主要な登場人物の多くは実在の人物をモデルとしているが、紅一点のキム・テリが演じたヨニは特定のモデルがいない。当時の普通の大学生として描かれている。特に民主化運動に関心のなかったヨニは、あるビデオを見て衝撃を受ける。それは光州民主化運動の弾圧の様子だった。

左からユ・ヘジン、キム・テリ
『1987、ある闘いの真実』(C)2017 CJ E&M CORPORATION, WOOJEUNG FILM ALL RIGHTS RESERVED
かつてない大規模デモとなった6月民主抗争は、大統領直接選挙制を勝ち取った成功体験として記憶されている。
■権力の暴走に立ち向かう孤高の刑事『罪深き少年たち』
だが、長きにわたった軍事政権下での強引な捜査は、民主化後もしばらく続いた。

ソル・ギョング
「罪深き少年たち」(C) 2023 CJ ENM Co., Ltd., AURA PICTURES ALL RIGHTS RESERVED
チョン・ジヨン監督の『罪深き少年たち』(2022)は、実際に起きた冤罪事件をモチーフにしている。1999年、地方のスーパーで起きた強盗殺人事件で、少年3人が捕まる。主人公の刑事ファン・ジュンチョル(ソル・ギョング)は情報提供をきっかけに真犯人が別にいることを確信し、3人の無実を証明しようとするが、犯人をでっち上げた警察と検察が組織的に隠蔽し、ジュンチョルは左遷される。
服役後も「殺人犯」というレッテルを貼られ、普通に暮らすことすら困難な3人は再審を請求し、ジュンチョルが再び彼らを支える。紆余曲折を経て2016年に真犯人が過ちを認めて謝罪し、再審によって無罪を勝ち取った。再審無罪の決定的な証拠となったのが、犯行を再現する現場検証の映像だった。刑事に怒鳴られながら、犯行を再現させられる少年たちが映っていた。細かな部分を除き、大筋は実際の事件の通り描かれた。

左からユ・ジュンサン、ソル・ギョング
「罪深き少年たち」(C) 2023 CJ ENM Co., Ltd., AURA PICTURES ALL RIGHTS RESERVED
新たな証拠が見つかり、真犯人が現れたから良かったものの、ぬれ衣を着せられて人生を狂わされ、無実を晴らせないままの人たちもいるかもしれない。ジュンチョルのような組織に歯向かう刑事の尊さを実感した。
多くの犠牲者を生んだ軍事政権と、それを倒した民主化運動。韓国サスペンス映画は韓国現代史の教科書のように実際の事件が数珠つなぎになっている。
文/成川彩



