人気作家、伊坂幸太郎の名作の魅力をそのままに実写化!堺雅人ら主役級の役者陣の名演技に注目

人気作家、伊坂幸太郎の名作の魅力をそのままに実写化!堺雅人ら主役級の役者陣の名演技に注目

「重力ピエロ」「アヒルと鴨のコインロッカー」「グラスホッパー」「アイネクライネナハトムジーク」など多くの作品が映像化されている人気作家、伊坂幸太郎。そんな彼の作品の中でもトップクラスの人気を誇るのが「ゴールデンスランバー」だろう。

同作は2008年本屋大賞、第21回山本周五郎賞、「このミステリーがすごい!」2009年版1位に輝くなど、著者の人気を不動のものにした代表作で、多くの伏線や魅力的な登場人物など著者の特長がふんだんに盛り込まれた名作だ。

仙台市で首相の凱旋パレードが行われる中、青柳雅春は大学時代の親友・森田森吾との待ち合わせ場所に急いでいた。数年ぶりに再会を懐かしむ青柳だったが、どこか様子のおかしい森田を訝(いぶか)しんでいると、森田は青柳に「お前、オズワルドにされるぞ」と告げる(※オズワルドはケネディ大統領暗殺の実行犯とされている人物)。その直後、背後でパレード中の首相が、どこからともなく飛んできたラジコンヘリの爆発により暗殺される。青柳が驚き戸惑っていると、森田は「お前は逃げろ」と無理やり青柳を車から降ろし、近づいてきた警官から逃げるよう指示。青柳が車から離れた瞬間、車は森田を乗せたまま爆発してしまう。警官たちが集まってくる中、訳も分からずその場から逃げだした青柳は、いつしか首相暗殺犯として大々的に報道され始めて...というストーリー。

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この名作を、見事に実写化したのが映画『ゴールデンスランバー』(2010年)だ。原作の舞台となった仙台で全編の撮影が行われたことからも分かるように、強い原作へのリスペクトが感じられる良作で、原作ファンの評価も高い。

内容は上記のとおり首相暗殺の濡れ衣を着せられた男の2日にわたる逃亡劇を描いたもので、衝撃的な幕開けから、状況が分からないまま追手から逃げる怒涛の展開、見る者の想定の上を行く数々の伏線の回収、登場人物たちとの固い絆、ラストの大どんでん返し...と、約2時間という時間の中に多くの要素が盛り込まれており、ジェットコースターのようなストーリー展開の中でさまざまな感情に出合うことができる。

それはやはり出演者たちの名演技によるところが大きい。主演の堺雅人を筆頭に、竹内結子、吉岡秀隆、香川照之、濱田岳、大森南朋、貫地谷しほり、相武紗季、伊東四朗といった主役級の役者たちが力を合わせて物語を紡いでいるからだ。

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中でも堺の演技は目覚ましく、主人公・青柳雅春を熱演。首相殺害の容疑をかけられながらも、周りの人たちに助けられながら逃亡を続けていくのだが、極限の状況下においても常に"つい手を差し伸べたくなる人のよさ"をまといながら逃げる演技は圧巻で、小手先ではない役への深い理解と役作りが感じられる。しかも、理不尽な状況にさらされ思わず涙があふれるシーンや、周りの人間の優しさに触れて緊張が緩む瞬間など、スピード感あふれる展開の中でも要所要所で役の感情を描き、作品をストーリー性やドキドキハラハラな展開だけではなく、しっかりと"人間"を描いたものに仕上げている。

名作に込められた多くの魅力と、それを損なうことなく実写化した役者たちの名演技に浸りながら、あっという間の2時間を堪能していただきたい。

文/原田健