三代目 J SOUL BROTHERS・岩田剛典が「浅見光彦シリーズ」で開拓した俳優としての新境地

三代目 J SOUL BROTHERS・岩田剛典が「浅見光彦シリーズ」で開拓した俳優としての新境地

11月21日(金)より全国公開される映画『金髪』で、教師役に初挑戦した岩田剛典。三代目 J SOUL BROTHERSのメンバーとして活動する傍ら、11月4日にはソロ曲「ZERO GRAVITY」を配信リリース。同曲を収録したアルバム『SPACE COWBOY』の発売を12月3日(水)に控え、自身初のソロ海外公演を含むアジアツアーも開催するなど活躍の場を広げている。2025年の岩田は、俳優としても飛躍の年になった。1月期放送のドラマ「フォレスト」(テレビ朝日系)では、謎めいた部分と真っすぐな思いという二面性を巧みに表現し、演技の幅を広げた。さらに7月期放送の「DOCTOR PRICE」(日本テレビ系)では、元医師で医療専門の転職エージェント・鳴木金成役で主演。従来のイメージを一新する型破りでクールなヒーローを演じ、俳優としての新境地を開拓している。そんな岩田剛典の主演作の中から、今回は2022年に制作された「内田康夫サスペンス 浅見光彦シリーズ」2作品をご紹介したい。

■「軽井沢殺人事件」と「源氏物語殺人事件」で令和版の浅見光彦に!

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内田康夫による旅情ミステリー「浅見光彦シリーズ」は、浅見光彦が初登場した「後鳥羽伝説殺人事件」(1982年)から40年も続く超ロングセラー。浅見光彦役は、水谷豊(日本テレビ系)、辰巳琢郎(TBS系)、榎木孝明(フジテレビ系)をはじめ、中村俊介(フジテレビ系)、沢村一樹、平岡祐太(TBS系)、といった人気俳優たちが演じてきた。制作発表時の岩田は「40周年の節目に、令和版の浅見光彦を楽しんでいただけるよう、心を込めて撮影に臨みたいと思います」と、意気込みを語っている。

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第1作「浅見光彦 軽井沢殺人事件」は、岩田演じる浅見光彦がルポライターとして取材に訪れた軽井沢で、若いカップルが写った1枚の写真を拾う。その写真がきっかけで、光彦は財界の重鎮・大原賀一郎(大和田伸也)の別荘を訪れ、妻の亜矢子(名取裕子)に話を聞く。折しも軽井沢で結婚間近の男性・平山(長田成哉)が事故死するが、平山の所持品から亜矢子のスケッチブックが見つかり、亜矢子は警察にアリバイを聞かれる。平山は死の間際に婚約者・野本美貴(工藤綾乃)に「ホトケのオデコ」という謎の言葉を残していた。光彦は、この事件は単なる事故ではないと感じ、華やかな表の顔の裏に隠された人間の欲と闇、そして悲しい恋物語へと繋がる真相を解き明かしていく。

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第2作「浅見光彦 源氏物語殺人事件」は、浅見光彦が鎌倉の和菓子店で起きた店主夫妻の不審死事件に挑む物語。鎌倉に向かった光彦は、円覚寺で両親の死を嘆く曾宮一恵(久保田紗友)と出会う。一恵の実家である和菓子店「芳華堂」の開店2周年記念パーティーで、一恵の父・健夫(山中聡)と母・華江(大路恵美)が毒入りワインを飲んで死亡し、一恵だけが助かったという。遺書があったために警察は無理心中と断定するが、一恵は他殺だと主張。自分は幽体離脱して犯人の姿を見たというのだ。事件の謎を追う光彦は、事件解決の鍵が『源氏物語』に隠されていることに気づく...。

■歴代の光彦役でも抜群の爽やかさが評判に!

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令和初の浅見光彦を務めた岩田の評判は上々で、歴代の浅見光彦の中でも抜群の爽やかさが話題となった。爽やかさに加え、温かみと柔和な笑顔も印象的で、素性を怪しまれた時にも、最高の笑顔でけむに巻いてしまったり、人の懐に入り込むような一面は、従来の光彦役に比べても新鮮味がある。岩田は、撮影前に「伝統は残しつつも、なぞるだけにならないように。いい意味で過去のシリーズを意識し過ぎずに自分らしい光彦像を作っていきたい」と語っていた。その言葉通りに、歴代の光彦役に縛られない自由さを感じさせるが、原作のイメージを裏切ることもなかった。原作小説での光彦の設定は、名家の次男坊で長身。ルックス抜群の好青年で年齢は33歳というもの。父親は故人で大蔵省の官僚だった。つまり、育ちの良さが特徴である。本シリーズで岩田が演じる光彦の"お坊ちゃま感"は、歴代の光彦役とは群を抜いている印象だ。ワケありな女性との出会いこそ多いものの、女性との恋愛にはなかなか発展しないのが光彦の特徴でもあるが、岩田場合は、どこかロマンスを予感させる雰囲気が漂っている点も興味深い。

■「相棒」シリーズなどで名を馳せた人気脚本家・岩下悠子の手腕が光る

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ミステリードラマなので、ストーリーの紹介は最小限に留めておくが、さすがに内田康夫の原作らしく、複雑な展開と散りばめられたモチーフが際立ち、見ごたえは十分だ。「軽井沢殺人事件」では、内田康夫の人気シリーズ「信濃のコロンボ」の主人公・竹村岩男(伊藤淳史)が登場するのも楽しい。「軽井沢殺人事件」では名取裕子、長谷川初範といったベテラン陣が脇を固め、「源氏物語殺人事件」では、加藤雅也とかたせ梨乃が登場し、それぞれ抜群の存在感を発揮している。

脚本の岩下悠子は、「相棒」シリーズの初期に名作を数多く手がけ、「科捜研の女」や「京都地検の女」、「おみやさん」などテレビ朝日系の刑事ドラマで数多くの名作を書いて名を馳せた。小説家としても活躍し、シーズン8以降は一時離れていた「相棒」にもシーズン20から復帰してファンを喜ばせている。いわばミステリードラマの名人で、人情ドラマを絡めた筆致に定評がある。主演俳優の持ち味を引き出すのがうまい脚本家で、初期の「相棒」では、寺脇康文演じる亀山薫を魅力的に描いたことで知られる。本作で岩田の個性が際立っているのは、岩下の功績でもあるように感じられた。

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"令和版"浅見光彦をさらに飛躍させてくれそうな予感のある岩田剛典だけに、次回作も待ち遠しいところだが、回を重ねればより演技にも深みが増し、歴代の光彦役に劣らぬ魅力を発揮してくれそうだ。映画『去年の冬、きみと別れ』(2018年)では、狂気と優しさを併せ持つ難役を演じ、従来のイメージを覆す演技で驚かせた。『名も無き世界のエンドロール』(2021年)でも複雑な感情を巧みに表現するなど、着実に演技力に磨きをかけて本作に至っている。俳優としてもアーティストとしても、脂が乗ってきた岩田剛典の今後のさらなる活躍に期待したい。

文/渡辺敏樹

放送日時:2025年11月29日 11:10~

チャンネル:映画・チャンネルNECO-HD

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