有沙瞳&綾凰華が語る『阿弖流為-ATERUI-』公演秘話と同期の絆

有沙瞳&綾凰華が語る『阿弖流為-ATERUI-』公演秘話と同期の絆

時代劇専門チャンネルの人気企画「華麗なる宝塚歌劇の世界」のシーズン8が7月より放送中。同番組は、案内役の中井美穂が毎回、ゲストのタカラジェンヌOGと共に「日本物」の宝塚歌劇作品を中心に紹介するほか、本編前後のトークコーナーで公演当時の思い出などを掘り下げていく。

9月28日(月)放送回では、初のダブルゲストとなる有沙瞳、綾凰華を迎え、『阿弖流為-ATERUI-』(2017年、星組・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ)を鑑賞し、トークを展開する。

今回、収録後の有沙瞳と綾凰華にインタビューを行い、収録の感想や同作に懸けた思い、当時の思い出、大切にしている宝物などについて語ってもらった。

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――収録はいかがでしたか?

有沙「2人で振り返るということがなかなかないので、なんだかうれしかったです」

綾「私が覚えていないことを覚えてくれていたりしたので、『あ、そうだったな』と思えて楽しかったです。中井さんは、作品のことも(宝塚の)皆さんのことも熟知されているし、私たちも在団中すごくお世話になったので、今日は引っ張っていただきました」

有沙「中井さんは『あ、そこです!』っていうポイントをちゃんと分かっていてくださるのがうれしかったですね」

――綾さんは、演じた母礼のせりふを突然リクエストされていましたね。

綾「そうなんですよ(笑)。あのせりふは、物語の流れで感極まって言うものなので、スタジオで久しぶりに言ったので『大丈夫だったかな』という感じでしたが、『あのせりふに母礼の全てが詰まっていたな』というのを思い返しながら言わせていただきました」

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――有沙さんは、当時のエピソードをクイズにして出題されていました。

有沙「『あまりクイズっぽくないかな』とも思ったのですけど、このエピソードが印象に残っていたので、出題させていただきました」

――この作品はお2人にとってどのような作品でしょうか?

綾「私は組替えを控えていて、星組では最後の作品でした。約5年間星組に在籍していて、(主演の)礼真琴さんには大変お世話になりました。星組の上級生、同期、下級生からも本当にいろんな学びをいただいたからこそ、ある種の集大成じゃないですが、『ここで一つお返しをしなくては』という思いで挑ませていただきました。当時はまだまだ未熟で、至らないところもいっぱいありましたが、気持ちだけは一人前に『この作品で感謝の気持ちと、皆さんに伝えられるものを伝えよう』という思いで挑んでいました」

有沙「私は逆に、星組に組替えしてすぐの小劇場公演で、まだあまり皆さんとの仲が深まっていない時にヒロインをさせていただいたので、『私でいいんですか?』という気持ちがありました。また、(相手役の)礼さんは学年は近いのですが、私の中ですごく遠い存在だったので、プレッシャーの方が強かったです。さらに、組が違うと雰囲気もまったく違うので、研究科1年の頃に戻った気分で、『いい作品になるように努めます』と皆さんにただ必死に付いていく、という気持ちだけでした。そういう状況だったからこそ、湧き上がる思いがたくさんあったので、すごくいいタイミングで、あの役、あの作品を、あのメンバーでできて良かったなと思います」

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――どのようなことを意識して役作りされましたか?

綾「(演じた母礼は)軍師という頼られるべきポジションなので、『包容力と貫禄みたいなものをとにかく出したい』『その説得力を絶対出さなきゃ』と、自分の中ですごくプレッシャーをかけて挑んでいました」

有沙「(演じた佳奈は)複雑な過去がありながらも前を向いて進んでいく女性なので、"強さ"はあるのですが、女性だから出せる"繊細さ"や"弱さ"を素直に表現できたらいいなと。そんな佳奈を包み込むからこそ、阿弖流為がよりカッコよく素敵に見えるとも思って役作りしました。

作品と向き合う中で印象的だったのは、『同じ日本物でも、組が変わるとこんなに違うんだ』ということでした。雪組の時も日本物はやらせていただいていたのですが、星組では『繊細なだけじゃなく、和装でも大胆さを表現できるんだ』と感じました。日本物と言ったら『3歩下がって、繊細で、あまり物事を言葉にせず、慎む』みたいな印象がすごくあったのですが、エネルギーがある作品だったので、星組のおかげで日本物の概念がいい意味で変わりました」

――有沙さんは番組の中でクイズを通して同公演の思い出を明かされていましたが、綾さんの思い出は?

綾「当時、線も細くて『男役として、もっとパワーがほしい』と思っていた時で、礼(真琴)さんもそれを分かってくださっていました。休憩時間になると、ひろ香(祐)さんたちと一緒に食堂に行ってくださって、メニューを見てカロリーが高そうなものをみんなで選んで、私はその大盛りを頼み、私が食べ終わるのを皆さんが待ってくださっていたことが強く記憶に残っています。皆さんやることがあるのに待ってくださって、本当に愛を感じました」

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――お2人は同期ですが、お互いに相手のことをどう思っていますか?

有沙「私は同期の中で下から数えた方が早かったので、『みんなに付いて行こう』という思いが強くて。それこそ"あやな(綾)"は何でもできるイメージで、同期の中でも背中を追いかけていた身なので、"一番近くで刺激をもらえる仲間"という感じですね。他組で頑張っている姿を見て、『自分も頑張らなきゃ!』と思いました」

綾「卒業して、より同期の絆を感じることが多くなりました。在団中は組が離れていると同じ舞台に立つことはほぼなくて、会う機会も限られており、連絡を取る回数も頻繁ではありませんでした。卒業して久しぶりに会ったり、連絡した時の"息の合いよう"はすごく感じます。そんな中で、在団中も卒業後も『あの子があんなに頑張っているのだから、私ももっと頑張ろう』と鼓舞してもらう存在ですね。困った時は支え合って、1つのものに向かう時には刺激し合ってという、"同期"という他の何にも表現できない関係だなって思います」

――互いにリスペクトしている(もしくは、リスペクトしていた)ところは?

綾「当時、有沙さんが雪組から来ていたので、(私が組替えすることを)割と早めに伝えたんです。というのも、組替えしてすぐに大役を担っている有沙さんに、経験した者にしかない"強さ"を感じており、すごく心強く感じていたことをよく覚えています」

有沙「あやな(綾)とは、物を作る丁寧さや、そこに向かう真っ直ぐさが、すごく似ているなと思うのですが、あやなは受験の時からすごく輝いていて、同期の中でもキラキラしていて、『わぁ、スターだ』って見惚れちゃうくらい眩しい存在でした。それは今でも変わらないですね。同期ながら『カッコいいな』とずっと思っています」

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――この作品は人としての誇りを守る主人公の物語ですが、お2人の"大事にしていること"は?

綾「『絶対に感謝することは忘れないようにしよう』というのは、戒めのように思っていますね。人間って、特に身近なものとか大切なものに対して、なぜか一番感謝を忘れがちになってしまうので、それは本当に注意深く気を付けていないといけないな、と。『大きいことより、小さいことこそ忘れちゃ駄目』というふうに思っています。舞台に立つ仕事を続ける中で『舞台は一人じゃできない』というのを痛感していますし、これまでも人のご縁で歩いてきたような感じがするので、常に自分にそう言い聞かせています」

有沙「私も似た感じになってしまうのですが、『尊重の思いを忘れない』ということです。在団していた時は、常に私のことを分かってくれている仲間と過ごし、『分かってくれているもの』という関係性の中で活動していたのですが、卒業して初めて関わる人たちとお仕事をするようになって、皆さんそれぞれに生きてきた経験や過去が違うからこそ、自分の当たり前を当たり前だと思ったらいけないなと。当たり前に思ってしまうと、尊重の思いがなくなってしまう気がします。宝塚時代から関わってくださっている方はもちろん、歌手活動などで最近関わってくださる方にも、『感謝で、尊重で、ありがとう』って、平等にその気持ちを忘れちゃ駄目だなって思いますね」

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――最後に、番組をご覧になる皆さんにメッセージをお願いします。

綾「『阿弖流為 -ATERUI-』をご覧になったことがある方も、まだない方も、私たちが中井美穂さんと一緒に、いろいろな思い出を語っておりますので、ぜひ思い出話を聞きながら見ていただけたらと思います。すごく熱い思いで作られた作品です。日本の土地で起こった話だからこそ、先人たちがどういう思いで生きていたかというのが強く書かれているので、ご覧いただいて『よし、私も明日頑張るぞ』って思っていただけるような時間になればいいなと思います」

有沙「今回この機会をいただいて、もう1度見直した時に、以前は気づかなかった思いを改めて感じることができたので、見た方も見ていない方も、新しい気持ちで見ていただけたらうれしいなと思います。作品の言葉、歌詞、せりふ、思いなど、作品に込められたメッセージがすごく素敵だな、美しいなと改めて思ったので、頑張って魂込めて演じているみんなを見ていただけたらうれしいです」

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有沙瞳 PROFILE
三重県出身。2012年に宝塚歌劇団に98期生として入団。2013年に雪組に配属され、2015年の「『銀二貫』-梅が枝の花かんざし-」でバウホール公演で初ヒロインを務める。2016年に星組に組替え。2023年『1789-バスティーユの恋人たち-』東京公演千秋楽をもって退団。役者として活動しながら、今年6月に演歌・歌手としてデビューを果たす。9月22日(火・休)よりミュージカル「SPY×FAMILY 2 爆弾犬篇&豪華客船篇」が上演される。

綾凰華 PROFILE
兵庫県出身。2012年に宝塚歌劇団に98期生として入団。2013年に星組に配属され、2017年に雪組に組替えし、同年の『ひかりふる路(みち) 〜革命家、マクシミリアン・ロベスピエール〜』で新人公演初主演を務める。2022年『夢介千両みやげ/Sensational!』をもって退団。2026年は「舞台『刀剣乱舞』禺伝 矛盾源氏物語〜再演〜」、「舞台『魔法使いの約束』きみに花を、空に魔法を 後編」「花語り 源氏物語 〜 いにしえの恋、散リ咲ク花 〜」、HER-IZON WORKS Project 第一弾「IDOLTIME」と既に4作品に出演するなど、さまざまな舞台で活躍中。

文/原田健 撮影/中川容邦