韓国ドラマのサスペンスがすごい!脚本家キム・ウニが問う社会の闇――「シグナル」ほか傑作ドラマ3選

韓国ドラマのサスペンスがすごい!脚本家キム・ウニが問う社会の闇――「シグナル」ほか傑作ドラマ3選

韓国ドラマ界には、その名を聞くだけで期待が高まる2人の「キム」がいる。一人は、「シークレット・ガーデン」(2010〜2011年)、「太陽の末裔」(2016年)、「トッケビ〜君がくれた愛しい日々〜」(2016〜2017年)など、数々のヒット作を生み出してきた脚本家キム・ウンスク。心に残る名ゼリフや魅力的な人物描写で多くの視聴者を魅了してきた、"ラブコメの神"として知られる存在だ。そしてもう一人が、緻密なサスペンスやスリラー作品で世界を熱狂させる脚本家キム・ウニである。

韓国ドラマを語るうえで欠かせない、2人のヒットメーカー。ウンスク作品が恋愛を軸に視聴者の心を揺さぶるとすれば、ウニ作品は、人間の心理や社会のひずみに迫る緻密なサスペンスで視聴者を引き込む。恋愛要素に大きく依存せず、殺人事件や怪異、感染症、超常現象といった題材を通して、格差や貧困、権力の腐敗など、現代社会が抱える問題を浮かび上がらせてきた。今回は、そんな"サスペンス・スリラーの神"キム・ウニの代表作「シグナル」「キングダム」「悪鬼」を通して彼女の世界観に迫りたい。

■「シグナル」――時を超えてつながる執念と、緻密な伏線回収

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まず外せないのが「シグナル」(2016年)だ。現在と過去を一台の無線機がつなぐというSF的な設定を軸に、未解決事件の真相を追う刑事たちの姿を描いたサスペンスである。現在のプロファイラーと、過去を生きる刑事が時空を超えて協力しながら事件の解決を目指すという発想は斬新だが、本作の魅力は奇抜な設定だけではない。韓国で実際に社会問題となった未解決事件を想起させるエピソードを織り交ぜながら、警察組織の不正や権力構造、時効制度といった現実社会の課題にも鋭く切り込んでいる。

さらに見どころとなるのが、緻密に張り巡らされた伏線だ。序盤で何気なく描かれた出来事が終盤で鮮やかにつながり、"あの場面はこういう意味だったのか"と驚かされる瞬間が何度も訪れる。多くのエピソードが次への期待を高める構成になっており、一度見始めると続きが気になってしまう作品として今なお高い人気を誇る。2018年には坂口健太郎の主演で日本リメイク版も放送された。

■「キングダム」――ゾンビの恐怖に映し出される、権力と人間の欲望

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「キングダム」では、"ゾンビ"というジャンルと韓国時代劇を大胆に融合させた。朝鮮王朝を舞台に、謎の疫病によって死者がよみがえるという設定だけを見るとエンターテインメント色の強い作品に思える。しかし、本作が描いているのは怪物そのものよりも、怪物を生み出してしまう社会の構造だ。

王位継承を巡る権力争い、腐敗した支配層、飢えに苦しむ民衆......。感染症は単なる恐怖演出ではなく、不平等な社会構造や権力のゆがみを映し出すものとして機能している。だからこそ、いわゆるゾンビものでありながら、歴史ドラマや政治劇としても見応えがある。

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もちろん、エンターテインメントとしての完成度も高い。おびただしい数のゾンビが襲い掛かってくる恐怖の描写や迫力のアクション、そして少しずつ真相が明らかになっていく構成も、緊張感を持続させる。

■「悪鬼」――怪異があぶり出す、人間の欲望と社会の闇

そして近年の代表作が「悪鬼」(2023年)である。韓国古来のシャーマニズムや民俗学を題材にしたオカルト・ミステリーでありながら、その根底にあるのは現代を生きる人々の苦しみや葛藤だ。悪鬼に取りつかれた女性と、鬼と神が見える民俗学者が不可解な連続事件の真相を追う中で、貧困や就職難、家庭環境、世代間格差といった現代韓国社会の現実が浮かび上がってくる。

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また、本作が恐ろしいのは、怪異そのものよりも、人間の心に潜む欲望や絶望を丁寧に描いている点ではないだろうか。一つの謎が解けるたびに新たな疑問が生まれ、散りばめられた伏線が少しずつ一本の物語へと収束していく構成は、キム・ウニらしい脚本術の真骨頂だ。オカルト・ミステリーというジャンルを借りながら、人間とは何か、社会とは何かを問いかける作品に仕上がっている。

■韓国ドラマはロマンスだけじゃない!社会の闇をえぐる唯一無二の物語世界

キム・ウニ作品に共通する魅力は、そのジャンルのドラマだけに終わらない点だ。刑事ドラマであれば、事件解決だけでなく、その背景にある制度や社会構造まで描く。ホラー作品なら恐怖だけを追求するのではなく、人間の欲望や絶望にまで踏み込んでいく。ファンタジーやホラー、SFといった非現実的な設定を用いながら、描かれているテーマは驚くほど現実的だ。それゆえ、作品を見終えた後には"面白かった"という感想だけに終わらず、"もし自分だったら""社会は本当に変わるのだろうか"と考えさせられる余韻が残る。

韓国ドラマと聞くと、ロマンス作品を思い浮かべる人は少なくない。しかし、恋愛要素に頼らず、緻密なストーリーと骨太なテーマで多くの視聴者を惹きつけてきた脚本家がキム・ウニなのである。

ウンスク派かウニ派か。韓ドラ好きならそんな話題で盛り上がったことがあるかもしれない。もちろん優劣を競うものではないが、胸がときめくロマンスを楽しみたい日はウンスク作品を、息をのむようなサスペンスや巧みな伏線回収を味わいたい日はウニ作品を......というように、それぞれ異なる魅力を持つ脚本家だからこそ比較する面白さがある。「シグナル」「キングダム」「悪鬼」の3作品から、キム・ウニが築き上げた唯一無二の物語世界にぜひ触れてみてほしい。

文/川倉由起子

チャンネル:Netflix

韓国・アジアドラマ

放送日時:2026年8月19日 08:15~

チャンネル:KNTV

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