科挙とは――バイジンティン(白敬亭)が「長風渡」で挑んだ1300年続いた中国の試験制度

科挙とは――バイジンティン(白敬亭)が「長風渡」で挑んだ1300年続いた中国の試験制度

中国ドラマを見ていると、「科挙(かきょ)」という言葉を耳にすることがある。主人公が人生を懸けて挑み、時には家族の未来まで左右する重要な制度として描かれる科挙とは、一体どのようなものなのか。今回は、バイ・ジンティン(白敬亭)が主演した「長風渡 ~あなたと綴る、運命の縁~」を例に、約1300年にわたって続いた科挙の仕組みや、ドラマでよく登場する関連用語を紹介する。

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1300年続いた中国の官僚登用試験

中国時代劇でたびたび描かれる科挙は、隋の時代に始まり、清朝末期の1905年に廃止されるまで、約1300年にわたって続いた官吏登用制度だ。581年に建国された隋は、589年に中国統一を果たす。初代皇帝の文帝は国を支える人材を集めるため、それまで貴族などが家柄によって高い地位を独占していた状況から、身分や家柄にとらわれず、試験によって優秀な人材を選ぶ仕組みを整えた。

これが、後に科挙と呼ばれる制度へと発展していく。隋王朝自体は短期間で滅びたものの、科挙は唐以降の王朝にも受け継がれ、時代に合わせて内容を変えながら長く続いた。儒教の経典や詩、歴史、時事など幅広い知識が問われ、やがて政治に関する論述なども重視されるようになった。

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「長風渡」で白敬亭演じる顧九思が科挙に挑戦

そんな科挙に挑むのが、「長風渡」の主人公・顧九思(グー・ジウスー)。バイ・ジンティンが演じる顧九思は、地域一の大富豪の嫡男として何不自由なく育った青年だ。ところが、勉学には身が入らず、悪友たちと遊んでばかりの放蕩息子。そんな彼の人生を変えることになるのが、柳玉茹(リウ・ユールー/演:ソン・イー)との結婚だ。

ひょんなことから結婚すると口にした顧九思と、幼なじみの葉世安(イエ・シーアン/演:チャン・ハオウェイ)との結婚を望んでいた柳玉茹。誤解から始まった二人の結婚だったが、柳玉茹はやがて顧家を支えるため、夫に官僚への道を歩ませようと決意する。結婚早々、妓楼(ぎろう)と呼ばれる遊興の場にいた顧九思の元へ乗り込み、「勉学に励み、科挙に合格を」と迫る柳玉茹。遊んでばかりだった顧九思にとって、ここからの猛勉強が始まる。

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「解元」「郷試」など科挙でよく聞く言葉

ここで、科挙を理解する上で知っておきたい言葉が登場する。柳玉茹が顧九思に突き付けたのが、葉世安が科挙で「解元(かいげん)」になったという事実。「解元」とは、地方で行われる「郷試(きょうし)」の首席合格者を指す。もともと難関である試験でトップになるほど、優秀な成績を収めた人物ということだ。

顧九思が挑むのも、この郷試。地方で行われる試験に合格すると、中央で行われる次の試験「会試(かいし)」へ進む。さらに時代によっては、最終段階として皇帝が選考する「殿試(でんし)」が設けられ、三段階で行われた。また、郷試の合格者は「挙人(きょじん)」、最終段階の科挙に合格した者は「進士(しんし)」と呼ばれる。つまり、ドラマで「郷試」「解元」「挙人」「会試」「殿試」「進士」といった言葉が出てきた時、それぞれが科挙のどの段階に関係するのかを知っておくと、登場人物たちがどれほどの難関に挑んでいるのかが分かりやすくなる。

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科挙当日は9日間拘束!?

科挙の難しさは、試験の内容だけではない。「長風渡」では、柳玉茹が「日増しに寒くなる中、9日間も泊まり込むから厚手の衣を荷物に入れておいた」と話す場面がある。劇中で描かれる試験は9日間にわたって行われ、その間、受験者は会場から出ることができない。試験に備えて長い時間を勉強するだけでなく、試験そのものも過酷だったことが分かる。

試験場は「貢院(こういん)」と呼ばれ、劇中でも建物に掲げられた扁額(へんがく)と呼ばれる看板のような額から、その名前を確認できる。また、科挙にまつわる縁起のいい言葉も登場する。「旗開得勝(きかいとくしょう)」は戦いの勝利や試験などの成功を祈る言葉。「金榜題名(きんぼうだいめい)」は、科挙の最終合格者名簿に名前が載ることを意味し、転じて科挙合格を願う言葉として使われる。さらに「獨占鰲頭(どくせんごうとう)」は、科挙の首席合格者になることを表す言葉。こうした言葉を知っておくと、劇中で描かれる科挙への期待や緊張感も、より伝わってくるはずだ。

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科挙への挑戦が顧九思を変えていく

最初は科挙など無理だと拒んでいた顧九思だが、柳玉茹のスパルタ教育に応え、少しずつ勉学に励むようになる。一方で、常に一番だった葉世安の存在を前に、「奴はいつも一番だった。塾でも一番、郷試でも一番。きっと会試や殿試でも一番だ」と自信をなくすことも。しかし、柳玉茹に励まされながら努力を重ね、師匠を驚かせるほど論語を暗唱できるようになるなど、秘めていた才能を発揮していく。

結婚したばかりの頃、二人は本当に思い合う人と結ばれたいという思いから、いつか「離縁」することを約束していた。ところが、共に過ごすうちに互いへの気持ちは少しずつ変化していく。柳玉茹は顧九思に「勉学に励み、葉世安よりも出世して私を誥命夫人(こうめいふじん)にして」と願う。「誥命」とは、高官の妻などに与えられる称号のこと。科挙への挑戦は、顧九思自身だけでなく、柳玉茹の未来にもつながっていく。遊んでばかりだった青年が、家族や妻のために責任を背負い、人生を切り開こうとする――。科挙をめぐる顧九思の成長も、「長風渡」の大きな見どころとなっている。

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科挙を知れば中国時代劇がもっと面白くなる

科挙は時代によって内容や仕組みが変化しているため、ドラマで描かれる時代によって登場する制度や用語にも違いがある。それでも、「科挙とは、試験によって優秀な人材を選び、官僚への道を開く制度」という基本を知っておけば、中国時代劇で登場人物たちがなぜこれほどまでに科挙を重視するのかが見えてくるはずだ。

家柄だけではなく、試験の結果によって未来を切り開こうとする人々。そこには、自らの人生だけでなく、家族の期待や将来まで背負って試験に挑む姿がある。「長風渡」では、そんな科挙への挑戦が、顧九思と柳玉茹の人生を大きく動かしていく。中国ドラマで「科挙」という言葉を耳にした時、その背景を少し知っているだけでも、登場人物たちの言葉や行動がより身近に感じられるはずだ。まずは「長風渡」で、顧九思が人生を懸けて挑む科挙の世界を楽しんでみてほしい。

文/神野栄子