パリ・サンジェルマンとインテルが激突! UEFAチャンピオンズリーグ決勝の楽しみ方を坪井慶介が徹底解説!

パリ・サンジェルマンとインテルが激突! UEFAチャンピオンズリーグ決勝の楽しみ方を坪井慶介が徹底解説!

欧州クラブチームのナンバーワンを決めるUEFAチャンピオンズリーグ。1955年にヨーロピアン・チャンピオン・クラブズ・カップとして開始され、70年の歴史を誇る。クラブサッカーにおける世界最高峰の大会とされ、決勝のテレビ視聴者数は、毎年2億人超。ワールドカップの決勝と並び、まさに世界のサッカーファン必見の大一番である。昨年9月から9カ月に及ぶ激戦を勝ち抜いたのは、パリ・サンジェルマン(フランス) とインテル(イタリア)。元日本代表でサッカー解説者の坪井慶介さんに決勝の見どころを伺った。

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強固な守備を誇るインテルに対するパリ・サンジェルマンの多彩な攻撃

大激戦となったバルセロナ(スペイン)との準決勝を2戦合計7-6(ファーストレグ:3-3、セカンドレグ:4-3)で勝ち上がったインテル。バルセロナ戦こそ攻撃力で粉砕したが、本来は強固な守備力が特徴のチームだ。

「両サイドのウイングバックを下げて、5-3-2で自陣に強固なブロックを作る。リーグフェーズでは最少失点(8試合で1失点)で、準々決勝までの12試合の合計でもわずか5失点でした。自陣に引いていても前方向にしっかりプレスをかけて、しっかり守りつつ、素早い攻撃やセットプレーからゴールを奪うのが特徴です。私が特に注目しているのは、バストーニ。ボールを奪えて強いことはもちろん、一気に相手の背後をつくロングパスを出せるし、相手陣内にボールを運んだ時は質の高いクロスも上げる。守備はもちろん、攻撃の起点としてもカギを握る選手だと言えますね」

そんなインテルと決勝で相まみえるのは、パリ・サンジェルマン。前回王者の強豪レアル・マドリード(スペイン)を破って勢いに乗るアーセナル(イングランド)相手の準決勝では、2戦合計3-1(ファーストレグ:1-0、センカンドレグ:2-1)で競り勝っている。

「パリ・サンジェルマンは非常に強いチームですが、リーグフェーズでは大苦戦。プレーオフの末にギリギリでノックアウトフェーズに進出しました。そんな状態だったので心配されましたが、元々いる選手の能力をルイス・エンリケ監督が引き出しながら、今で物凄く安定した力を出せるチームになりました。いわゆる"ゼロトップ"の攻撃が特徴で、前線にデンベレがいるものの、選手がスペースをうまく使い合う流動性を駆使する。デンベレがいなくなったところに左からクヴァラツヘリアが入り、右にはドゥエもいる。このドゥエが非常に好調で、デンベレが空けたスペースをうまく使えることが強み。また右SBのハキミは、上下動やクロスが非常に巧みな上に、サイドバックらしからぬポジションにも位置する。彼の動きに連動して、ヴィティーニャ、ジョアン・ネヴェスら素晴らしい中盤の選手たちが躍動します。流動性があり掴みどころがなくプレスがかけづらいので相手守備陣は本当に苦労しますよね」

強固な守備力を核に、スピードを生かして攻撃に転じるインテル。変幻自在に選手が動き回り、多彩な攻撃を展開するパリ・サンジェルマン。そんなカラーの異なる両チームの対戦はワクワクしかない。

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4強で敗退したバルセロナとアーセナルの奮闘も称えたい!

準決勝で惜しくも敗退した2チームも大会を大いに盛り上げてくれたが、バルセロナとアーセナルの戦いぶりも振り返ってもらった。

「今回から新設されたリーグフェーズで、序盤から力を出していたのがバルセロナでした。爆発的な攻撃力を誇り、準決勝までの14試合で圧巻の計43得点を記録。2位のパリ(16試合)より10点も多い。ラミン・ヤマル、ラフィーニャが躍動し、前線にはレヴァンドフスキ。バルセロナらしい中盤での組み立てや繋ぎだけでなく、スピードと突破力による"縦に速い"カウンターからの得点も量産しました。アーセナルはパリ・サンジェルマン同様に多彩な攻撃ができるチーム。けが人が続出する中でも勝ち上がったのは、やはりミケル・アルテタ監督の戦術眼によるところが大きかったと思います。本来はMFのミケル・メリーノをFWで起用するなど、本職ではないポジションに配するという素晴らしい采配・アイデアが光りました。特に攻撃のタクトを振るウーデゴールと、中に入ってきたりライン間に入ってきたり立ち位置を自由に変える左サイドバックのルイス=スケリーの活躍が印象に残っています。」

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世界最高峰の戦いは全サッカーファン必見。ぜひリアルタイムで観戦しよう!

そのレアル・マドリードについては、坪井さんも4強には残るだろうと見ていたという。その他の敗退したチームについての印象も伺った。

「戦術も素晴らしいですが、どこのポジションを見ても、個を観るだけで楽しかったです。私はセンターバックのラウール・アセンシオがイチオシで、すごく良い守備をしますし、バルベルデもすごい。ボランチもやれば、インサイドハーフにサイドバックまでこなす。しかもどのポジションでも平均点以上のプレーができる。底知れぬポンテシャルを持つ選手ですよね。

あと、個人として注目していたのは、リール(フランス)所属でコソボ代表のジェグロヴァです。左利きのFWで、ボールを運ぶこともできるし、パス、ドリブルなどチャンスメイクが巧みな選手。左足にキレがあって、自らゴールを決めることもできます。同じリールには、カナダ代表のデイヴィッドという選手も注目です。センターフォワードとして得点感覚に優れていて、パワーに加えてアジリティも高い。彼ら2人が所属するリールも好チームでした。あとは、アタランタ(イタリア)に頑張って欲しかった。ジャン・ピエロ・ガスペリーニ監督が率いて、結構堅いサッカーをするのですが、監督の戦術を選手が本当に理解していて、攻守の切り替えもすごく早い。見ていてとても爽快なチームなので応援していました。16強でクルブ・ブルッヘ(ベルギー)に敗れてしまいましたが、もう少し見たかったチームです」

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毎回、どんな組み合わせになっても見どころ満載なのが、チャンピオンズリーグ決勝。最後に、あらためて坪井さんにその一戦の価値を語ってもらった。

「世界最高レベルの戦術の高さに加えて、選手同士の意地と意地のぶつかり合いが根本にある。それが見られるのも素晴らしいと思います。日本では真夜中ではありますが、ぜひリアルタイムで観戦してほしい。仮眠をしっかりと取ってね(笑)。普段は寝ている時間だけど、非日常感の中でテレビ観戦するのも醍醐味ですから。画面越しにも、会場の雰囲気・臨場感が伝わってきて、特別な一戦であることを絶対に実感できるはず。年に一度のサッカーファンの一大イベントですから。あとは、絶対に試合前のセレモニーから見てもらいたい。あのチャンピオンズリーグアンセムやチャント、厳かな演出や現地のサポーターの熱気と興奮を感じ取ってから試合に臨んでください。サッカーが好き、サッカーを愛する人はもちろん、普段は海外サッカーを見ない人でも、この一戦は絶対に見る価値がありますよ!」

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文/渡辺敏樹 撮影/中川容邦

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