【松井咲子が語る】「推しの殺人」(1~3話) ファンに笑顔を、世界に嘘を。
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2025.10.23
いつも感謝、冷静に、丁寧に、正確に、みんなの夢が叶いますように。
これは私が7年間所属していたAKB48の円陣。秋葉原にある劇場に立つ時はもちろん、東京ドームや海外でライブをする際も必ず声を揃えて言っていた、アイドルになるための合言葉のようなものだ。
アイドル活動をしながら他のアイドルグループのライブに足繁く通い、秋元先生に怒られたことがある私、松井咲子が、以前帯を書かせていただいた『このミステリーがすごい!』大賞 文庫グランプリ受賞の「推しの殺人」ドラマ化についてコラムを書きます。
あらすじ
大阪で活動する地下アイドル「ベイビー★スターライト」のルイ(田辺桃子)、テルマ(横田真悠)、イズミ(林芽亜里)の3人は、思うように成果が出ない日々に焦りと不満を抱えていた。メンバー内での人気格差にやりたくもない接待、そして恋人からの暴力...。様々な悩みを胸に、それでもステージの上では今日もみんなのアイドル。笑顔を忘れずファンの声援に応える。
そんなある夜、事務所の社長である羽浦(田村健太郎)がイズミに暴力をふるう事件が起こる。駆けつけたテルマとルイが止めようとするが、もみ合いの末に羽浦が死亡。3人は恐怖と混乱の中、自分たちの夢を守るため遺体を隠すという決断を下す。

2010年頃から今日までアイドル戦国時代と呼ばれたりもするくらい、アイドル人口はかなり増えている。渋谷を歩けばアイドルに当たる。
そもそもアイドルって何???辞書を引いてみると「信仰の対象としての偶像。崇拝される人。あこがれの的」などと、自分には恐れ多すぎる言葉が羅列されていた。要するに、誰かの心を照らす存在ということだろうか。
でもアイドルって本当に大変!もちろん楽しいことはたくさんあるけど、楽しいだけじゃ乗り越えられないこともある。メンバー内格差、一緒に頑張ってるメンバーが恋愛、運営とのいざこざに、学業との両立...。どんなに忙しくても、どんなに体調が悪くても、笑顔でいなきゃ。
でも、そんな時支えてくれるのがファンの皆さん。アイドルの数だけ、ファンもいる。きっとファンが一人もいないアイドルは存在しない。はず。
改めて言うのは少し恥ずかしいけど、ファンの皆さんの存在って本当にありがたい。ファンの皆さんがいるから頑張れるし、逆にパワーをもらってしまう。家族でも友達でも恋人でもない関係なのに、大きすぎる程の愛をこれでもかと注いでくれる。どんなに遠い現場にも足を運んでくれるし、小さな変化にも親よりも早く気が付いてくれたりもする。髪切った?とかいつもとチークの色が違うね!とか。
じゃあ、もし、もし私が人を殺したとしたら?その後にその死体を埋めたとしたら?どうかそれだけは気が付かないで。
きっとベビスタのみんなも同じ気持ちだろう。いつバレるのだろうか。その不安に押し潰されそうになりながらも、メンバーは共犯という強い絆で繋がっている。
一見バラバラのように思えるベビスタだが、実はかなりバランスが良い。それぞれのヘアメイクや衣装も原作のイメージ通りで、ライブアイドル(最近では地下アイドルではなくライブアイドルと呼んだりする)の解像度も高い。あとシンプルにみんな可愛い。
読売テレビ公式YouTubeにライブ映像も上がっており、なんともファン想いだ。可愛い顔してストーリーを示唆するような、なかなか尖った歌詞を歌っているところもまた良い。
とんでもない秘密を抱えながらもステージに立ってくれてありがとう。

最も清らかで眩しい存在である"アイドル"と、最も暗く重い"殺人"が同じ物語に存在することの異様さがたまらない。そして未解決連続殺人事件も気になるところ。同時に進むストーリーにもう感情ジェットコースター。誰が味方で誰が敵か。出てくる全員が怪しすぎて目が離せない。
そんな中でもたまに見せてくれるキラキラしたステージに救われる。やっぱりアイドルってすごい。完全に私の心を照らしてくれている。どうか全員幸せになって。推しの幸せが私の幸せ。
私はすっかりベビスタ推しだ。



