大泉洋×「水曜どうでしょう」ディレクター陣がドラマでタッグを組んだスペシャルドラマ 歓喜の歌
2025.10.04
スペシャルドラマ 歓喜の歌が10月7日(火)にテレ朝チャンネル1にて放送される。
同ドラマは2008年にHTB開局40周年記念として、立川志の輔の同名新作落語を、人気バラエティー番組「水曜どうでしょう」のディレクター陣が、大泉洋主演でドラマ化したもの。叙情豊かな町を舞台に、忘れかけていた真心と人と人のつながりが起こすささやかな奇跡をユーモラスに描いたハートフルコメディだ。
海と坂道の町・大樽市の市民会館の主任・佐野亮介(大泉)は聴き間違えから、市長の市政20周年記念報告会と大樽レディースコーラスの20周年記念コンサートをダブルブッキングしてしまう。「たかがママさんコーラス。別の日に延期してもらえばいい」とタカを括っていた佐野だったが、その日に向けて練習を積み重ねてきた宮本美弥子(田中裕子)をはじめとする大樽レディースコーラスのお母さんたちの抵抗は思いのほか強く、市の行事とお母さん軍団との間で板ばさみになる。なんとか説得を試みようとお母さんたちに接触する佐野は、忙しい日常の中、さまざまな事情を抱えながらもコーラスに情熱を注ぐ彼女たちの姿に次第に感化されていく、というストーリー。
今や日本を代表する俳優となった大泉洋の魅力が満載
何と言っても大泉の演技がすばらしい。いい加減で、日和見主義ではあるが、根は"いい人"であるため、人の熱い思いや一生懸命に頑張る姿に触れて改心していき、いつしか一番の応援者になっていくという主人公を、期待以上の熱演で表現している。物語冒頭のやる気なさげな言動、タカを括っている時の尊大な態度、自分のミスを棚に上げて相手を批難する場面、お母さん軍団の言葉が胸に刺さった瞬間、気持ちが変わってからの手のひらを返したような態度の変わりようなど、1時間強という短い時間の中でくるくる変わるさまは見る者を飽きさせないし、落語の展開の早いリズム感ともマッチして、軽妙でいつの間にか世界観に引き込まれてしまう。
これは、世間のイメージから大泉自身の得意分野まで、大泉のことを熟知しているスタッフだからこそ作り上げることができたとも言えるだろう。いい加減でどこか他人事のような飄々とした性格、すぐに他人のせいにする適当さ、どれだけ悪くてもつい許してしまう人間性など、「水曜どうでしょう」が人気となった大きな要因である大泉の人間的な魅力を、佐野のキャラクターとうまくフィットさせることで、"大泉の芝居が好きな人"だけでなく、"大泉が好きな人"にも刺さる描き方をしているのだ。まさに"大泉洋の鉄板の演技"が詰まっており、「いいかげんな男が感化されていく様子を大泉が演じるコメディ」という情報だけで、見る前からわくわくしてくる人も多いのではないだろうか。
(C)HTB
大泉洋の演技を引き立てる豪華キャスト陣の名演
加えて、他のキャスト陣の豪華さにも驚かせる。田中裕子、あき竹城、根岸季衣、白川和子、吉本菜穂子といったベテラン女優たちが演じる"おばちゃん"たちのパワフルさといったら筆舌に尽くしがたい。ちょっとした仕草や会話、厚顔無恥なところなど、「ある、ある!」と思わず膝をたたいてしまうような、何とも言えないおかしみをにじませている。さらに、それぞれが抱える家庭事情や健康課題など、明るい歌声の裏にある苦悩が描かれるシーンでは、「辛く悲しいことを抱えているが、大変なのは自分だけではないため、なんとか飲み込んで頑張っている」という姿を感情豊かに表しており、「さすが...」と思わずうなってしまうほど。彼女たちの硬軟自在の演技が、大泉の芝居をより引き立たせていることは言うまでもない。そして、コーラスグループの指揮者・中村伊佐次を演じる大滝秀治の、"物語の緩衝材"のようなポジションをうまく演じ上げている芝居も見どころだ。
立川志の輔が作り上げた"人の心の機微の面白さ"を、この豪華なキャスト陣がより一層鮮やかに描き出すことで珠玉のハートフルコメディに昇華させている。また、ドラマならではの映像カットによる笑いどころもふんだんに散りばめられており、原作ファンも新鮮な気持ちで楽しむことができること請け合いだ。
10月21日(火)からテレビ朝日系にて放送される新ドラマ「ちょっとだけエスパー」では、ちょっとだけエスパーになって、ちょっとだけヒーローになる男性を演じる大泉。"愛してはいけない"SFラブロマンスと銘打たれた新ドラマで彼がどのような演技を見せてくれるのか期待が膨らむが、その予習として"ザ・大泉洋"とも言うべき彼の"鉄板の演技"を堪能してみてはいかがだろうか。
文/原田健