中森明菜の豊かな表現力と上質なストーリーの化学反応によるクオリティー高いサスペンスミステリー
国内ドラマ CS初
2025.07.02
「悪女A・B」
中森明菜主演の幻のサスペンスドラマ「悪女A・B」「悪女IIサンテミリオン殺人事件」がCSホームドラマチャンネルにて7月に放送される。
「悪女A・B」は、中森が全く異なる2つの悪女像を演じ分けた衝撃作で、放送当時に過激な内容と中森の凄みのある演技が大きな話題を呼んだ。その大きな反響を受けて制作されたシリーズ第2弾となる「悪女II--」は、フランス・サンテミリオンを舞台に、愛と欲望が渦巻く人間関係と、それに絡み合う殺人事件の謎が展開される。
"俳優・中森明菜"の豊かな表現力が満載
中森といえば"孤高の歌姫"というイメージが強く、若い人たちにとっては意外かもしれないが、実はドラマや映画にも多数出演しており、演技力に定評のある俳優としての顔もある。同ドラマは、そんな彼女の演技力を存分に楽しめる作品といえるだろう。「悪女A」では、若さと美貌を武器に裕福な男性たちを次々と手玉に取り、保険金をだまし取っていくカスミを演じ、「悪女B」では、年上の男性と若い男性を巧みに操り、宝石店強盗をやってのける新子を熱演。個性が全く違う2つの役柄を見事に演じ分けており、歌にもつながる表現力の豊かさに圧倒されてしまう。そして、「悪女II--」では父に溺愛されて育った資産家の娘を好演。愛に目覚め、愛に狂っていく姿を繊細かつ鮮明に描き出している。
「悪女Ⅱ サンテミリオン殺人事件」(C)共同テレビジョン
上質なサスペンスミステリーが魅力
だが、放送当時の大きな反響の礎は、中森の演技力だけではない。作品の随所に注入された制作陣のこだわりがあればこそだ。「中森に全く異なる"悪女"を演じさせ、縦積みで放送する」という挑戦的な企画に始まり、同じ"悪女"というテーマで全く異なるサスペンスミステリーを上質に仕上げているところなど、純粋に作品としてのクオリティーが高いのだ。
「悪女A」に関しては、約50分という短い時間の中で、カスミの妖しい魅力を存分に描きながらも、"カスミは犯人なのか、犯人ではないのか"というミステリーとしての醍醐味があり、二転三転する展開に手に汗を握らせ、「悪女B」も約50分間ながら、強盗に入った宝石店の支店長の家に住み込みで働きだすという"トンデモ展開"がコミカルで、大いにわくわくどきどきさせてくれる。そして「悪女II--」は、約70分をたっぷりと使って人間の狂気に斬り込んだ、2作品とは違うテイストで楽しませてくれる。
そして、昨今の映像作品の流行りである情報過多な作りではなく、シンプルだがポイントを押さえた脚本は、若い世代には新鮮に映るだろうし、40代以降の世代には「これこれ!」と痒い所に手が届くような気持ち良さを感じることだろう。それもそのはずで、「悪女A」は中園ミホ、「悪女B」は塩田千種、「悪女II--」は金谷裕子がそれぞれ脚本を手がけており、一時代を築いた名脚本家たちのセンスあふれるストーリーは色あせることなく面白いからだ。
俳優・中森明菜の豊かな表現力と、一流のクリエイターのセンスとこだわりが詰まった作品性。これらの"化学反応"から生まれたクオリティーの高いサスペンスミステリーをぜひご堪能あれ。
文/原田健