貴妃が愛したライチを運べ!「長安のライチ」が描く前代未聞の大ミッション【相関図付き】
韓国・アジアドラマ 日本初
2026.08.06
ライチを都まで運ぶ――。一見すると地味にも思える任務が、これほどスリリングな物語になるとは驚かされる。日本初放送となる中国ドラマ「長安のライチ」は、唐の時代を舞台に、新鮮なライチを長安へ届けるという前代未聞の任務を押し付けられた下級役人・李善徳(りぜんとく)の奮闘を描く歴史エンターテインメント。緻密な歴史描写と手に汗握る展開、そして現代にも通じる"お仕事ドラマ"としての面白さが詰まった注目作だ。

(C)Media Caravan International Limited
数々の人気ドラマを生んだ馬伯庸の小説を映像化
本作は、中国の人気作家・馬伯庸(マー・ボーヨン)の同名小説が原作。彼の作品は「長安二十四時」「風起洛陽~神都に翔ける蒼き炎~」「天地に問う~Under the Microscope~」など数多く映像化され、高い評価を受けてきた。そして「長安のライチ」は同時期に映画版も公開され、日本でも昨年8月に中文・英文字幕版が限定公開、今年1月に日本語字幕版が公開された。
ドラマ版で主人公・李善徳を演じるのは、「長安二十四時」のレイ・ジャーイン(雷佳音)。誠実だが不器用で、人の良さがにじみ出る下級役人を確かな演技力で表現している。一方、李善徳の義弟・鄭平安(ていへいあん)を演じるのはユエ・ユンポン(岳雲鵬)。そんな対照的な二人が物語をけん引する。
映画版はアンディ・ラウ(劉徳華)が朝廷の重臣役で出演したことでも話題となった。一方、ドラマ版は原作をベースに、李善徳の妻を回想のみの登場とすることで、一人娘への深い愛情や主人公の行動原理をより際立たせている。また、鄭平安をはじめとするオリジナルキャラクターを加えるなど、小説では描き切れなかった人物や世界をより丁寧に描いているのも特徴だ。原作者・馬伯庸自身が脚本顧問を務め、新たな展開を盛り込みながらも原作の世界観を生かしたドラマに仕上がっている。

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楊貴妃の逸話から生まれた歴史エンターテインメント
物語は唐の都・長安で、「新鮮なライチを献上せよ」という皇帝の命が下るところから始まる。ライチは皇帝が寵愛(ちょうあい)する賀貴妃の好物で、誕生日に献上するための品だった。しかし、「1日で色が変わり、2日で香りが変わり、3日で味が変わる」と称されるほど傷みやすい果物である。しかも指定された産地は、長安から五千里、約2500km離れた嶺南(れいなん)。急いでも10日以上を要する距離だった。
当然、誰も引き受けたがらず、任務は各部署をたらい回しにされた末、植物を管理する上林署へ。そして、人のいい李善徳が巧みにだまされ、「荔枝(ライチ)使」の任を押し付けられてしまう。撤回を願い出ても、勅命が取り消されることはない。亡き妻との思い出が残る家を買い戻すための借金を抱えながら、一人娘との暮らしを守るため、李善徳は命懸けの旅へと向かう。
歴史好きなら、この設定が楊貴妃にライチを献上したという有名な逸話を下敷きにしていることに気付くだろう。早馬で新鮮なライチを長安まで運ばせたという逸話は、権力者のぜいたくを象徴するエピソードとして知られている。本作では、その逸話をベースに賀貴妃という架空の人物を登場させ、歴史とフィクションを巧みに融合。史実をベースにしながら、最後まで先の読めない歴史エンターテインメントへと昇華させている。

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日本映画から着想を得たお仕事ドラマとしての面白さ
実は馬伯庸は、本作を執筆する際、日本の時代劇映画から大きな影響を受けたという。小説のあとがきによれば、「決算!忠臣蔵」「引っ越し大名!」「超高速!参勤交代」「殿、利息でござる!」といった作品を見て、「歴史を下級役人の視点から描く面白さ」に着想を得たそうだ。その背景を知ると、本作がお仕事ドラマとして高い完成度を誇る理由にも納得できる。
李善徳は、官僚登用試験である科挙の「明算科」で数学を学んだ知識と、植物に関する豊富な知識を武器に、不可能とも思える任務へ挑んでいく。どうすれば新鮮なライチを長安まで運べるのか。冷蔵技術がない時代に、どのように鮮度を保つのか。輸送ルートや馬、人員の確保、保存方法の試行錯誤など、一つひとつ課題を解決していく過程は、現代のプロジェクトマネジメントにも通じる面白さがある。

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さらに皇帝の目が届かない地方では権力者の妨害も待ち受ける。それでも知恵と誠実さで突破口を探る李善徳の姿には、自然と声援を送りたくなる。一方、義弟の鄭平安(ていへいあん)もまた嶺南で、朝廷で権力を握る右相の収賄を暴く密命を帯びて暗躍していた。世渡り上手で口が達者な鄭平安と、実直で不器用な李善徳。対照的な二人の物語が交差しながら進むことで、単なるライチ輸送の物語にとどまらない重厚な政治サスペンスが生まれている。
任務に向き合う主人公たちの姿は、お仕事ドラマとして共感を呼ぶだけでなく、中国時代劇ならではの権力闘争やサスペンスも存分に楽しめる。さらに、華やかな長安だけではない嶺南の風土や文化も丁寧に描かれ、歴史ドラマとしての見応えも十分。ユーモアと緊張感を絶妙なバランスで織り交ぜながら、おじさまたちの奮闘が爽快な感動をもたらしてくれる。

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文/神野栄子



