声優・徳井青空インタビュー#3「仕事も趣味も、全力で楽しむからこそ人生を豊かにしてくれる」
アニメ インタビュー
2026.09.11
「ラブライブ!」矢澤にこ役をはじめ、「探偵オペラ ミルキィホームズ」譲崎ネロ、「ウマ娘 プリティーダービー」テイエムオペラオーなど、数々の話題作で人気キャラを演じる声優でありつつ、同時に漫画家、絵本作家、映画監督、VTuber、南房総市観光大使など幅広く活躍する声優・徳井青空さん。この企画では全3回にわたって、声優や表現活動の原点から、熱を込めて語る趣味の話までインタビュー。これまでの歩みや最新の出演作品に関するお話から、その人となりに迫ります。
■いつだってワクワクがモチベーション

――声優のお仕事のほか、マンガ執筆、ラジオDJ、さらには映画監督まで、多彩な活動をされている徳井さん。その表現活動のモチベーションはどこにあるんでしょうか?
「そもそも、いろんなものに興味があって『やってみよう!』ってすぐ動いちゃう。そんなフットワークの軽さが一番大きいかなと思います。でも、意外と自分から『こんな物語を書いたから、みんな見て!』って積極的に発信していくタイプかというと、じつはそうでもなくて...」
――それは意外ですね...!
「もし、本当に作るのが好きで自走できるなら、きっかけが何もなくてもどんどん書いて、定期的にSNSにアップしたりすると思うんです。でも私の場合、周りの方から『これ、やってみませんか?』とお話をいただいたときに、『ぜひ!やりたいです!』って応える形で取り組むスタンスのほうが、圧倒的に多いんですよ」
――いや、とはいえ、いきなり「映画を撮りませんか?」「絵本を描きませんか?」と言われて飛び込めるのはすごすぎませんか...?
「そういうときには抵抗感は全然なくて、むしろ前のめりになれちゃうタイプかもな〜(笑)」
――初めて作るものでも、プレッシャーを感じたりはしないんですか?
「プレッシャーはあんまりないですね!絵本のお話をいただいたときも、映画のお話をいただいたときも『あ、これやってみたかったんですよ!』みたいな感じのほうが全然強い(笑)。もちろん、作るうえでの責任は感じますけど、プレッシャーで動けなくなるみたいなことは全然なくて。それよりも『どんな作品にしようかな?』ってあれこれ考える楽しさや、新しいことに挑戦するワクワク感のほうが、やっぱり何倍も大きいんです」
■心に染み込む「コロコロコミック」と愛機・アバンテ

――ここからは"声優の推しゴト"というテーマでもお聞きしたいんですが、前々回のインタビューで「幼い頃から『コロコロコミック』が大好きだった」というお話がありましたね。
「そう!やっぱり、ものすごくコロコロが熱い世代なんですよ! 当時は、とくに穴久保幸作先生の『ポケットモンスター』をマネして自分でもマンガを描いてみたり、かなり影響を受けていました」
――ピッピですよね(笑)。私も当時どっぷり買っていたので、めちゃわかります...。
「そうピッピ、懐かしい!(笑) コロコロのギャグ漫画が大好きで、当時読んでいたマンガのノリとか、キャラたちのギャグ顔がずっと心にあって...!自分で『まけるな!! あくのぐんだん!』を描いたときも、ちょっとコロコロみのあるツッコミ顔とかをつい描いちゃうんですよ(笑)。コロコロには、とにかく夢が詰まっていましたね」
――好き、を超えてもっと深いところに染み込んでいる感じですね(笑)。
「大人になってから、アプリのプロモーションラジオを森久保祥太郎さんと担当させていただいたのをきっかけに、ミニ四駆にもハマりましたし。小学生の頃も弟と一緒に遊んでいたんですが、久々に触ったらもう一気に沼に(笑)。数年のあいだ、夏の公式大会に出場するくらいのガチ勢でした(笑)」
――いいですね...!大人になると、子どものときには好きに買えなかったパーツも買えるようになるし(笑)。徳井さんのお気に入りのマシンはなんだったんですか?
「やっぱり思い出深いのは、"アバンテ"です!最初に大会に出たとき、予選を突破してくれたのがアバンテだったので、すごく愛着があります。コースに合わせてパーツを削ったり、カスタムを考えている時間がとにかく楽しくて」
――楽しそう!!自分なりのレースプランを考えて、セッティングを決めていくんですよね...!
「そう、事前に発表されたコースのマップを見て、急カーブの対策を考えたり、自分の計算した組み合わせが効くはずだと予測を立ててパーツを組んでいく。それが本番でどう出るのか。ミニ四駆って、自分の想像力を試す戦いなんですよ。大会では、5人一組で競い合うレースなんですけど、感覚としては対人戦というより完全に『自分との戦い』に近い」
――奥が深そう...!
「本当に!ものすごく奥深いんです!でも、本番は一発勝負。どんなに時間をかけて組み立てても、1周目でコースアウトしたら一瞬で終わり。すごく悔しい思いをするからこそ、『また来年頑張ろう!』って思えるし、自分の計算がどこまで通用するかを突き詰めるのがめちゃくちゃおもしろいんです」
――お話聞いているだけで、やりたくなってきますね...!
「ぜひぜひ(笑)。そうやってミニ四駆への愛を色んなところで発信していたら、なんと『コロコロアニキ』さんから『ミニ四駆の思い出のマンガを描きませんか?』ってお話をいただきまして!まさか、念願のコロコロ誌面に自分のマンガが載るなんて、めちゃくちゃ嬉しかったですね」
――きっと徳井さんの「好き」が、もっと引き寄せるんでしょうね...!
「いや、本当にありがたいことです...!子どものころの自分に聞かせてあげたいですよ!『将来、大好きなコロコロでマンガ描くことになるよ!』って(笑)。子どものころの夢や好きだったことが、大人になってこんな形で叶っていくのってすごくおもしろいなって。ワクワクして追いかけてきたものは、全部繋がっていくんだなと思います」
■だれにも気を遣うことなく好きなことを全力で楽しむ

――「コロコロ」以外にも、昔からずっとお好きなものはありますか?
「昔から、不思議なことも大好きで、宇宙や宇宙人のこととかを考えるのがすごく好きでした。その流れから、しぜんとオカルト系の話も好きになっていきましたね。学生時代から雑誌の『月刊ムー』も読むようになりましたし。そういった背景もあって、声優のお仕事を始めてから三上編集長と一緒に、オカルト系の番組をやらせていただいたりもしたんですよ」
――それは筋金入りですね(笑)。
「そうなんです(笑)。宇宙以外にも、古代文明系はすごく気になりますし。 たとえば、『地球がいまの形になる前に、さらに高度に発展した文明があったんじゃないか』とか、レーダーでピラミッドの地下がどんどん分析できるようになって、『じつはこんな空間があった』とか。科学の進歩とともに、少しずつ過去の新しい事実が解明されていくときなんか、たまらないですよね...!」
――そもそもオカルトを好きになったきっかけは何だったんでしょうか?
「元々は子どもながらに、『はっきりわからないことっておもしろいし、すごく想像しがいがある』って思っていたんですよね。それを表すエピソードが一つあって、中学生ぐらいのときに、教室で『宇宙人はいるのか?』という話になったことがあったんです」
――興味深い...。
「私は『絶対にいる』と思ったんですが、当時の先生が『いや、いないよ。もしいるなら、過去の歴史とかにも見えてないとおかしい!』って言ったんです。私、それを聞いて『この人は"うつろ舟事件"のことを知らないんだ...』って内心思っていて。あ、"うつろ舟事件"っていうのは、江戸時代に日本に漂着したとされるUFOらしき小舟のことなんですけど...」
――な、なるほど...?
「日本にすらそういった文書が残っていたり、海外の絵画の中にもUFOのようなものが描かれていたりするっていうのに、『知らないって恐ろしいな』って(笑)。そんな経験もあって、『想像するのを諦めたり、自分で視野を狭めて、すべての可能性を狭めてしまっている人には絶対になりたくない』ってすごく思って(笑)」
――その点では、当時の先生は反面教師になってしまったんですね(笑)。
「そう、わりと当時の私はそんなことを本気で思ってしまったんですよね。だからこそ、『解明できない現実に対して、自分なりに推理をする』という私のスタンスは、自分で想像してストーリーを生み出す、マンガを描くことにもやっぱりすごく近い気がしているんです」
――すごい、そこが繋がってくるんですね。それにしても、好きなテーマについて語るときの徳井さんは本当に生き生きされていて、素敵です...!
「根が生粋のオタクですからね(笑)。でも私、オカルトを語り合う友達とか、趣味を共有する仲間っていうのが全然いなくて...!ミニ四駆にハマっていたときも、夜な夜なマシンを組み上げて、一人で走らせに行くみたいなことをやっていましたし(笑)」
――でもそれって、ある意味一番「純粋な熱量」ですよね。誰かに見せるためではなく、ただ自分のためだけに熱中しているというか。
「たしかに、そういう部分はあるかもしれませんね。『一人でも楽しめる』っていうところは大事なのかも。ふだん発散する場所がないからこそ、こうやって聞かれたときに、"オタク特有の早口"で一気にしゃべっちゃうんですよね(笑)。もし、ふだんから誰かとシェアして発散していたら、この熱量も分散されちゃうのかも」
――そんな趣味の達人である徳井さんが考える「好きなものを見つけることの素晴らしさ」ってどんなことですか?
「いまはSNSなどを介して、みんなと趣味をシェアし合うのが主流になっていますけど、私自身、『推し活はたった一人で満喫してもいいんじゃないか』という気持ちが結構あるんですよ。誰かに気を遣うことなく、自分の好きなときに、好きなことを全力で楽しめる。それが私の時間の使い方ですし、間違いなく自分の人生を、楽しく豊かにしてくれるので、私にとってはなくてはならないですね」
■自分が楽しんでこそ、周りに楽しさが伝わる

――徳井さんにとって理想の声優像というと?
「声を聞いた瞬間に『あ、あの人だ!』ってピンときてもらえるのがいちばんだと、私は思いますね。大御所の先輩方は、まさにそういう方々ばかりだと思うんです。声を聞いた瞬間、だれもマネできないような、唯一無二の声を持っているのがわかる。そこは、すごく憧れる部分ですし、目標だなと感じます」
――そうした理想の声優になるために、ふだん大切にされていることは?
「一つひとつの仕事に対して、変わらぬていねいさで向き合う、ということです。『初心忘れるべからず』じゃないですけれど、一人きりでマイク前に向かわなきゃいけないゲーム収録であっても、大人数で掛け合うアニメのアフレコであっても、変わらない姿勢でのぞむことがなにより大事だと思います」
――そう思うようになったきっかけはあるんでしょうか?
「以前、『ふだんの仕事を、かならず120パーセントで応えるようにする』という言葉を耳にしたことがあるんです。それがすごく胸に刺さって。それ以来、コンディションがいいときは意識して120%の力を出し切れるように、って思うようになったんですよ。それを経験しておけば、万が一、のどの調子が悪かったり、コンディションがよくないときでも、これまで培ってきた経験値でカバーして100%に持っていけますからね。それを心がけているうちに、『どんな仕事にも同じ姿勢で向き合うことが大事だ』って思えるようになったんだと思います」
――でも、毎回120%を出し続けるって、身体的にも精神的にもすごく大変なんじゃないですか?
「実際にその気持ちで仕事にのぞんでみてわかったことがあるんですが『120%を出す』って、けっして『無理をして余計な力を絞り出す』という意味ではないと思うんです。そんなことをしていたら、むしろ次の現場ではすぐに100%以下になっちゃいますよね(笑)。そうじゃなくて、目の前の仕事に対して、誠心誠意向き合って、いま自分が持っている力の、ほんのちょっと上を狙うこと。それが自分にとっての120パーセントであり、一番大切な姿勢なのかなと思っています」
――これから先、どんな声優であり続けたいですか?
「『あの人、楽しそうだな』と思ってもらえる声優になりたいですね」
――徳井さんらしい、飾りすぎない素敵な言葉ですね!
「マイク前でのお芝居はもちろんですけど、これまでの経験から実写番組に出させていただいたり、ライブを担当させていただく機会もたくさんありました。でも、どんな仕事をしているときも『自分が楽しむこと』がいちばん大切だったな、って思うんです。私自身が楽しんで活動していたら、それが観てくれる人、聴いてくれる人に伝わって、『なんか楽しそうで元気が出る!』と思ってもらえる。そして私を見て元気を出してくれた人を、私が見て、また私も元気が出る。そんな循環が生まれたら素敵だなって思っています」

衣装協力/JUNGLES、MURUA
スタイリスト/津野真吾(impiger)
取材・文/郡司 しう 撮影/梶 礼哉




